「本当の恋」悪い夏 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の恋
2025年。城定秀夫監督。生活保護を担当する公務員の男は、先輩が対象者の若い女性を脅して性的な関係を迫っている噂を聞きつけて、上司と共に調べ始める。先輩に非を認めさせて辞職させた後、その対象者の幼い子供の相手をしているうちに関係を持つようになるが、実はその背後には生活保護をめぐる陰謀が張り巡らされていて、という話。
いいように扱われてしまう若くて貧しい女性と、いいように食い物にしようとする悪い奴ら、そして人生に何も期待していない公務員、という登場人物では本当の恋など起きようがないはずなのに、本当の恋が始まってしまうというのがミソ。逆にいえば、罠にはめられて土壇場に追い込まれなければ、恋など生まれないし、たとえ生まれたとして気づくことなどないのだ。自然に生きて小さな欲望で満足している限り、恋とは無縁の人生を生きるだけなのだ。この映画はそのような深遠な真実が刻印されているので、最後の最後に現れるその姿を目に焼き付けなければならない。それは男の優しさについ企みを忘れてつぶやく「どこにも行かないでね」という消え入るような声だったり、自暴自棄となって心中を図る男に対して「いいよ死のう」と平然と答える声だったり、とてもかなわない相手に嵐の中で突っ込んでいって、包丁で足を刺される姿だったりするだろう。見逃すな。
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