「朝鮮半島と日本の暗い歴史の苦さが後半の味わいに影響。韓国での特大ヒットに複雑な思いも」破墓 パミョ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
朝鮮半島と日本の暗い歴史の苦さが後半の味わいに影響。韓国での特大ヒットに複雑な思いも
「破墓 パミョ」は本国韓国で今年2月に公開され、5月の時点で2024年の韓国映画の最高興行収入を記録したとか。鑑賞しながら題材や雰囲気が似ていると思ったのは、國村隼が謎めいた村のよそ者を演じた2016年の韓国映画「哭声 コクソン」と、2018年の邦画「来る」。得体のしれない邪悪な存在に主人公側の人間たちが立ち向かうのが共通点と言えるだろうか。この手のジャンルの映画としては撮影が洗練されていて、暗いながらも美しい映像もなかなか見応えがあった。
ストーリーの後半には、豊臣秀吉の時代の朝鮮出兵や20世紀前半の日本による韓国併合といった朝鮮半島と日本の間で起きた暗い歴史の記憶が、ネガティブな要素として浮かび上がってくる。これが苦いスパイスとなり観客の感情を刺激したことが韓国での特大ヒットの一因になったのかと想像すると、日本人として複雑な思いもする。
日本とのつながりではほかに、悪霊から身を守るため全身に経文を書くシーンが怪談の「耳なし芳一」を思わせるが、脚本も書いたチャン・ジェヒョン監督は「耳なし芳一」を知っていたのか、それとも法話か何かで「経文を体に書くと魔除けになる」という古い言い伝えが仏教文化圏の共通のルーツとして存在するのだろうかと、ちょっと気になった。
暗く重苦しいムードが基調だが、「鍵泥棒のメソッド」の韓国リメイク「LUCK-KEY ラッキー」で主演したユ・ヘジン(葬儀師ヨングン役)のにじみ出るおかしみが、出演しているシーンの気分を少し明るく軽くしてくれた感じがする。シリアスな役でも“陽キャ”な雰囲気を漂わす点で、日本の俳優では大泉洋あたりが立ち位置的に近いだろうか。