「グリンダが想定よりカス」ウィキッド ふたりの魔女 斎藤将暉さんの映画レビュー(感想・評価)
グリンダが想定よりカス
事前情報として「正反対の二人グリンダとエルファバの友情が芽生えていく」という内容だけ知っている状態で映画を観た。そのため「最初は軽薄なグリンダだがエルファバと関わる内に情に厚くなっていく」というストーリーを想定していた。
しかし本編でのグリンダは一貫して自分の利益最優先の損得勘定人間で正直残念。
最初のシーンでも、民の質問に対し真摯な対応をせず、多忙アピール。西の魔女の像も躊躇ってるポーズは取るものの結局燃やす。しかも、学友だと言う時に「ずっと昔の事なの」と言い訳するスタイル。
ルームメイトになったエルファバの部屋を均等に分けない。本意ではなかったにしろ、自分が手を挙げたのだから均等に分けろよとモヤモヤ。
エルファバにおばあちゃんからもらったダサい帽子を、流行りだと騙してプレゼント。そのプレゼントに感激し、お礼に先生に「グリンダにセミナーをしてくれ」と深夜にわざわざ頼みに行くエルファバ。流石に悪いと思ったのか、ダンスパーティーではエルファバを庇うが、正直割に合わない。エルファバが映画のラストシーンまで大切に帽子を被っているのも痛々しい。
自分への好意を利用する残酷な行動。ボッグからの自分への好意を利用して、エルファバの妹に声を掛けさせる。グリンダに良く思われるために、エルファバの妹と過ごすボッグ。それを知らず、本気で自分の事を好いてくれていると思い喜び、グリンダに感謝までしているエルファバの妹。グロテスクな構図過ぎて…
改名のシーンも教授の名前を使って、自己演出。もううんざり。
エメラルドシティでのラストシーン。オズの魔法使いと決別した後、「私達なら無限の力が発揮できる、一緒に行こう」と言われてもグリンダは、はぐらかすように話を逸らす。最後は飛ぼうとはしていたけど、結局先生の手を取る。自分にとって都合が良い方に流れる。決してエルファバの意思を組み、自分も決別するだとか、動物について体制を変えろだとか言わない。人のために損をすることが微塵も出来ない人間性、嫌悪感しか湧かないんだが…
エルファバがこの軽薄さに気づかず、親友だと勘違いしているのが苦しい。グリンダからしたら、自分の立ち位置を良くしてくれる駒でしかないのに。
それに対し、エルファバは先生に嫌われるかもしれないのに、わざわざグリンダについて深夜に進言したり、動物のために世界の敵になったり、人のために損をしていて綺麗な対比だからこそ胸糞悪い。
実際そういう生き方をしてるやつも沢山いるし、直接的に手を下しているわけでもない。ただ、エルファバがあまりに報われなさ過ぎて。最終的にエルファバの死が、グリンダを魅力的に演出する要素の一つになるんだろうなと思うと、もうやるせなくて。
全体の印象としては、学校の嫌なところがよく描かれているなと言う感じ。
可愛くて、波風立てず良いように流されるやつが人気者。
見た目が変で、上手く流れに乗れないやつは目の敵にされる。人気者があいつ嫌いと言えば、次の日から学校中から冷たい目を向けられる。しかし、力があるやつに認められれば周りは一瞬で手のひら返し。
「長いものに巻かれる事が学校という閉鎖空間において最善策。」という嫌なリアリティがあった。
ポピュラリティ最優先で動く世界と、自分の大義最優先で動くエルファバ。世界の敵となることが必然だけど、何とかならないのかな…
映像や世界観が素敵だったから続編に期待。
冒頭の部分などは後編で回収されるかもしれないし、グリンダの変化もそこで描かれるかもしれない。
でも、帽子の件は謝罪した上で真実を伝えないとダメですよね。
そこで誠実さを見せた上で、「それでも貴女に貰ったものだから」と大事にするなら全然違う。
「二人なら何でも出来る」という唄に説得力がありませんでした。