「戦争経験者との向き合い方」2度目のはなればなれ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争経験者との向き合い方
2014年7月に、89歳のイギリス退役軍人バーニーが、フランスで開催のノルマンディー上陸作戦70年記念式典に参加するために高齢者施設を抜け出した騒動を映画化。一度引退表明をし、常連だったクリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』出演も断っていたマイケル・ケインが、表明を撤回して臨んだ最後の主演作。
宣伝から受けるイメージから、どうしても妻レネとの夫婦愛に注目されがちだが、本質的に描きたかったのは戦争に関わった者達のトラウマや苦悩との向き合い方にあると思う。実際に戦争に赴いた元兵士の中には当時の記憶を掘り起こしたくなかったり、PTSDに苦しみ続ける人もいる。本作の監督オリヴァー・パーカーの父も、バーニーのように従軍経験があるも、その詳細を語りたがらなかったという。
しかし、そうした第二次大戦を戦った彼らの数は年月を追うごとに減っていく。つまりそれは戦争という過ちを語り継ぐ者も減っていることとイコール。かつては敵だったが、今は同じ苦しみを抱える者もいる。中盤での、そんな彼らとバーニーの邂逅シーンが一番印象的だった。
ケインやレネ役のグレンダ・ジャクソンとの、英国人らしい軽妙な掛け合いも微笑ましい。ジャクソンは本作が遺作に。合掌。
>トミーさん
あの元アフガン兵の再起はこれからでしょうね。この作品は戦争でPTSDを負ってしまった者はいつの時代も絶えない、というメッセージも内包していると思います。
70年経って、やっと墓参り出来た者、未だにぶるぶる手が震える者、後悔が止まらないケイン、こんな深い傷跡を残す戦争が止む事がないのは愚かしい限りですね。アフガンで負傷した黒人は何十年も苦しむんでしょうか?