本心のレビュー・感想・評価
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自分は自分の本心が分かっているだろうか?
ここに登場する「自由死」とは、自分の死期を申請して役所に承認されれば税制上優遇されるという、年寄りや重症患者を減らすための制度として描かれていて、『PLAN 75』(2022年)を彷彿とさせると同時に、評論家や政治家による高齢者を社会負担として捉える発言なども思い起こさせる。
また、「持つ者」と「持たざる者」に社会が二分されて、持たざる者がリアル・アバターとして持つ者に右往左往させられる様や、持たざる若者たちが次々と闇バイトのようなものに手を出していく様、そして更に、VFの言動に惑わされている様は、日々の生活がスマホに振り回され、自分の頭で考えることを放棄し生成AIに頼りっきりになる市井の人びとを描いているようでもある。
現在と地続きの近未来の社会を風刺的に描きつつ、「AIは心を持つことができるのか?」という『2001年宇宙の旅』(1968年)以来繰り返し投げかけられている問いに対して、「本来の」人間って一体何なんだ?という問いで答えている作品だと言える。
ネットの投稿などの虚構に満ちた現実と過去のデータに忠実な仮想空間では果たしてどちらが「本物」なのか?リアルな人間だって、そもそもそんなに単純なものではなく、その人の一面だけを見てこうだと決めつけることなど出来はしないのではないか?
本作のタイトルについている英語のタイトルは “The Real You” だ。よく知っていると思っている人のことをあなたは本当に知っていますか?本当にその人の本心が分かりますか?それよりも、自分自身の本心がどうなのか分かっていますか?
どうでもいいことなのだが、エンドロールに小さく「窪田正孝」という名前が書かれていたのだが、それがあの窪田正孝だとしたら、一体どこに出ていたのかがまったく見当がつかないんだよな…… と思っていたらAIの声だそうだ。
本当の思いなんて…
人間の本質
「本当に言いたかった事」
愛は偽造できる?
池松壮亮が波に乗ってる2024年。「ぼくのお日さま」「ベイビーわるきゅーれ」を個人的年間ベストに入れてるのなら、本作も逃す手はないでしょうと思っていたのに、よく行く映画館との兼ね合いが上手くいかず、気づけばどこの映画館も公開終了のお知らせが。もうなんで?!たまぁにあるんだよね、こうもギリギリになってしまうことが。ということで、毎度御用達の駆け込み寺(ちょっと遠くの映画館)に滑り込みで鑑賞。あっぶねぇ、逃すところだったよ。
評判はそれほど良くないのでさほど期待せずに見に行ったんだけど、これが意外に良くて。平野啓一郎原作の「ある男」は過大評価され過ぎでは?と少し思ったもののまあ好きだったし、何より石井裕也が当たり外れはあれど自分は結構好きだから、わりと上手いことハマれたなと。
設定が2025年の8月と近未来という言葉の威力からすると近すぎる未来ではあるんだけど、このなんともフワッとした捉えようのない、みんなが探り探りで生きている感じがとてもリアルですべてにすごく納得してしまった。
これは現実なの?それともVRゴーグル(この言い回しが正しいのか分からないけど)から見える世界なの?と惑わせる演出が秀逸でとても面白い。おかげで最初から最後まで考察が広がる。VR世界、そしてAIの技術は目まぐるしいほど進化を遂げており、最近では生成AIと言う新たな刺客が猛威を振るっている。
それじゃあ、人間はどうなのか?人は日々進化し、退化している。みたいな言葉があるように、例え文明が発展したとしても、人間も次なるステージに行くとは言えない。むしろ、衰退してしまうのが想像にかたい。進化は人をダメにしてしまう。むかしはいまよりも不便でも、むかしのほうがいまより豊かだとも思う。
人というのはまあ鈍感なもので、少しの変化を感じることが出来ず、気づいた頃にはもう遅かったなんてことが山ほどある。それは技術的な側面だけじゃなくて、上記のような心情の変化という内面的な側面においても。一緒に暮らしていても分からない。人は全てをわかった気になってしまう。この映画ではこれをすごく丁寧に描いていて。親子間における小さな蟠りだったり、片思いの恋心だったりと、人間の煩わしさが皮肉のようにしっかり表面化されている。AIと人間。この対比がすっごくわかりやすくなっていて、直にこの映画の意図するメッセージを受け取ることが出来た。
我らが池松壮亮は、今年公開の2作品とは違い、かなり平凡で至ってどこにでもいそうな主人公。見ている自分たちと等身大でいてくれる時の池松壮亮は、奇天烈な人物を演じる時以上に大好きだし、そうそうコレコレと首を縦に振ってしまうお馴染みの顔。
こんな平凡な役でも、やっぱり上手いなぁと唸ってしまう。細かな涙の震えと小さな感情の動き。普通がいちばん難しいんだよ。石井組の常連だから、もうお互いことをバッチリ理解し合ってる。そんなことが見て取れる安定感と抜群の存在感だった。
まぁただ、この手の映画の在り方としては悪くないんだけど、それを加味しても観客に投げかけすぎたなぁと感じてしまうし、「ある男」に引き続き平野啓一郎がちょっと自分に酔ってるような、世界を斜め上から見すぎるようなところはどうしても気に食わなかった。
監督なりに、原作者なりにこの物語に対する解答は持っているのかもしれないけど、それでもふわふわし過ぎていて掴みどころのない、大物俳優の演技があってもちょっとインパクトに欠けた映画になっている。全体的には好きだからそこまで不満は無いけど、このテーマを扱うなら地盤はもっとしっかりしたものであって欲しかったな。
実写邦画となると途端にレビューが長くなってしまいますね自分。とやかく書いたけど、やっぱり池松壮亮と石井裕也には今後ともたくさん映画を作って頂きたい。日本映画界を支える、大事な2人だと思うんで。過去作見て楽しみに待っときます😊
ラブストーリー
近未来の日本を舞台二したSF。
この作品は、格差社会やAIによる恐怖、そして心とは何かと問いかけてくる。だが、この映画の本筋は朔也と彩花のラブストーリーである。
秋子の自由死の理由を知るために、VF(バーチャルフィギア)を作る。その過程で、秋子の友達であった彩花と出会う。家を探している彩花を朔也は自宅へ招き入れる。
その後は二人とVFの3人での生活が展開される。
過去の心の傷から朔也にも、触れることが出来ない彩花。その彩花を気遣い、手を触れずにダンスをするシーンは朔也の彩花に対する気持ちが表れていた。
だが、イフィーのリアルアバターとなり、彩花が好きだという願いを受け入れた朔也と、朔也の期待に応えようとする彩花。二人の歯車が少しずつ崩れていく。
役者陣は、三好彩花役を三吉彩花が演じたことで、SF感、バーチャルさが作品に増したと感じている。演技も心揺れ動く様を見事に演じている。そして、田中裕子。笑顔なのに淡々と話す、本心の見えにくい役を演じさせたらこの人に適う人はいない。
ラストでは、母親の本心を知りたいと願った、朔也が彩花に対して本心を隠す。空に伸ばした手に触れた彩花の手は2人の本心を表していたのではないか。
観てから、しばらくしてじゅわんとくる映画
普通に特に不満もなく生きてきているが、心の中で恐れているのは大切な人を失うことである。思いがけないタイミングで不幸が訪れたなら、私もヴァーチャル・フィギュア(VF)を300万円払って購入するかもしれない。
原作は未読だが、主演の池松壮亮がこの小説を読み面白さに圧倒され石井裕也監督に映画にすべきと進言したとのことである。
予告を見る限りは母である田中裕子のがVFとして登場することが中心のファンタジーなSFドラマと認識していたが、池松壮亮がリアルアバターとして働くなかでみた不条理な世の中の現実(今も実は同じ不条理の世界である)や過去のトラウマとの葛藤、セックスワーカーだった三吉彩花のコンプレックスを抱えながらも懸命に生きている姿などヒューマンドラマとしての要素の方に強く惹かれる映画でした。
田中泯はワンカットだけで凄い存在感だし、妻夫木聡や綾野剛、仲野太賀らを脇役で使う贅沢さで映画を骨太にしていってる感じでした。
とにかく、ラストシーンに掲げた手に寄り添う手が彼女であることを祈ってます。
ここ数年だけでも「茜色に焼かれる」「月」「愛にイナズマ」等傑作映画を量産する石井裕也監督の実験的作品。後年に評価が高まるのではと思ってます。又池松壮亮はこの「本心」に加え「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」「ぼくのお日さま」の3本で今年の最優秀主演&助演男優賞は決定です!
ひとつひとつの要素が面白そうなだけに残念
予告を見て、母がなぜ自死を選んだのか、母をAIで再現し、その本心を探す映画なのだと思っていた。しかし、最後まで観てみると「母の本心を探す」という目的はどこへやら、どうにもとっ散らかった映画のように感じた。「自由死」、「VF」、「リアルアバター」、色々と面白いSF要素が沢山出てきたし、恋愛要素・アングラ要素?などもあったがどれもどうも中途半端で、勿体ない。
『PLAN75』や『Arc』のように、ありえそうなSFを描く話は比較的好きなんだが、この作品は久々にはっきりとつまらないなと思った映画だった。
母(VF)の話す「大事な話」も、野崎が冒頭に話した2面性を感じさせるようなものでも無かったし、散りばめられたテーマが面白そうなだけに本当に残念だった。
あと、「ミヨシアヤカ」を三吉彩花が演じてるので、これは原作のときからこの名前なのか、何か意味があるのか変に勘ぐってしまって、それも少し嫌だった。
最後、VFの母と突如別れを告げようとするのはミヨシが去り、日常がすべて嫌になってしまったからのようにも見えるが、「VF」が大きな事件の首謀者になり存在が社会問題になってしまったということもその原因なのだろう。もっと「VF」を主軸に描いたら面白い作品になりそうだったのになぁ。本当に本当に残念だ。
母親の本心に迫るハズが…
もっとほかに使い道あるだろう!
ちょっと散漫な
原作読んでみた方が良いな、こりゃ。
原作は面白いんだと思うんですよね…。
じっくり読んで理解したい感じでした。
AI、VF(ヴァーチャル・フィギュア)、
自由死OKな近未来を舞台にしたヒューマンミステリーだそうで、
予告編を観て、てっきり、自由死を選んだお母さんの本心を紐解きながら、
母と息子のお話しで涙するのかと思っていましたが、
そうでもなく、テクノロジーが発達しても。なのか、
発達したからか。なのか、
とにかく生き辛い近未来を描きたかったのかな?
で、結局、このタイトルの意味は、どんなにテクノロジーが発達しても、
本心は本人しか判らないよー、みたいなこと???
ただ、ちょっとハイテクについていけないというか、
ほぉ~すごねー、という感情の方が勝ってしまって、
最終的に、なんだか良く解らなかったです…。
あと、男の人が原作って感じがしました。
代理告白とか、恋愛ターンが中学男子みたいだなぁ…って思っていましたわ。
原作読んでみた方が良いな、こりゃ。
考えさせる為の。。。
母であろうが心は分からない
ショートSF?
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