「ゆるキャラは人気あるねんでー」ぼくとパパ、約束の週末 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
ゆるキャラは人気あるねんでー
ジェイソンが、56ものサッカーチームを巡る旅は、
単なるスタジアムツアーではない。
それは、五感で世界を捉え直し、
自らの内なる声に耳を傾ける、壮大な自己発見の旅だ。
文字通りの、書を捨てよ街へ出よう、だ。
発煙筒の煙、古いトイレの臭い、ビールを浴びる、
大歓声、身体検査、スタジアムの振動、
これらの五感で得られる情報は、
wikiには決して記されない、
SNSにも発信されていない、
生の体験から得られるジェイソンだけの生のデータだ。
ジェイソンは、これらの感覚を頼りに、
自分にとっての「正解」を導き出していきながら、
ブラックホールの終焉までを、
ジェイソン脳に蓄積、
実存するカオスもファイル化していく。
言葉という抽象にごまかされない、
その為にも重要な事は譲らない。
それは、頭で理解する前に、体で感じるという事。
センサーは心臓、ドキドキすればGO、
まずは体感的な選択肢をあげる。
ママパパの選択肢ではない、
ドイツの選択肢でもない、
ジェイソン自身がルール化した選択肢だ。
本作が更にに際立っているのは、
彼が単にサッカーチームを選ぶだけでなく、
自分自身を見つめ直す過程を家族と共に描いている点である。
彼自身は、家族や社会が定めた枠組みから飛び出し、
自分の感覚を信じることで、
新たな自分へと成長していく。
と同時に、
ママパパ、家族は、
まるでトム・クルーズが「レインマン」で、
ダスティン・ホフマン演じる兄から多くのことを学んだように、
守る側と守られる側の関係が逆転するような、
深い共感と成長もみせる。
パパのセリフ「攻守交代だ!」が象徴的だ。
単なる感動的なヒューマン作品にとどまらない。
現代社会において失われつつある、
あらゆるスペクトラムの源泉である、
人間の感覚や直感の重要性を再認識させながら、
個々人にとってのインクルーシブという考え方、
行動のしかたを、
再考させてくれる作品でもある。
【最後にジェイソンへ】
残念なマスコットは日本では、
ゆるきゃらって呼ばれて、人気があるんやでー