劇場公開日 2025年2月7日

「親が子を育てる時、親もまた子に育てられる」野生の島のロズ おけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0親が子を育てる時、親もまた子に育てられる

2025年2月26日
iPhoneアプリから投稿

物語は、無機質なロボットが“母”としての役割を担っていく過程を丁寧に描きながら、ロズとキラリの関係性を通じて「親と子」「論理と感情」「完璧と不完全」といった多面的な対比を作り出している。

渡り鳥であるキラリには「渡り」という期限があるため、タイムリミットが物語を引っ張る軸になり、時間の流れがあっという間に感じられる展開だった。

映像のクオリティがとにかくすごくて、自然の描写とロボットのメカニカルなデザインが違和感なく溶け合っている。野生の島にポツンと取り残されたロボットという異質な存在が、少しずつ汚れたり苔むしたりしながら、環境に馴染んでいくのが視覚的にもわかる。ロズの体が変化していくにつれて、思考もより感情的になっていくように見えたのが印象的だった。

音楽の使い方も秀逸で、中盤の音楽に乗せたストーリー進行のシーンは特に良かった。個人的には、もう少し音楽を多めに使っても良かったなと思うくらい、映像との相性が抜群だった。

ロズは本来、人間のために開発されたアシストロボットであり、どんな相手にも見返りを求めずに助けるよう設計されている。その思いやりの精神が、弱肉強食の野生の世界では異質な存在となり、最初は他の動物たちから煙たがられる。しかし、少しずつ信頼を得ていくことで、キラリの「渡り」に向けた訓練をサポートしてもらえるようになり、最終的にはロズの小さな思いやりの積み重ねが、島全体を結束させるほどの力になっていく。

「親が子を育てる時、親もまた子に育てられる」という言葉があるが、まさにそれを体現した物語だった。親子の形はそれぞれ違い、家庭の事情もさまざま。でも、大切なのは相手を理解しようとする気持ちと、自分から寄り添おうとする行動なのかもしれない。

ロボットと渡り鳥という極端な組み合わせで描かれる“親子の物語”だけど、根底にあるテーマはどこか現実とも重なるものがあった。シンプルなストーリーながら、じんわりと心に残る作品だった。

おけん