「この映画の硬質さに関して‥」ゆきてかへらぬ komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
この映画の硬質さに関して‥
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっていたので短く)
基本的には、今作の映画『ゆきてかへらぬ』を面白く観ました。
特に美術をはじめ、画面の美しさは観るべき素晴らしさがあったと思われます。
しかしながら、映画全体を覆う硬質さに関して、個人的には人物の本心に迫り切っていないのが理由のように、一方では思われました。
主人公・長谷川泰子(広瀬すずさん)は、母が父に裏切られ、自身ともども母が入水自殺しようとしたとの話をします。
中原中也(木戸大聖さん)は、風車をつけた乳母車の赤ん坊は自分自身だとの話をします。
それぞれ主人公・長谷川泰子も、中原中也も、幼少期に負った心の傷によって、互いに内面の空虚さを持っている事が伝わる場面でもありました。
しかしながら一方で、今作はそれ以上に踏み込んで、主人公・長谷川泰子や中原中也の心情の理由が解明されて描かれていないように思われました。
主人公・長谷川泰子と中原中也は、内面の本心を吐露する代わりに、表面で強がっていて、主人公・長谷川泰子は精神的におかしくなり、中原中也は若くして病気で亡くなることになります。
しかし長谷川泰子も中原中也も、内面を解明的に映画で描かれていないので、観客は本当の意味で2人の心情を理解出来ず、感情移入し辛い描き方になっていると思われました。
これが映画が硬質に感じた要因だと思われました。
おそらく今作の根岸吉太郎 監督は、主人公・長谷川泰子と中原中也が、なぜこのような振る舞いをしていたのか、深く捕まえることなく今作を描いてしまったのではないかと、僭越思われました。
初めに触れた美術や画面の充実した素晴らしさ、そして主人公・長谷川泰子を演じた広瀬すずさん、中原中也を演じた木戸大聖さん、小林秀雄を演じた岡田将生さんを含めて俳優陣の素晴らしさはあったと思われます。
それだけに、惜しい作品になっていると僭越思われ、今回の点数となりました。