「恐ろしい恐れぬ心」破墓 パミョ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
恐ろしい恐れぬ心
朝鮮出兵と日本領時代の朝鮮半島。日本と朝鮮の暗い過去が描かれており、日本人としてはかなり心が痛くなる。この映画が本国で大ヒットした背景には、反日的な思想がまだまだ根強いことを表しているだろうし、風化させてはならない過去として代々語り継がれているんだろうなと思った。
そういったことを考えていると、日本人の自分が手放しに面白かった!と言っていいのかと少し複雑な気持ちになるけれど、シンプルに一種のエンターテインメント、サスペンススリラーとしてめちゃくちゃ面白い作品で、テーマがテーマなだけに賛否は分かれるだろうけど、ここ最近ではいちばんオススメしたくなるすごくよく出来た映画だった。
韓国映画特有の湿っぽい空気感に今回もまた惚れ惚れ。日本映画でも似たような作風のものが増えてきたけど、やっぱりホンモノには勝てない。エンドロールで我に返るほど入り込んでしまうし、定期的に襲いかかるえげつない緊迫感に心臓が爆発しそうになる。〈墓〉というテーマは韓国映画にピッタリで、知ってはならないことを知ってしまった、見てはいけないものを見てしまった、といった恐怖が土を掘り返していく度に増してくる。目に見えないものを、見えるもので体感させる。深入りしてしまうことを絵で見せるそのスタイルは、「パラサイト 半地下の家族」を彷彿とさせるあまりに秀逸な演出だった。
風水師と葬儀屋、巫堂とその弟子。登場人物4人のバランスがこれ以上考えれないほど完璧で、お金儲けというワードから既に不穏な空気を感じる。結構暗いテーマだから後半とか特にエンタメに昇華出来るか心配だったけど、葬儀屋のヨングンがお笑い担当のような陽気な雰囲気を常に出してくれるから、暗くなりすぎない、絶妙な塩梅で物語を進めてくれる。
このメンツでいちばん年長のサンドクを主人公に充てたのも功を奏したと思うし、仲間でも友達でもない4人ってのが、個人的に「コンフィデンスマン」が過ぎってすごく好きだった。
あんまり考えたこと無かったけど、確かに日本人ってめちゃくちゃ恐ろしい。別に自分は左翼でも無ければ韓国寄りでもないんだけど、客観的に日本人という民族を見た時、その植え付けられた信念にゾッとしてしまう。恐ろしいを恐れぬ心。愛国心、仕えるものとしての使命がどの民族よりも強い。日本人にとっての当たり前は他の民族からみれば、それはそれは怖いだろう。
本作では陰陽師のようなファンタジックな色合いによって映画的なものになっているけど、朝鮮人にとっては日本はまさに脅威であり、恐怖の最大の象徴とも言えるのだろう。ツッコミどころはあるけど、おかげでこの映画はフィクションであることを示しているかのようで、妙にリアル過ぎないのが日本人の自分にとってはどこか安心したし、ここまで楽しめた要因でもあった。
終盤に掛けて畳み掛けすぎるがあまり、ちょっと間延びした終わり方になってしまったけど、尾を引く私生活に影響を及ぼすほどの面白さがあって、相当好きな作品だった。4DXによる太鼓の地響きもまた良かった。
難しいことたくさん書いてきたけど、先入観なしに新ジャンル《墓ホラー》を堪能する映画だと思って見て欲しい。賛否は分かれるだろうけど、韓国映画はやっぱりこのくらい攻めたものが面白いのよ。パミョ!