舟に乗って逝くのレビュー・感想・評価
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中国の徳清 (杭州の近く) 運河が多い水郷の街、かつては生活や移動...
中国の徳清 (杭州の近く)
運河が多い水郷の街、かつては生活や移動がもっぱら舟だったとか。
その街で暮らす、ある家族の物語。
母親に癌が見つかり、家族や親戚が動揺し。
病状が進むにつれ、母は記憶も失いだし、
身内が悩み、振り返り、覚悟する様子。
時代設定は、ごく現代の様子。
お金の授受だけ見ても、若い世代はQR決済、母は現金と銀行窓口。
母は郷里で独り暮らし、
子どもらはみな成長し、巣立ち、それぞれの生活があり。
郷里の長老らと、いちど巣立った皆とでは、考えに隔たりもあって。
川に舟が浮かぶ様子… 一家で遊びに出掛けたり、時折現れる回想シーンが、
絵も音もあまりに美しくて。
元は美しい水郷の街だったことが、映像でよく伝わります。
映画館のスタッフさんが、鑑賞前に "納涼になりますよ" と仰っていたのも納得。
母の住まいには、母が嫁入りしたときに使ったという舟も、納屋で保管されていて。
子どもらが、それを引っ張り出し、想いを馳せる様子。
お盆前のこの時期に観ると、胸が痛くなる物語ですね…。
意図はよくわかったが。
小津さんの映画、特に「東京物語」を意識していることはよくわかった。私がいうのも痴がましいが、あの映画は、小津さんが長年に渡って鍛えてきたことの集大成であり、敢えていうならば、漸く戦争の影響を脱し、戦後の繁栄を目の前にした時代背景、笠智衆という名優の演ずる父親の存在とその振る舞いを通奏低音として、東山千栄子の病をめぐって、その長男と長女、次男の嫁、三男と次女の現在と未来を描いた、かけ替えのない傑作だった。
この映画では、江南地域の美しい徳清に一人で暮らす母は、大変活発な人で、子や孫が、その地に戻る必要はなく、精一杯生きてくれたらそれで良いという姿勢には、心から共感できた。しかし、彼女は、小さい頃、もらい子として都会で生活したことがあり、そこから徳清に逃げ帰ってきた過去があった。夫は、やむをえず大工をして子供たちを立派に育て、皆に慕われていたが、既に亡い。一家の星だった長男も亡くなっていた。
長女(姉)は優秀で、前夫との間に生まれた男の子は家を出て、俳優を目指している。縁あってアメリカ人の語学教師と出会い、徳清から180 km離れた上海で語学学校を経営するが、なかなか難しい。利発な娘を得るが、夫と娘は、どちらかといえば、米国を見ているようだ。次男(弟)は優しいが、能力はそれほどでなく、ガイドをやっているようだった。ここで、母が病を得る。背景には、認知症の進行があるようで、身体さえ動けば。急に行動に走り、周囲をきりきり舞いさせる。すると、なかなか足が向いていなかった姉が、これまでの関係を取り戻すかのように、つきっきりで診るようになる。最初は、夫と娘がアメリカに里帰りしている間と思ったけれど、そうでもないようだ。夫は英語の教師としては、それなりの能力はあるが、経営はからきしダメで、それじゃあ、学校はどうなったのだろう。一方、弟は、なかなか煮え切らず、本当は船大工をしたいようだ。でも、家の階上に船を探して、水に浮かべたのはよいけれど、十分な防水加工もしないでは、長く持つはずもない。そうなのだ。この作品では、母の過去と姉と弟の現在が十分、描き切れていないのだ。
中国は、素晴らしい経済発展を遂げているように見える。しかし、その恩恵を被っている人とそうではない人の格差があるのか、経済的な繁栄を謳歌していたころの日本文化に対するあこがれを感ずる時がある。でも、小津の映画には、他にはない、とてつもなく厳しいところがあり、それをぜひ、見逃して欲しくないものだ。
思い入れが強すぎたか
自身の訴求したいテーマへの思い入れが強すぎたか、と言う印象。映像と音楽は美しく良かったが、俳優達の演技は形式的で素人演劇を見せられている気分ではあった。場面の切り替わりもぎこちなく、感動には至らなかった。やはり、監督の技量が足りなかったか。
映像の美しさは癒しを与えてくれる
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