「映画二本分楽しめる」野生の島のロズ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
映画二本分楽しめる
結論、良い作品。
家族に限らず、いろいろな立場で解釈できる。
物語としては、かなり「定番」の部類だと言っていいだろう。
製品としてプログラムされたロボットが、人間や動物といったキャラクター達と心を通わせ、最後は…というあのパターン。
前半はガンのキラリが旅立つまで、後半はロズが自身のアイデンティティを見つけるまでという構成なんだけど、前半で作品一本分のドラマを見せておいて、後半でさらなる大スペクタクルが待っている。
お話は定番の部類と書いたが、ここで描かれる「与える」と「もらう」のバランスが絶妙で、もちろん家族の親と子の話にも見えるし、社会的弱者や外からやってきた他者がそのコミュニティの中で自分の居場所を見つける話でもある。
動物界には「狩る」「狩られる」が、人間界にも宗教や民族同士などの対立があり、簡単に同じ屋根の下で暮らすなんてできない。
「でも、そこに秩序もルールもなくなったら、いつの日か皆が全滅する未来しかないよね。」
っていうメッセージは、社会への警告であると同時に、過去からある動物モノのストーリーにも一つの解答を提示している様にも見える。
その意味では、冒頭にピンクシッポとの話のちょっとしたすき間に「生と死」を織り込むなど、現実に向き合ってるのも好感が持てる。
ホントならもう少し★を高く付けたいんだけど、この声のキャストが私にはあまりピンと来なかった、というか、事前に声優をタレントが担当してるとは知らなかったのに、登場して一声で「あ、綾瀬はるかじゃん」「柄本明の息子じゃん(ごめんなさい。ご兄弟の名前がどちらか判然としなくて)」「福くんじゃん」と、俳優の顔が頭に浮かんでしまって、前半はフワフワした感じで眺めてた。
でもその辺は徐々に気にならなくなるし、キラリの旅立ちではちゃんと泣ける。
ただ、このロズは「どうなったら(ロボットとして)死ぬのか」がちゃんと提示されないので、眠ったのか電源が落ちたのかバッテリーが切れたのか壊れたのか、それともこれで死んだのか、観ながら心の持って行き場をどうすればいいのかよく分からないってのはあったかな。
とは言え、映画として良くできているし、「画」にもすごくこだわったシーンが多いのも魅力。音楽もいい。
パンフレットも、作品の「画」としての素晴らしさをちゃんと残してくれてて、解説やインタビューも充実。この映画が好きな方なら満足できる内容だと思う。
春休みまでに是非劇場でご覧頂きたい。