「愛着は自己を写す鏡」SOUND of LOVE うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
愛着は自己を写す鏡
ミステリアスなASMR配信者・明葉と、あるフェティシズムがきっかけで彼女に出会った守屋の、二人と周囲に存在する愛着と執着を描いた物語。
フェティシズムやマニア心を刺激していた頃のASMRコンテンツやマネタイズが進む前のライブ配信の時代を思わせる世界観の中、一般的なヒーリングサウンドとは少し外れたASMRを始めとする聴覚の刺激を耽美に描いている。
最小限の導入で事が始まり、登場人物が衝突しても有機的にかみ合わない場面と刺激的な背景が続く本編は、短編を連結したような印象を受ける。
守屋や三上の求愛の仕方が独善的で、明葉の孤独が観ていて苦しかった。二人に限らず大抵の登場人物がエゴイスティックな愛し方をしており、物語にカタルシスが少ないところが辛い。フェティシズムに付き纏うマニアック感やダークな雰囲気をネガティブな描写で深めようとしたのかも知れないが、あまりバランスが良いとは感じられず、愛着を否定しているようにさえも見えた。
主演の染谷有香さんのミステリアスな存在感と、樫尾篤紀さんと和田聰宏さんの怪演は良かった。様々な場所に場面が移る一辺倒ではない画面作りや、アングラ感のある場所を生活感あふれる場所と地続きにした作り方も面白かった。
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