「別世界のなかの、今もあるもの」ゆきてかへらぬ humさんの映画レビュー(感想・評価)
別世界のなかの、今もあるもの
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※最後の文、不足を追加しました。
静寂のなかの雨音や足音
濡れた紅い番傘の艶
純白の雪
町屋の黒い瓦と壁
小さな電球が照らす畳
窓ガラスの木枠の雰囲気
雨戸を引く時の重みや質感
室内の会話劇が中心で時事背景の影はほとんど見えないため、心情や人柄を浮かばせるにはその場の空気を生み出すもの達が頼もしい。
予告を見たときの期待感を一番に越えるのはきっとこれだろうと早々に思う。
ほどく先からまた絡み出すような3人の離れられない運命を〝嫉妬〟と〝翻弄〟がびっちり繋ぎ繰り返す。
充満する息苦しさを開放するには外出して遊ぶ無邪気な姿や風にはらむコート、桜の花のやさしい色はありがたいアクセントだった。
今思えば、あの奇妙なループに没入していた自分がいたということだろう。
そしてそれがなぜ起きてしまうのが〝ようやく〟ちょっとわかったようなラストの瞬間には、吸った息が〝くっ〟と喉に滞った。
そこで見た泰子と小林のそれぞれの表情がストップモーションでこびりついたままエンディング曲を聴いていた。
序盤からあれだけ感じた昂りからどういうことか遅れてきたファム・ファタールの実感だった。
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ひでちゃぴんさんのコメント
2025年2月22日
humさん、共感&コメントをありがとうございます。泰子は中原中也が好きでも嫌いでもあり、それは愛情に他ならないのだろうと思いました。広瀬すず、頑張っていました。今後の作品にも注目していきます。