「SEA YOU」SUPER HAPPY FOREVER ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
SEA YOU
不思議な作品でした。
滲みまくった青春というか、喪失感たっぷりというか、邦画なのに邦画っぽくない作りに良い感じにハマれました。
序盤の佐野の自暴自棄な感じは不快さはあれどその1歩手前で憎めなさが出てきたり、第三者視点で観るとコミカルに見えるところもあったりして、この手の邦画が陥りがちな不快一直線な人物像にならずに進んでいったのでその点も良かったです(個人差あり)。
宮田がなんやかんや付き合ってくれてるのがとても良くて、本職が看護師だから救護も咄嗟にできるし、佐野が荒くれたタイミングでストッパーに入ってくれたり、社交性たっぷりなのもあって物事が順調に進むのにそれを佐野がぶっ壊す流れが宮田には失礼ですが好きでした。
宮田のSUPER HAPPY FOREVERの指輪を佐野が海に投げ捨ててしまうという中々の鬼畜っぷりに怒るでも喚くでもなく、ガクッと肩を落として部屋を去っていく宮田の哀愁がとても良い画になっていました。
それに対して佐野がまた連絡してなーって言うのでお前さぁ…って笑いがこぼれてしまいました。
不貞腐れた佐野の見る現実から過去の凪視点の映像へ戻る演出が滑らかで痺れました。
暗く描かれる現実から明るくなっていく過去の対比の映像化ってこんな感じなんだと上手いなぁってなりました。
家族の不幸で来れなくなった友達を心配しながらも折り返しの電話を頼むあたりおいおいと思いつつも、佐野が現実で語っていた携帯電話を落としそうで落とさない女性に目がいって声が出た2人がわちゃわちゃして宮田も交えて一緒にご飯も食べてクラブにも行ってとバカンスを楽しんでいるな〜という爽やかさが前半の重苦しさを払拭してくれるのもナイスなスパイスでした。
カップラーメンを2人ですすりながらこの幸せがずっと続けばいいのにね〜と言ってるのがブッ刺さりまして、、、普段からカップラーメンを食べる時に感じる幸せって格別ものなんですが、こうやって言葉に出した作品って今まであったかなとなりましたし、2人で美味しそうにすするもんですから鳴かなくていい腹の虫が鳴いてしまって恥ずかったです笑
数日の出会いだからこそのすれ違いが後々尾を引きずる展開かと思いきや5年の期間夫婦になってるもんですから不思議だよな〜とあの展開を見ても思ってしまいます。
落ちてあった赤いキャップをわざわざ古着屋に持っていって1000円で買うところも良かったですし、一つのキーパーソンである赤いキャップの登場が落とし物ってところも良かったです。
アンさんが物語の中心をつかさどって、それでいて現在と過去を繋ぐ役目も果たしているからこそ、要所要所で登場してにこやかな表情をしてくれたり、宴会会場での歌唱だったり、赤いキャップの行方だったりと初演技とは思えないナチュラルっぷりが最高でした。
夫婦として描かれるところが微塵も無かったのも面白い作りで、その間に何があったのかを観てる側に委ねる作りになっているもんですから色んな想像ができますし、最初の出会いが結婚生活よりも何倍も幸せだったのかなと考えさせられました。
旅先での出会いやささやかな幸せがここまで尾を引くとは…佐野の落胆っぷりも凪がいたからこそですし、佐野も幸せだったと思うけれど、凪も十分幸せだったんじゃないのかなと思いました。
余韻をたっぷり残してくれる素敵な作品でした。
鑑賞日 10/16
鑑賞時間 14:10〜13:55
座席 B-11