「ラブストーリーの変化球」悪い夏 HKさんの映画レビュー(感想・評価)
ラブストーリーの変化球
予告編から、真面目な公務員が悪人に騙されて七転八倒するブラックコメディ
を予想していましたが、意外にそこがメインではないように感じました。
古川(木南晴夏さん)の悲劇的な困窮家族の描写だったり、
愛美(河合優実さん)の自分自身の心に迷い、戸惑いを抱えていながら
子供を愛している複雑な心情の迫真の表現、
佐々木(北村匠海さん)の真面目に生きても報われない社会への怒りの独白とか、
その深刻な追い詰められた心情を切り取った多くの顔面のクローズアップ画面、
立場から不適切と理性では思っているのに、
徐々に気持ちが惹かれていく経過の緊張感のある丁寧な表現など、
闇落ちしていく人間の情けなさがほとんど描かれない(毎熊さん以外)ので、
多様な(親子の愛も含めた)ラブストーリーの変化球という方が
しっくりくるなと思いました。
グラデーション豊かなクズ、悪人たちは、
弱者を脅して小金を巻き上げるようなせこい悪巧みを実行しますが、
最後のコント的なドタバタなど、振る舞いも憎憎しさを感じることが少なく、
純愛を邪魔する喜劇的な存在にみえました。
サスペンス的な要素よりも、
様々な感情の混線具合が面白いドラマの映画だと思います。
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