劇場公開日 2024年8月23日

「人生の墓場行きを食い止めろ」ポライト・ソサエティ うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人生の墓場行きを食い止めろ

2024年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

将来の夢に向けて武道に励む少女が、姉の縁談を阻もうと拳を握る青春バイオレンスガールズムービー。
主人公が常に怒っているムスリム系少女、というスタートから面白い。他にも説明なく強いキャラクターがわらわら出て来るので、早々に世界観に入るのがおススメ。

目の前に見えるフツーの女性の人生への不満、自分の将来への不安、姉をとられる寂しさ、社会への不満から来る男性不審、年相応の反抗心、…等々が綯い交ぜになったリアが、姉・リーナの奪還ミッションへと突き進む勢いが凄まじい。リアの年齢は明言されていないが、イギリスの義務教育年齢からすると中学生くらいなのではなかろうか。リアや友人達の行動と発想の荒唐無稽さも頷ける。十代中頃特有の無限の行動力は、姉の意向や良識をも無視させている。

家父長制に反発する題材の作品は数多あり、それらが男対女の構図に走る中で、敵を女性に据えた点が良かった。現実で価値観が対立する場合には上の世代が下の世代を縛り付けることが多々あり、本作の根底にある「女性の人生における結婚・出産・家庭優先」の問題にフィットしていたと思う。

リアの焦りようやラヒーラの言葉からして、彼女達がいる社会では家庭に入ってしまえば夢を追ったり新しいことを学ぶチャンスは無くなってしまうのだろう。日本では男性に向けて「結婚は人生の墓場」と言うが、彼女達もそう感じているのかも知れない。
一方でリーナが自身の才能に限界を感じているのも事実であり、リアから絵の道へ強引に戻そうとされる姿が気の毒にも感じた。リアの年頃なら仕方ないのかもしれないが、自分だけの人生を送りキラキラしていなければならない、という価値観も息苦しいものではないだろうか。

ストーリーにおいてリアの未熟さに由来する荒さ・粗さが目につく部分はあるが、成長途上の有り余る元気を家族のための行動に全振りできる素直さは微笑ましくもあった。コメディベースの青春アクションとして十二分に楽しめた。

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うぐいす