劇場公開日 2024年11月15日

「柳の下に二匹目の鰌は居るか」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0柳の下に二匹目の鰌は居るか

2024年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

それにしても『リドリー・スコット』という監督は
関連作品を作るのが本当に好きなのだなと思う。

一本には盛り込め切れなかった構想を、
全てアウトプットしたいとの強い欲求でもあるのだろうか。

〔エイリアン(1979年)〕
〔プロメテウス(2012年)〕
〔エイリアン: コヴェナント(2017年)〕
と並べた時に、前日譚の二作は
規模は大きくなっても、評価は下がるとの残念な結果に。

そして本作は〔グラディエーター(2000年)〕の続編(後日譚)。
同じ轍を踏むのではと、一抹の不安が胸をよぎる。

物語りの核となるのは、
同様に個人間の宿縁。

しかも、過去の時代を舞台に描くのにも
デビュー作の〔デュエリスト/決闘者(1977年)〕
近作の〔最後の決闘裁判(2021年)〕と
執拗な関心を示す。

今回はそれに「貴種流離」を絡める。

北アフリカのヌミディアで妻と平和に暮らしていた主人公が
ローマ軍の侵攻により、妻は殺され
自身は奴隷となったのちに剣闘士にされ、
しかし、妻を殺害した将軍に復讐するため爪を研ぐとの流れ。

その過程で『ルシアス(ポール・メスカル)』は幾つもの闘いを強いられる。
何れもが奇想としか言えぬシチュエーションだが、
主に(金に糸目をつけず実物大を造ったという)コロシアムでのそれは
とんでもないスペクタクル。

が、次第に、直接的な仇だけが問題なのではなく、
その後ろに巣食う存在が見えて来る。
帝国そのものを腐らそうとしている影が。

それにして、千年を超える古代ローマの歴史で
暴君を冠される皇帝の多いことに驚く
(勿論、名君も数多居るのだろうが)。

『ネロ』『カリギュラ』と並び『カラカラ』も腐敗した権力。

就任と時を同じくしての弟の殺害や
「アントニス勅令」の発布、
版図を拡大するためだけに繰り返す無謀な遠征も
悪評の背景だろう。

本作では、歴史的な事実や実際の人物は取り込みつつ、
史実とは異なる役割を与え
虚実をないまぜにしながら
絡み合った人間関係が生み出す影と光を外連味たっぷりに描く。

とは言え根幹の部分に焼き直しとも取れる既視感はあるし
「貴種流離譚」と示されたところで
結末が想定できてしまうのは残念な部分。

ましてや、冒頭と最後のシークエンスを
同じ科白を使い、構成まで似せてしまうのは
やり過ぎの感もある。

ジュン一
amariftさんのコメント
2024年11月18日

関係無いですけど「ドジョウ」の漢字って「泥」が付かないと駄目(泥鰌)と思ってました。
「鰌」一字でも良いのですね(調べた)

amarift
トミーさんのコメント
2024年11月17日

やり過ぎの声に、きっとリドスコはオレの作品!と開き直ると思います。

トミー