「舞台版「ウィキッド」をご覧の方はこれで良いの?ハリウッド労組ストライキの影響をまともに受けた作品?」ウィキッド ふたりの魔女 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
舞台版「ウィキッド」をご覧の方はこれで良いの?ハリウッド労組ストライキの影響をまともに受けた作品?
舞台ミュージカルの「ウィキッド」は未見ながら、複雑なキャラクターを持つ二人の女性の話しをシンシア・エリヴォ&アリアナ・グランデが歌い上げるという事、劇場予告編もまずまず良かったので劇場鑑賞(TCXドルビーアトモスチケット完売)。
しかし・・・一言で言うと長い
2時間40分あるのにPART 1!っていくら歌唱でもたせたって話しがだれて仕方ない。
まあ歌って踊ってのシーンがインド映画くらいはあるので、脚本もへったくれも無いという感じ。
それにしてもこの脚本、舞台版「ウィキッド」を観たお客さんは納得できるのだろうか?
そして、分業が進んだハリウッドの人材不足の深刻さを垣間見たかもしれない。
ミュージカル映画だから歌って踊っては勿論良いのだけど、こんな作品作ったらミュージカルアレルギーの人が増えちゃうだけでは?
「グレーテストショーマン」やディズニー「アラジン」の方が遥かに面白い。
美術・衣装はアカデミー賞を受賞しているだけあって、見応えはある。
特に衣装は素晴らしい!美しいフォルムを保ちながら、ミュージカルの動きにも映えるっていうのは本当に凄い!劇場エントランスにレプリカの衣装が飾ってあったが、あの衣装を着て歌を歌うっていうだけでも一見の価値はある(ので+0.5)。
美術も、セットの建て込みを予告編でも流しているが、エメラルドシティもシズ大学もディズニーランドばりの実物大セットを組んでいるので圧巻!
なのだが、せっかくリアルな街を贅沢に作り上げているのに、何か色々なところが残念でもある。
例えばVFXの出来栄えがいただけなかったり、ジェフ・ゴールドブラム演じるオズの魔法使いの部屋もちゃちいの一言、お城へ続くミニチュアシティ・街道のレンガの色をLED?で見せたり、紗幕裏のホリゾントに思いっきりシワが出ていたり、舞台だったら真っ先にNGとなるところを平気で映像として残している気遣いの無さが気になって仕方ない。
※ホリゾントのシワなんていくらでも編集で綺麗にできるのに、こう言った細かい部分に気が回らず派手な面だけに目が向いているハリウッド作品の問題点が現れている様にも感じた。
キャスティング、シンシア・エリヴォは期待通り歌も演技も素晴らしかった、アリアナ・グランデは良い意味で憎めない憎たらしさがチャーミング、ただネクストマライアと言われた歌唱力はやや影を潜めていたのか正直物足りなさを感じた(昔のアリアナグランデはマライアのハイトーンを軽々歌い上げていてるMVもあるが、そんな姿を期待していると正直肩透かし。実力と言えば実力なのかな)、その他キャスティングは正直微妙、多様性を全面に出すのも理解できるがチャイナマネープンプン配役が鼻につく。特に酷かったのがシズ大学の魔法学部長ミシェル・ヨー、せめて歌わなければだったが申し訳程度の歌唱がこれまた酷い。
やはりミュージカルは音楽が命だが、さすがにこれだけ引き伸ばすと音楽の魅力も薄れている気がする。素晴らしいミュージカルは舞台でも映画でも鳥肌立つほど感動するが、ドルビーアトモスの効果も虚しく終映。
ただ一つ思った事は、この作品の吹き替え版キャストがどんな風に歌い上げているのだろうか?最近のミュージカル映画はオリジナルと吹き替え二作品あると言っても良いほどなので、そこは楽しみ。
分業制が進みプロフェッショナルなスタッフが集まっているのがハリウッド!なんてのは今や幻想で、2023年の全米脚本家・俳優労組の相次ぐストライキがハリウッドに深刻な影響を与えているのは明白、このクラスの大作なら200〜300人のクルーが3ヶ月は拘束されるだろうが、そのクオリティを管理するだけでも大変だろうし、ましてや企画から撮影開始迄の間にコロナ禍となり、撮影期間中にストライキ迄あった事を考えると仕方がない面もあるが、少なからず影響があった事を感じさせる出来栄は残念。
余談:そもそもだけれど、多様性にフォーカスした世界観、熊の姥やヤギの教授が当たり前に存在する世界で、何故緑色の魔女があんなに蔑まれるのか合点がいかないのは私だけだろうか?