「声に惑わされずに、ロズの子育てをしっかりと見れば、育児に大切なものが見えて来ますね」野生の島のロズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
声に惑わされずに、ロズの子育てをしっかりと見れば、育児に大切なものが見えて来ますね
2025.2.11 字幕 TOHOシネマズ二条
2025年のアメリカのフルCGアニメーション映画(102分、G)
原作はピーター・ブラウンの児童文学『The Wild Robot(日本語訳:野生のロボット)』
無人島で起動したお手伝いロボットが渡り鳥のヒナを育てる様子を描いたファンタジー映画
監督&脚本はクリス・サンダース
物語の舞台は、近未来の地球のどこかの無人島
ユニバーサル・ダイナミクス社は学習機能を搭載したアシスタントロボット「ROZZUM」シリーズを量産していたが、ある輸送船が嵐によって無人島に不時着をしていた
捜索もないまま、どれぐらいの時間が過ぎたのかもわからない頃、そのロボットは無人島に生息するイタチ家族に発見された
イタチたちが物珍しそうにロボットの周辺を散策していると、偶然にも起動スイッチにふれてしまった
ロボットは起き上がり、自身に課せられたプログラム通りの動きを見せていく
だが、ロボットを注文した主はおろか、人間すらいない無人島で、ロボットは警戒されて、攻撃を受けたりもしていく
そんな中、ロボットは崖のところで落ちそうになり、鳥の巣の上に落ちてしまう
そこにいた親鳥は死んでしまい、巣には卵がひとつだけ無事に残されていた
ロボットがそれを手に取ると、いきなりキツネがそれを奪い、今度は卵をめぐる追いかけっこが始まってしまうのである
物語は、ロボットこと「ROZZUM Unit 7134(のちにロズと名乗る、演:ルピタ・ニョンゴ/綾瀬はるか)」が、キツネのチャッカリ(ペドロ・パスカル/柄本祐)から卵を奪い返すところから動き出す
その騒動の中で卵は孵化し、そこからカナダガンのヒナが生まれた
チャッカリは「ヒナに名前をつけろ」と言い、ロズは「クチバシの輝きからキラリ(Brightbill=輝くクチバシ)」と名付けた
映画は、キラリ(キット・コナー/鈴木福、幼児期:Boone Stoom/浜崎司)がロズを母親だと勘違いして追い回す様子が描かれ、チャッカリは「巣を壊して親鳥を死なせた償い」として育てることを進言する
ロズは何かを育てた経験はなく、オポッサムのピンクシッポ(キャサリン・オハラ/伊藤まい子)などの子育てをしている動物たちを観察していく
冬が来る前に成鳥になり、飛べるようにならないと生死に関わるため、多くのことを短期間に学ばせる必要があった
だが、普通のカナダガンよりも小さなキラリはうまく飛べず、海を渡るための耐久力も持ち合わせていない
そこで、群れのリーダー・クビナガ(ビル・ナイ/千葉繁)、ハヤブサのサンダーボルト(ヴィング・レイムス/滝知史)などの協力を得ることになり、なんとか渡りの日に間に合うことになったのである
物語は、キラリが去って冬になる無人島を描き、想像以上の寒波によって、動物たちの命懸けの越冬が始まっていく
そんな中、ロズはチャッカリと一緒に巣で凍えている動物たちを家に連れ帰ることになった
そこには肉食も草食も含まれていて、天敵同士も押し込められてしまう
そこでロズは、春が来るまでは休戦してくださいと願い、ロズ自身もセーブモードにて眠りにつくことになったのである
映画は、産んでいないのに子育てをするという構図になっていて、どことなく擬似的な父子家庭のように思える
ロズの音声が女性の声だから母親だと考えがちだが、実際にはロズには性別という概念はない
また、ロズほどの優秀なロボットなら、ガンの子育ての仕方などを検索できそうだが、飛び方の分析なども含めて、そういったデータベースには頼らない
ロズは、目の前で実際に子どもを育てている様子を観察し、経験者の声に耳を傾けていく
そうして、ロズは親としての責務を果たすことができたのである
その後、島には春が訪れ、キラリが無事に帰ってきたことを確認するロズが描かれていく
キラリは、道中で人類と遭遇し、そこでアクシデントに見舞われるのだが、クビナガの助言を聞いてリーダーとなり、ガンの群れを無事に戻らせることに成功している
そして、落ちこぼれはだったキラリは、今では飛行隊長と呼ばれるまでに成長を果たしていたのである
その後、記憶が奪われそうになるロズと追跡者のバトルが繰り広げられる
一度は追い払うものの、追跡は延々と続くことがわかり、ロズはある決心をすることになる
記憶が奪われても、心までは奪えないと考えるロズは、修理されてもロズのままでいられると確信していて、工場へと「渡る」ことになったのである
いずれにせよ、映像はとても綺麗な作品で、4DXでも楽しめそうな場面がたくさん登場する
生き物のリアルな弱肉強食もキチンと描かれていて、直接描写はないものの、自然界における命の軽さもサクッと描かれていた
島の火事で多くの命が失われただろうし、ドーム農園での顛末でも犠牲はたくさんあったと思う
そのあたりはオブラートに包まれているが、はっきりと書いてしまうとリアルすぎるので、コメディ要素として取り込むことになったのだろう
そのあたりは大人しかわからないブラックジョークもたくさんあるので、親子ともども楽しめる内容になっているのではないだろうか