「志の低さ」ありきたりな言葉じゃなくて Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
志の低さ
みんなで脚本を考えていて、「頭がねじ切れるほど考えるんだよ」と言い合って、煮詰まったから飲みに言って「でも、どんなに考えても、うまくいかないよね……」と愚痴り合い、「そうだ、今のこの状況を映画にすればいいんじゃないかな!」「それだ!」とやってはいけないパターンで作られた映画なのかと思いました。
脚本家が「脚本家の話」を書こうと思った時点で志が低いんだよ。調査も取材もいらないしね。
作中で頭がねじ切れるほど考えて出してきた台詞が「お腹が空いた」で、女優さんが褒めるんだよね。「失恋したときもお腹が空くなって思いました」って。
そんなバカな。精神的に追い詰められても、それとは別に肉体は何かを欲するってやりたいときに「お腹すいた」って台詞をみんな書くでしょ。手垢ついてるでしょ。ねじ切れるほど考えてその台詞ならさすがにデビューできないでしょ。
ストーリーはきれいに転がっていくんだよね。ただちょっと造りが古い気がしたの。
「え、なんで? 誰が悪いの?」ってやっていって「そーなんだー、アイツ、悪いな!」としておいて「悪いのにも理由があったんだよ」ってやるのね。
それでクライマックスで主人公とヒロインが屋上で感情をぶつける体で語り合って「そうか!」「そうだよ!」と互いに理解して大団円。人生が簡単だね。
主人公はヒロインに「こんな風に書きたいことがあるって羨ましい」って言うのね。ヒロインは不幸な境遇だったから書かずにいられないことがあったの。
それを羨ましいって言うことはね「お前は不幸で羨ましい。俺は幸せだから書くことねえや」って言ってんだけど大丈夫? でも主人公もヒロインにはめられて不幸になったからさ「俺も不幸になって書くことできた、やったぜヒャッハー!」って言わなきゃいけないんだよ。言ってないよね。
ラストは見放していたテレビ局の人が主人公の企画を採用してくれんのね。あり得ないよね。「危機管理としてお前の情報は共有してる」って言ってたけど、それ正しいんだよ。主人公は脇が甘いからね、またやらかす可能性がある。だったら、リスクとって使う必要ないでしょ。そこを「テレビ局の人は使ってくれました」って、局にすり寄るなって気持ち悪い。
一番気になったのは、シナリオワークショップを「一風変わった人が集まる場所」みたいな描き方してんだよね。プロとして映像に関わる自分たちは「あんなところには行かない」と思ってんのかなと感じた。でも、行った方がいいよ。そしたら、さすがにこんな脚本は書かないから。