「【この映画の舞台の台湾の外れの小さな理髪店には、確かなる人間の営みがあります。そして、店主の年配の女性には人を思い遣る優しさが満ち溢れています。ノスタルジックで優しい気持ちになる映画です。】」本日公休 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【この映画の舞台の台湾の外れの小さな理髪店には、確かなる人間の営みがあります。そして、店主の年配の女性には人を思い遣る優しさが満ち溢れています。ノスタルジックで優しい気持ちになる映画です。】
■台中にある昔ながらの理髪店”家庭理髪”。女手一つで育てた子供たちリン(ファン・ジーヨウ)、シン(アニー・チェン)、ナン(シー・ミンシュアイ)も独立し、店主のアールイ(ルー・シャオフェン)さんは常連さんがポツリポツリとやって来る店で、常連さん達の髪を切る。他愛無い会話をしながら。
ある日、離れた町から通って来ていた“先生”が病の床に伏したことを知ったアールイさんは、店に「本日公休」の札を掲げ、先生の髪を切るために一人で車を運転して、最後の散髪に向かう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・物語は、自分の理髪店を持ちたいリンと、心優しい車整備士のチュアン(フー・モンボー)が結婚していた頃と、現在とが並行して描かれる。
リンはしっかりしているのだが、お金に厳しい。チュアンは、友人が事故を起こした車の修理代を待ってあげるが、それをリンは許さない。
リンとチュアンの対比が、現在と一昔前の人情があった時代を描いているようだ。だが、監督はどちらが正しいかなんて、品のない描き方はしないのである。
・アールイさんは、常連さんの古びた名刺を大切に名刺入れに保管している。ある日、昔から通ってくれた”先生”が病の床にある事を知ったアールイさんは、”出張散髪”に出掛ける。この静に床に横たわっている”先生”の髪を、アールイさんが優しく語りかけながら切ってあげるシーンがとても良い。アールイさんは、滅多に喋らなかった”先生”がある日、とてもうれしそうに新聞に載った息子の話をしていた事を、その息子さんに話すのである。涙ぐむ息子さん。
■今では、私の居住区では個人理髪店は少なくなってしまった。その代わりに繁盛しているのは、まるでトヨタ生産方式の様に流れるように、効率的に散髪するチェーン店だ。私も時折利用するが、散髪の腕は確かだが客との会話はない。散髪される側は、何だか製品になったみたいである。けれども、そういう時代なのだろうと思う。
・アールイさんが、”出張散髪”の帰り道に脱輪してしまうシーン。駆け付けた男達の中に、且つてアールイさんの店で髪を切って貰っていた男がいる。彼は、仲間と共にアールイさんの車を助けて上げるのである。
・年を取って来たアールイさんを、何だかんだ言いながら心配するリン、シン、ナンの兄妹も良いのだなあ。
・流行りの髪型にして貰った男の子がお母さんから”全然、髪が切れていない!当分来なくて良いように切って貰いな!”といわれながら、バリカンで刈り上げられるシーンは可哀想だったけれども、男の子あるあるだよね。
<ラスト、心優しい車整備士の元娘婿のチュアンが、中古車が好きな女性を好きになってアールイさんの所で髪を切って貰いながら、”当分、来れそうにありません・・。”と申し訳なさそうに言うと、アールイさんは優しく”お嫁さんに優しくしなさい。”と言って上げるのである。
今作では、確かなる人間の営みが描かれ。主人公の店主の年配の女性アールイさんには人を思い遣る優しさが満ち溢れています。今作は、ノスタルジックで優しい気持ちになる映画だと私は思います。>
■今作のフライヤーは、昨年秋に長野県に出張に行った際に日本最古の現役映画館”長野相生座・ロキシー”で貰いました。
今作と同様に、優しい雰囲気が漂う落ち着いて映画を観れるとても好きな映画館なのです。近くに行かれる方は、善光寺参りと併せて、行かれても宜しいかと思います。では。
いい映画、
いい床屋さん。
いい映画、そして
いい映画館・・
長野相生座ロキシーは昔からのシネコンですよね。
本当は映画はすべて贔屓の映画館でちゃんと観たいのですが、「U」の品揃えはやっぱりすごい!(あれは「有線」の経営ですね)。
便利な時代ではあります。
共感ありがとうございました😊
こんばんは。築120年の歴史を持つ相生座ロキシー、画像検索しましたがまさにこれこそノスタルジー溢れる映画館ですね。大林信彦の映画に出てきそうな。旅先でこういう映画館にふらっと映画を見に立ち寄れるのはとても贅沢な喜びですね。一度行きたいものです。