「幻惑的な世界観◎役者さんの演技◎」ゆきてかへらぬ 荒川ラリーさんの映画レビュー(感想・評価)
幻惑的な世界観◎役者さんの演技◎
大正浪漫を舞台にした作品ということですが、美術が兎に角すごいです。街並みから小道具に至るまで微に入り細に入り本物のようでした。主人公を演じた3人の役者さんたちの演技は大変すばらしく、「私たちは神経と神経でつながっていましたの…」という長谷川のセリフが言い表すように、ガラスの如く繊細で今にも壊れそうな人間の心を見事に体現していたと思います。岡田さん広瀬さんはすでにベテランの域に達してらっしゃるのでさすがといった感じでしたが、中原中也の繊細かつ粗暴な内面をナチュラルに体現していた木戸さんの演技も大変素晴らしかったですね。
根岸吉太郎監督は「キャバレー日記」や「遠雷」といった多くの名作を世に送り出してきた方ですので、一度はリアルタイムで新作を見たいと思っていました。また脚本を担当された田中陽造さんは、鈴木清純や相米慎二などの名匠たちのもとで、非常に幻惑的で独自の世界観を打ち出した作品を書かれてきた方です。ですので、稀代の名匠と脚本家のコラボレーションという意味においても、非常に期待値の高い作品でした。劇場で見ることができとても嬉しかったです。
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