劇場公開日 2024年8月23日

「ムスリマ、パキスタン系、移民2世、女性、アクション」ポライト・ソサエティ Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ムスリマ、パキスタン系、移民2世、女性、アクション

2024年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

パキスタン系イギリス人の女子が主人公で女性同士がボコボコに殴り合うアクション映画、というジャンルを築いたことがまず新しい。なぜならアクション映画においてパキスタン系の主人公がまず少ないし、女性主人公はさらに少ない。イギリス発のアクション映画は多くても、自分と同じようなムスリマ、パキスタン系、移民2世、女性、などの主人公に出会えること自体が同じ境遇の女性達にはまれなのだ。彼女らが自分と同じような主人公に出会えることになった基盤を築いたことをまず評価したい。こういった「異色の」アクション映画がもっと増えて異色ではなくなるときに多様性が達成されるのだろう。

脚本は磨く余地があったと思う。前半、主人公が何度も怒りの化身と叫びつつ、何に怒っているのかわからない。進路希望に対する親の反対も、7クラスの女ボスに目をつけられるのも思春期にはありがちな悩みと言えばそれまでで、大した葛藤に見えないからだ。「家父長制反対!」と叫ぶ親友二人も含めて、具体的に家父長制に苦しんでいる描写もない。もっともインドパキスタンはじめアジア系の国々は昔から女性の地位が低く、移民であっても結婚しろという圧力が強く、その気もないのに見合い前提のパーティーに連れてこられるなどその影響から逃れられないため普段から怒りをためていることは理解できるが、やや説明不足感は否めないため主人公に感情移入しづらい。もっとも男女平等を訴える映画は他に多く作られているのでこの映画であえてそこを深掘りする必要はないのかもしれない(日本はむしろ男女平等にスポットを当てた映画をもっと作るべきだと思うが・・・)

中盤以降、姉の婚約者一家の陰謀が明らかになるあたりでぐっと面白みが増してくる。ここからのアクション、特に豪奢な花嫁衣装(30キロ以上あるらしい!)をものともしない姉の身のこなしや、パキスタンの伝統的なドレスまとった主人公の立ち回りが観ていて飽きない。

そしてこれだけは言わせて欲しい。お姉さんは画家よりアクション俳優の方が向いていると思う・・・。

Jax