「心無い人と優しい人」ぼくとパパ、約束の週末 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
心無い人と優しい人
今や自閉症の人が登場する映画は珍しくなくなった。まだまだ彼らに対する理解が深まっているとは言えないが、様々な描き方がされるようになった。本作では、ジェイソンが感じるもの(どう見えて、どう聞こえて、どう考えるのか)に焦点を当てている描写が印象的だった。マイルールが破られたときに取り乱す様も、そんなことを踏まえると受け入れやすくなりそうだ。本作でたびたび登場する、ジェイソンを拒絶する人たちの言動もわからないではない。自分たちが想像できる範囲内で物を言えばそうなってしまう。そんな現状をうまく表現したシーンだった。完全には理解できなくても、ジェイソンがそのままでいることを拒否しない、心優しい人たちがたくさんいたことも印象に残る。
ジェイソンが推しのサッカーチームを選ぶための基準が独特なのも面白いところ。変なキャラがいないチームなんて果たしてあるのだろうか。キャラもいて、鳴り物が大音量で響く日本のスタジアムは、ジェイソンにどこまで受け入れてもらえるのだろうか、なんてことを考えてしまった。
推しのサッカーチームを見つける週末旅行の話だが、ドイツサッカーのことを知っていても、まったく知らなくても問題ない。サッカーのことはほとんど関係ないから。彼ら親子の関係性が深まる過程をとても愛おしく感じられればそれでいい。ただ、クライマックスに泣けるような大きな出来事が起こるわけではない。穏やかに温かみを感じる終わり方だった。そんな映画もありだ。
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