劇場公開日 2024年11月8日

「近未来のイタコ」本心 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0近未来のイタコ

2024年11月25日
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鑑賞方法:映画館

平野啓一郎の近未来小説を石井裕也監督が映画化。
自由死、リアルアバター、バーチャルフィギュアなど、近い将来現実にありそうな題材にまず目を引かれるが、そうした近未来的な設定と、死んだ母の話を聞きたいという、昔ながらの切実でかついかがわしい、恐山のイタコのような目論見を組み合わせていることに、強く興味を引かれた。
しかし、母のVFを作っていく中で、母と親しかった若い女性が登場してから、肝心の母の話が後景になって、主人公の過去の出来事やその女性との関係が前面に出てくるが、これは原作どおりなのだろうか?秘密が明らかになっていくというより、だんだんと散漫になっていく感じ。
貧富の差とか、姿の見えない悪意とか、現実に見聞きするモチーフを持ち込むより、もっと母の話を突き詰めてほしかった、というのが正直なところ。
登場人物は、あえてそうしているのだろうが、みな現実感に乏しい。役と同名の三吉彩花は、肌がきれいすぎて本物のVFと見間違えそう。
どんな題材でも軽さや柔らかさを見せるのが石井監督の持ち味だと思うが、今回の題材とはうまくマッチしていなかったかな。もっと硬質で即物的な演出の方が合っていたような…

山の手ロック