劇場公開日 2024年12月27日

「爆笑の中に古き良き文学界へのアンセムが」私にふさわしいホテル 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0爆笑の中に古き良き文学界へのアンセムが

2024年12月25日
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笑える

楽しい

新人賞を受賞して輝く作家人生に歩み出すはずが、彼女の作品を酷評した大物作家のせいで新作の発刊すらままならないヒロインの、なんとも救われないリベンジマッチ。

大物作家の執筆活動から私生活まで、ことごとく邪魔しにかかる主人公を演じるのんの100%フルスロットル演技と、それを受けたりかわしたりしながら随所で笑いを取っていく大物作家役の滝藤賢一が抜群のケミストリーを醸し出し、時折涙が出るほど笑ってしまう。このノリはいつか観たハリウッドコメディに近いかもしれない。主人公の編集者を演じる田中圭のいかにもサラリーマン編集者っぽい雰囲気や、大物作家の妻に扮する若村麻由美の"間を外さない"コメディリリーフぶりにも感心する。

舞台は今年2月に全面休館となった神田駿河台の山の上ホテル。歴代の有名作家たちが定宿にしていた伝説のホテルで展開する爆笑コメディの隙間から見えてくるのは、今は希薄になった古き良き文学界へのアンセムだ。年の瀬に大笑いしたい人向き。

清藤秀人