悪い夏のレビュー・感想・評価
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映画満足度高し
心を動かされる映画も好きだし泣ける映画も好きだ。だが映画の文法や押さえるべきところを押さえて良く作られたシナリオや熟練の演技、画角や美術や照明も含む映像にカット割りに音楽と、「良くできた映画」がより好きなのだ。本作は「良くできた度」では年度上位に入るだろう。
城定秀夫監督の技にもはや疑いもないが、そこに北村匠海、河合優実、窪田正孝に木南晴夏、ことごとく名のある役者が揃ってみると、日常非日常全てのシーンに見応えが半端ない。蝉の抜け殻が出たら踏まれる、マンホール蓋に汗が落ちたら蒸発する、更に大樹が落雷で倒れたりする、こんなのも楽しい。
不正受給者に対する一番の武器って何だと思う。それは潔癖さ。
北村匠海がとってもいい顔してるんだわ。とっても悪くてクズになり果てたいい顔を。ちょうどNHK朝ドラで好青年を演じ始めるってタイミングで、この役。そのふり幅がなんともいいな。でてくる連中が次から次へとクズ、クズ、クズ。だけどそれを演じる周りの役者陣が達者ぞろいなので、ストーリーに説得力が生まれる。公務員を取り巻く健全な一般社会が、崩れ落ちるようにデストピアへと変わっていく。いや待てよ、そうなる前にその資質(クズという)は奴らにあったな。なら、ただそれが表面化しただけか。口では正論を振りかざしながら。ま、それは自分自身のなかにもある弱さ狡さ卑屈さでもあるんだけど。それを自覚してるからこそ、このクズ連中に奇妙な憐憫の情が湧いてくる。
そして最後。せめてあれくらいはね、許してやりたい。
ちょっと評価は割れると思うが、誤解もしないで欲しい作品。
今年98本目(合計1,640本目/今月(2025年4月度)1本目)。
いわゆる生活保護を扱う課の公務員が色々と闇に落ちていくお話。まぁ、映画内にも描かれているように生活保護制度を悪用する方は確かにいますし、それはそれで事実ではあるものの、「大半の人にとっては」大切な制度ではあるし(特に映画内で出てくる「医師の診断書」は医師が適当に書くと医師が法に触れる(患者側が文書を適当にでっちあげるのは文書偽造))、そこはきちんと分けて欲しかったかな…といったところです。
生活保護は生活保護法で詳細が決まっていますが、基本的には金銭給付です(例外が現物支給)。
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(例示)
第三十一条
生活扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
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特に生活保護の根幹をなす生活扶助について「金銭給付ができない場合」というのは想定できないし(破産寸前の市町村?)、適当でない場合やその他…というのも想定が難しいので現在は全て金銭給付の扱いです(2024年だったか、個人が使いすぎるからと1日ごとに渡していた事例が問題視された。そのようなやり方は規定されていない)。
ほかは…。やはり生活保護が悪く描かされていて、私自身には当然(今はもちろん。60とか70になれば話は違っても)関係はないものの、外国人関係の取り扱いに関心を寄せる行政書士の資格持ちとしては、外国人は生活保護法「そのもの」の適用はなくても「それに準じて」適用が行われる(戦後まもない通達は現在も有効です)現状、このあたり適当に描かれすぎると、やはりそこを扱う人々(大半は行政書士。弁護士ほかでもあり得ます)はうーん、どうだろうといったところです。
ストーリーとしてはまぁよくある話ではあるし、t-joy系列の作品だからこそ問題提起のような映画には「ならないし」(そういう話は大阪ではテアトル梅田で見てねの扱い)、うーんどうだろうといったところです。ただ、不愉快にさせる部分はないのでそこは引けない扱いでしょうね。
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.3/映画の述べる趣旨が複数に取れる)
まぁ原作ありなようなので仕方がない気もしますが、いわゆる不正受給問題を糾す(ただす/不正な行為を追及することをいう)問題提起型の映画ならそうするべきでしょうし、一方でコメディ色もないわけ「でも」ないので、そこをどうとるかでしょうが、ちょっとバランスが悪い映画でもあります。
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エンタメとして消費するには…
生活保護制度を題材に、貧困ビジネスを絡めたサスペンス劇。
同じ原作者の「正体」でも感じたが、社会的な問題をエンタメで描こうとする意図には共感するが、どうも展開が人工的、作為的過ぎる。本作の登場人物の役回りも記号的、図式的で、リアリティは感じられない。
最近も桐生市での対応が明らかになったように、生活保護制度をめぐる諸問題は実際にシリアスで根深いので、エンタメとして消費するには難しいところだろう。
役者陣は魅力的で「サマーフィルムにのって」「愛なのに」を思い起こす。女子高生然としていた河合優実が、ほんの数年でこれだけ成長したかと感慨深い。主役の北村匠海は、もっと凡庸なままでいてくれたら面白かった。
城定秀夫監督は、持ち味の粘り気のある演出があまり見られなかったが、クライマックスでのカオスの悲喜劇は、彼らしいところ。
北村匠海の演技
生活保護制度の難しさ
どん底の二人、幸せになれるんじゃねえ?
見ていてつらい
いい感じだったけど最後がドリフ。
エンタメとしての完成度は高いが、、、
「ビリーバーズ」の城定秀夫監督、「ある男」の向井康介が脚本、更にシングルマザーを演じる河合優実をファンとして観たく、封切上映で鑑賞。
貧困ビジネスをベースに、市役所の生活福祉課に勤める真面目で気弱な公務員が、破滅へと転落していく姿を描いたサスペンスドラマ。
リズムよく、ストーリーに引き込んでいくあたりは、監督、脚本ともに秀逸。キャスティングもよく、北村匠海は主人公が闇に堕ちていくさまをとても上手く演じている。河合優実の演技は相変わらず素晴らしく、彼女らしい魅力が全開。脇を固める俳優陣も素晴らしかった。
エンタメとしてはとても面白く、上手にまとまった作品だが、その分破綻と余韻という点では若干不完全燃焼。映画館ではなく配信でもよかった感あり。
配役ピッタリ
運が悪いではすまないとばっちり
最近見た中で一番いい
クズとワルと無垢
大嵐の中でのバッタバタ、おもろっ!
テーマ的にはこんなに楽しんじゃいけないのかもしれないけど、台風接近からの全員集合で全部を終わらせに行く感じが実に痛快!
こういう派手なバトルロワイヤルでの幕引きにぴったりなシチュエーションはやっぱり大嵐ですね。容赦ない雨風はまるでゲリラ豪雨を待って撮影したかのようで迫力も申し分なし。カタルシス感じました!
オールキャスト揃ってからの大立ち回りでは、「アノーラ」でマイキー・マディソンが大暴れするシーンくらい笑ってしまった。
演者は皆さん、本当に全キャストがとても良かった。積極的に観に行く理由となった河合優実さんをはじめとして、皆さん得意分野!って感じの役を生き生き演じてた。なぜか今年3本目となった竹原ピストルさんもこの映画の演技が一番好き。
これは河合優実を観るための作品である
染井為人の原作に基づく犯罪サスペンスであり、生活保護の不正受給という社会問題(もしくはセーフティネットたる生活保護の仕組み自体の課題)をテーマにした社会派映画でもある。
クライマックスの暴力シーンも含めて筋運びが実にしっかりしており、男優3名(北村匠海、窪田正孝、竹原ピストル)の熱演もあって見応えがある作品となっている。
でも、でも、私はこれは河合優実の映画であると言い切ってしまう。つまり不幸のオーラを発している彼女のむくれ顔を観るためのいわば三部作(「あんのこと」「ナミビアの砂漠」そして本作)の最終章であると。この作品群のあいだじゅうを通して、彼女は肉体面、経済面、精神面のすべてから搾取される者を表現した。搾取しようとする相手は、男どもであったり、社会であったり、制度であったりするわけだが、一方で彼女は搾取する側に加担する者でもあり続けた。この作品がその構造を見事に表している。シングルマザーの彼女は不正受給に手を染めることによって、真にそれを必要とする人達からリソースを搾取しようとしたのである。そこは木南晴夏の演じる生活保護申請者のエピソードが補助線として引かれておりとても明確である。ちなみに申請窓口にきた古川母子に対して佐々木が浴びせる罵倒は、ネットにおいて生活保護受給者や受給希望者たちに浴びせられる罵詈雑言とほとんど同じ内容であることを付け加える。
話はそれたが河合優実は、搾取される女性の姿を演じつつ「自分が自分でよくわからないから」といったあいまいな姿勢を取ることによって結果として搾取する側に加担してしまう女性の姿を無意識に演じている。
そこが、この極めて現代的な女優の立ち位置ということになるのだろうが、はっきり言って、むくれ顔にも見飽きてきた。そろそろ違った表現も見せてほしいと思う。多分、彼女がまだやっていないのは女性同士の連携といった領域だと思う。孤独を演じるのは得意だけどひょっとしたら連携を演ずるのは不得手なのかもしれないけど。
おまけ。本作では河合のむくれ顔と北村の三白眼と顔芸が見事に呼応して、女も大変だけど男も大変であるなあとしみじみ思わせた。そこが面白かった。
とても面白い
知人で生活保護を不正に受給していた人がおり、テーマが生々しい。自分がとやかく言える立場にもないのだけど、そんな暮らしをしながら海外旅行をたびたびしており、腹がたつ。制度の不正利用は自分が収めた税金をむしられているようだ。いったもん勝ちみたいな風潮だ。一方で明らかに児童相談所に行くべき母子がおり、マッチングが機能していない。主人公は彼女が相談に来たらまず児相に連絡すべきだ。とりあえず子どもは守られるし、母親も負担が減る。
台風の夜のクライマックスがカオスだ。先輩の女が「私たちは公正であることが何より大事だ」みたいに言って感動していたら、実はそれより男が大事でずっこける。あの状況で誰も死ななくてリアルだ。竹原ピストルさんがどう考えても一番強いのに、全く強さを発揮しない。小悪党で面白い。
心温まるホームドラマに感動(途中までは)
現実の生活保護不正受給率は0.4%程度。
でも、この映画を観ていると不正受給する人だらけで、ますます生活保護への差別が進みそう。
ただ一方で、本当に生活保護を必要としている人をまあまあの時間をかけて描いていたのは、フェアな作りに感じた。
終盤、生活保護を申請しにきた女性に対し、市役所の担当者が罵声を浴びせる場面。
このとき担当者の言ってくることが、生活保護に関するニュースが報じられたときの、ヤフコメでよく目にするような意見と酷似。
群馬県桐生市で生活保護支給者への恫喝がニュースになったことがあったが、この場面みたいな感じだったのかと思うと、居た堪れない気持ちになった。
生活保護に関しては、まず本当に必要な人に届くことを最優先に考え、その後に不正かどうかを調べればよいだけだと思うのだが…
0.3%を0%に近づけることを最優先に考えてしまっている人たちにとっては、この映画のこの女性の顛末を観ても「まあしょうがないよね」って感じなのかな?
この映画で個人的に心に残った場面は、中盤の北村匠海演じる生活福祉課の職員・佐々木と河合優実演じるシングルマザー・林野のホームドラマパート。
生活に困窮する林野は育児放棄気味。
その様子を見かねた心優しき佐々木が、「子供に罪はない」と言わんばかりに、林野の娘に献身的に接するようになり、仕事と関係ない日にも娘に会いにいくようになる。
表情の暗かった娘は徐々に佐々木に心を開くようになり、明るさを取り戻していく。
今まで見たことのない娘の喜ぶ姿を見て、荒んだ生活を送っていた林野にも、少しずつ変化が現れ始める。
前半で世の中の腐りっぷりを散々見せられた後なだけに、この「世の中捨てたもんじゃない」な展開に、かなり感極まってしまった。
個人的には「このまま三人は幸せに暮らしました」なエンドでも満足なぐらい、この場面が気に入ってしまった。
「三人にこれ以上不幸なことが起きませんように!」と願わずにはいられなかった。
そんなに城定秀夫監督は甘くないわけではあるが…
この映画に出てくる悪人には2種類あると思った。
「根っからの悪人」と「悪人になる人」。
「根っからの悪人」はともかく、生活苦から悪事に手を染めてしまう人の場合、自分は甘々人間なので、そういう人に対しては同情の気持ちが強くなってしまう。
生活に余裕のある人が増えた方が犯罪は減ると思うのだが、現実社会では格差はどんどん広がり、物価もガンガン上昇し、むしろ逆行しているように感じる。
社会の中ではそれを歓迎している人が多いように感じるが、個人的にはどうかと思っている。
そういう意味でも生活保護って大事だと思った。
林野が元々働いていた風俗店の場面が、今年公開の『ANOLA アノーラ』に出てくるストリップ劇場の日本版に感じた。
『ANOLA アノーラ』と比べ、オシャレさを減らして、生々しさをアップした感じ。
この中にいる人間の中で一番金銭的に裕福なのが誰かを考えたとき、社会構造の理不尽さに気分が悪くなった。
終盤は今泉力哉監督の映画みたいと思った。
役者たちの熱演はものすごい迫力だったが、ドタバタコメディの印象が強く、社会派な感じは減少してしまった気がした。
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