「勘違いしすぎ」ポライト・ソサエティ TRINITY:The Righthanded DeVilさんの映画レビュー(感想・評価)
勘違いしすぎ
パキスタン系の主人公リアはロンドン在住の女子高生。
彼氏なし、友達少なめで、両親からも学校からも将来を不安視されるが、本人はお構いなし。
プロのスタント・アクター目指し、仲良しの姉リーナに撮ってもらったアクション動画をSNSに配信し続ける毎日。
そんなある日、パキスタン人コミュニティのパーティーに参加したリーナは若いセレブ医師に見初められ、とんとん拍子に両家の間で縁談は進み婚約へ。
だが、相手のサリムをただのプレイボーイと勘違いしたリアは、姉との結婚を阻止すべく、親友二人の協力のもと次々と妨害計画を発動。
ハッキングに不法侵入、デッチ上げとエスカレートするうちに、彼女は恐るべき事実を知ることに。
突飛な主人公の多感な時期の少女にありがちな、勘違いや思い込みの妄想系?と思いきや、ストーリーはそのままあらぬ方向へ。
ならば、サイコ・ホラーの『ゲット・アウト』(2017)みたいな様相に─というのも勝手な思い込みで、物語はぐだぐだ、いや、予想外の展開でアクション・コメディのクライマックスへとなだれ込み、ラストはいよいよアクション少女リアの本領発揮?!
この作品、何かの媒体で短く紹介されていたのを見て、ロンドンのマイノリティを舞台にしたメッセージ性の高い社会派ムービーかと思ってみたら、とんだ勘違い。
解説にムスリムの家族と紹介されているのに、観ていて「ヒンズー系(インド)では?」思ったのも勘違いで、脚本も兼ねたニダ・マンズール監督自身、イギリス在住のパキスタン人女性。
そもそも、マイノリティが登場するからといって、メッセージ性を要求すること自体、一方的な決め付け。
ムスリムのコミュニティを舞台にしながら、宗教的な要素がほとんど排除されていることからも、作品に込めたマンズール監督の志向が窺い知れる。
パキスタン系の主人公の親友が白人と黒人で、中華食材店や麻雀、日本人の歌などアジア系のアイテムが散見できることから、つい深読みもしたくなるが、本当はそんなことどうでもよくて、敢えて言うなら「イギリス在住のマイノリティの女性がアクション・コメディ作って何がいけないの」というのが、本作の一番のメッセージなのかも。知らんけど。
リーナの婚約者サリムの前妻が死亡している件はシナリオの重要な伏線なのに、さらっと流しすぎでは。大事なエピソードとして丁寧に扱えば、作品に膨らみを与えられたと思うとちょっと残念(勘繰りすぎもよくないが、作品の根底にフェミニズムの要素は強く感じる)。
全体的にクオリティの高い作品と評することはできないが、美人の主人公姉妹の魅力でかなり救われている気が。
婚礼式の衣裳のデザインも綺麗だったし、せっかく撮影したんだったら、リアのダンスシーンはブツ切りにせず、きちんと見せて欲しかった。