ひゃくえむ。のレビュー・感想・評価
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100m走者たちの「走る意味」を緊迫感ある戦いと共に描いた熱い作品
周りとは一線を画した足の速さのトガシ。トガシの小学校に人とコニュニケーションがうまく取れない小宮が転校してくる。小宮は速さを求めず、一人で近所を走り続けている。
そんな小宮のことが気になったトガシは自分なりの速く走ることの哲学を伝え、小宮が速く走るための練習につきそう。しかしある日、突然小宮は何も告げずに転校してしまう。
その後、トガシは中学で陸上競技の選手になるがスランプを経験し…。
原作未読。アニメ「チ。」のファンです。
小学生の時はどこか達観したような冷めたようなトガった印象だったトガシが高校では人間味がある人物に変化していた。…それは中学の時に挫折を味わったからなのかもしれない。
その後、社会人となり、一気に人当たりの良いトガシがそこにはいた。しかしアスリートとしてはかつてのような輝きは失われていた。
普通に考えるとみんな強いヒーローが好きだと思う。私自身、速いトガシが好き。紆余曲折してもトップを取って欲しい。なんだかんだトガシはいつも優しいし、この映画の主人公だし、たぶん観ている人はみんなトガシを応援しているはず。
しかし、ストーリーは容赦なくトガシに壁や挫折を用意する。情けないトガシの姿は決してかっこよくなく、残酷なほどただただ惨め。
この映画の登場人物たちは皆人生で一度はトップを味わっているアスリート。しかし輝きいっぱいで描かれることは全くない。みんないつも哲学的な問いや悩みを持って描かれている。
なのでスポーツものだけどちょっと他のアニメとは違う。先が全く予想できない。
印象的だったのは日本記録保持者の財津が高校の講演会で放つ言葉たち。トップ選手のキラキラ感は一切なく、ものすごくシンプルな言葉で生徒たちの質問を哲学的にぶった斬っていく。その様が痛快すぎて一人で笑ってしまった。
しかし、その財津の言葉により高校で陸上競技をしていた小宮は抱えていた悩みを乗り越えることができ、大きく飛躍していく。
その後登場するベテラン選手の海棠の言葉もまた哲学的だけど、私の背中をたくさん押してくれる。津田さん渋すぎる..かっこいいです。
頑張ってもなかなか報われなくて諦めかけている人がいたら、海棠の言葉は必ず背中を押してくれると思う。
そしてラスト…トガシと小宮のレースが始まる。
もう痺れる終わり方でかっこ良すぎました。泣きました。
全編通してレースの時にロックが流れるのですが、それが渋くて本当にかっこいい。キラキラはないですよ(笑)アニメの「チ。」のファンですが、作者の魚豊さんは本当に天才ですね。
とにかく走り、走り続けるだけ。
公開から一ヶ月半ほど経った今更ですが鑑賞しました。
動員も公開から一ヶ月半経ったとは思えないほど客入りが良かったです。
内容としてはとにかく最高でした。
ただ走る。内容としては登場人物が走ることを突き詰める物語で、泥臭くもそれ以上にひたすらさわやかな映画でした。
無駄な恋愛要素などもなく、走ることだけに命を懸けて、わずか100メートルの間に得られる爽快感を求めて走り続けるというのかすごく良かった。
自分自身、別分野で同じような気持ちを味わうために
ただそれだけのためにやっていることがあるので
とても共感したし、トガシのどうしようもない才能にぶつかって挫折する様も自分を見ているようで少し苦しかったです。でもそれ以上に見て良かった、面白かったと思える作品でした。
国宝を見た時にも思ったのですが、
もっともっと真剣に向き合いたいと感じました。
〜芸の国宝、武(スポーツ)のひゃくえむ〜
今年の映画の中での個人的な大袈裟な例えである。
昨年の今頃に放映されていた「チ。地球の運動について」が大変面白くて、その作者の魚豊さんの作品とのことで是非観たいと思い鑑賞した。
100メートル走競技に情熱を注ぐ人達の心境、競技者の心理を違った観点・視点から抉り出した作品。物語が少年期、青年期、現在の3期に渡り展開されるが、淀みなく各期情報不足や不自然な描写なく繋がれていて引き込まれやすかった。途中、決勝直前の大雨の描写で線がメインの荒いタッチに映像がなされたりして、その緊張感が違った味わいで伝わってきた。専門用語分からないので拙い表現になってしまうが、綺麗な映像だけがアニメの全てではないことを教えてくれた。
そう、物事を究めようとすると、人は“狂”の境地、狂地にたどり着かなくなてはならない。そこは、常人の常識や思考が入り込めない、下手したら、普通の人はそれによって傷つけられることもある、竜の巣のような領域である。
今年公開された「国宝」にも似た匂いを個人的には感じる。それで、芸の国宝、武のひゃくえむ。、ということだ。2025年の映画界に誇る傑作の1つではないだろうか。観ていて楽しかった。そして、走りたくなった。
ヒトは走る生き物
赤色をバックに最速で走る様に横切るOPクレジットを観た瞬間、この作品は勝ち確!と拳を握る。
少年は生徒達を置いてひときわ早く走り、ゴールの前でピタッと止まる。誰も追いつかない壁の前で。
周りはもてはやすが本人は気乗りしない。
本能で早く走ることを知っている、走れてしまうトガシ。
自分の居場所はあるがそれは誰にも理解できない孤立する存在。
その横を明らかにボロボロのゼィゼィで走り倒れる少年。
彼は転校生のコミヤ。コミュ症だ。
体育の時間にビュンと目の前で風を切って走るトガシを見て「すごい…」と呟く。
嫌な事を忘れたいから嫌いな走りをがむしゃらにするコミヤ、彼にトガシは「走り方」を教える。初めて自分の走り方を教え、受け入れられ、共に走れる事に喜びを覚える。
運動会でコミヤはたったひとつの百均の金メダルを欲しがり努力で勝ち取る。ちっぽけな意味。
コミヤは競走をしようとお願いする。いつもの練習場所の河川敷、合図は通過音。ガタンゴトン…心音の様に鳴る音…張り詰める緊張感、ダンッ!速いのはトガシだが、だんだんと追いかける黒い影…作画崩壊を起こしたようなコミヤの顔がスクリーンから飛び出す!そして一瞬追い抜きパタリと倒れる。
じゃあ…と言い足を引き摺りながらコミヤは去り転校しそのまま。初めての敗北。
トガシはスランプの後、陸上を辞めるも急かされて制服で走り出す。風を切る音、流れる先輩の髪、走れる…「すごい…」アサクサが呟く。
走ることへの向き合い始めがリレーというのも良かった。孤立せず、仲間と励み、力を合わせる。1人ではない。
しかし、コミヤはまだ自分が「人より速く走れる」と思っていた。学校でも名も知れて、部の中でも1番速い。
小学生の頃に鼻をへし折ったニカミよりも速かった。
しかし、世界は広い。
全国大会で再会するコミヤ。
彼は努力して努力してイップスを克服しメンタルも整えライバルとして現れる。
雨の降る中、周りにも降っていると錯覚する様な雨垂れに合わせて上下する画面をぐるりと周り映し出される8人の選手。1人ずつ名を呼ばれ挨拶をする様子をしっかりと映す、観客は選手達は見えてもいない様な描写。この一連のシーンは本当に素晴らしく見逃してはならないものを観ていると感じる。足をかけ、ゆっくりと頭を下げる。セット!あとは前だけ!前だけを見て雨の中、風を切って走る。ふ…と横を駆けるコミヤ。トガシの髪に大粒の雫が流れる。立ち尽くすトガシ。雨はいっそう強くなり彼の姿を白く塗りつぶしていく。
彼は再び敗北したのだ。
社会人実業団に話は進み、ギリギリの成績を収め続けるトガシ。社会人実業団では主にトガシ、コミヤ、カイドウ、ザイツの4人がライバルとして走る意味や信念の独白があり、それは成長と共に形を変えて勝敗やお互いに作用されながらも100mの世界へどのように取り組まれているのかをじっくりと話される。
しかし、それぞれの言葉の情報力が多すぎて一言咀嚼しようとしたら、あっという間に置いてかれてしまい、すごくいいこと言ってたのに分からなかった!!という自分の頭の残念さを自覚してしまう名台詞がたくさんだった。これは哲学です。
カイドウの「現実を認めないと逃げられないから目を開いて現実を見ろ」
ザイツの引退時の「極上の10秒を味わえ」など痺れるワードが爆発してたので再度視聴するかな。
作品全体を観てとにかく背景が綺麗でひときわ青空が水彩で塗られた様な爽やかさで街全体も輝かしく描写されている。
反してキャラクターは線がしっかり太く、どっしりと描かれてていて会話シーンなどはどこか不気味さも感じる。自分が追い抜かされた、負けた瞬間、ぐにゃりと世界が曲がっていく。非常にわかりやすく見せつけてくる気満々でやってくる。そして立ち直った際に瞳をキリリと持ちあげるのだ。
動き方も非常にリアルでクレジットを観てこんなに沢山のモデルがいたのか〜とびっくり。
彼らの背景はほとんど明かされず、ただ走ることだけに重点をおいている。削りに削りった作りなのでどのキャラクターにも感情移入しづらいことが逆に走りに人生をかける彼ら全員を応援できる。
世界大会決勝戦の日、肉離れを起こし選手生命が危ないトガシはゆっくりと起き、歩き、列車に乗り会場へ着く。
再び対峙するトガシとコミヤ。
「この世界にはすごく簡単なルールがあるんだ。たいていのことは、100mを誰よりも速く走れば全て解決する」
ただ前を見て走る10秒。2人のその目の先には子供の頃に走った河川敷。コミヤの靴にはガムテープがぐるぐる。
EDの髭団の「らしさ」も良くキャッチーなフレーズを繰り返すので視聴後は、ら〜しさ♪と口ずさみながら100mを目視しつつ帰る方が多いのかもなぁと思いながら自分もそうして帰った。
自分を甘やかすことなく励み、貪欲に勝利を求め勝利の為に考え、時々立ち止まり走る意味を考え、孤独を感じそして己を信じまた走りはじめる。10秒を走ることに人生を捧げ続けるどこまでもストイックな男たちの作品。
子供の頃は足が速い子がモテる時代だったのだ。
有酸素運動でダイエットもできるのだ。
ただ走る。それだけでこんなにも。
漫画を1巻だけ履修した上で視聴。
結論から言うとかなり面白かった!
ただ100mを走るだけ。それだけの行為のはずなのにそこに関わる人達の悲喜交々、作中でも語られていたけど人生がそこにはある。
見ていて熱くなるし、怖くなるし、圧倒される。
とにかく話の構成がいい。
漫画の1巻だけのみ見ていたけどたったそれだけでも分かるほど漫画の中身を見事に分解、再構築していた。個人的には1巻にあった小宮の走りに対する評価のシーンがとても気に入ってたからあそこが見れただけでも見に行った甲斐がある。
表現面もかなり凄い。
まず映像。CGも使っていたみたいだけど違和感がなくアニメの絵のままぬるぬる動いてるのが凄いし、走っているシーンなんて様々な角度と時間感覚で表現されてて迫力が凄まじいの一言に尽きる。これは是非映画で見るべき。
そして音楽も凄くいい……!走る直前に流れるロックっぽいインストは最高に盛り上げてくれると同時に迫力も満点。見たあとCDがほしくなった。
総じて今年のアニメ映画の中でもかなりの上位にある作品だったと思う。
できれば原作全部見た上で見た方がいいかもしれない。
最後涙目になったよ
ひゃくえむであろうとなかろうと、自分の未知の姿を思い描いて、のるかそるかの"ガチ"の勝負をしている姿の美しさが心に響いて離れない。
主人公の目から見た競技場の景色、自らの心臓の鼓動、髪を伝う雫、隣の競技者の息遣いがまるで静止画の様な、また時間が遅く流れているかの様な表現で迫ってくる。
己の概念と世界の概念のぶつかり合いは己の概念で捩じ伏せられなければ終われないし終わらない。
そんなギリギリで生きてる、みんなの代表であるトガシとコミヤとライバルたちの刹那を描いた映画。
たった10秒のために人生を捧げる男たちのドラマ
ピカソの逸話にこんなものがあります。
ピカソの人気絶頂だった30歳の頃、とあるマーケットでピカソは見知らぬ女性から「この紙に私の絵を描いてください」と依頼された。ピカソは30秒程度で簡単なスケッチを仕上げた後に「この絵は100万ドルです」と言った。女性は驚き、「たった30秒程度で描いた絵なのに?」と問うと、ピカソは「いいえ、私はこの絵を描くのに30年と30秒掛けています」と返答した。
この映画はまさにそんな映画でした。100m走は時間にして僅か10秒。そのたった10秒のために、これまでの人生、そしてその後の人生までも賭けようとする。自分の人生の全てを、その10秒のために注ぎ込む。そこまで熱中できるものを見つけることができた彼らを羨ましいと思うと同時に、彼らのような生き方をしてみたいかと問われればNOと答えるだろうと思う。
普通のスポコン漫画とは一線を画した、魚豊先生にしか描けない哲学的なスポーツ作品を完璧に映像化できていたと思います。
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生まれつき足が速く、その才能から友人や居場所に困ることは無かった富樫(松坂桃李/種﨑敦美)は、小学校のクラスの中心人物だった。ある日、ひょんなことから転校生の小宮(染谷将太/田中有紀)に走り方を指導するようになるのだが、つらい現実から逃避するためにがむしゃらに走り続けていた小宮は、富樫の指導もあってみるみるうちに成長していく。親の仕事の都合で小宮が転校してから会えなくなった二人だったが、高校進学後、トップアスリートとして全国大会で再開を果たすこととなる。
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100m走をアニメ化する。これ、下手にアニメ化したらどのレースも同じような映像で退屈になってしまう気がします。サッカーや野球みたいに試合の中で劇的な展開があるわけでもなく、言い方は悪いですがただ走るだけのスポーツです。しかしこのアニメ、そのただ走るだけの映像が身体の芯まで熱くなるくらい盛り上がるし面白いんです。これは本当にすごいことです。
個人的に痺れたレースが2つあります。
一つは、高校生になった富樫と小宮が再会して決勝戦でぶつかる高校全国大会のシーン。盛り上がるBGMが絶妙なタイミングで差し込まれ、レースが始まる前の準備のシーンから長回しでじっくりじっくり丁寧に見せてくれる。レースが始まるまでが結構長いのに、レース自体は本当にあっさり終わってしまう。これが100m走という刹那的な競技の魅力を端的に表現していて素晴らしかった。
そしてもう一つが、ダークホース小宮が財津の大会記録タイで優勝した北九州大会。まさかの「走っている選手の姿を一切映さない」という演出。澄み渡る青空と、選手たちがスタートしてから10秒後に鳴り響く地鳴りのような歓声。歓声の大きさからとんでもない記録が出たということが察せられる素晴らしい演出だったと思います。
現役陸上選手の方が本作の感想として「具体的なタイムを明示していないのが良かった」とおっしゃっていました。私には無い視点です。私の記憶では100m走のタイムが明示されたのは半年引き籠ってた仁神が久々に100mを走って出た「12秒」というタイムだけだったと思います。陸上に詳しい人なら、具体的なタイムを示されると現実の陸上選手と比較してしまいます。それはアニメの没入感を阻害し、現実に引き戻される行為です。本来100m走とタイムは切り離せない存在のはずなのに、映画を没入して楽しむためにはタイムはノイズになってしまうんです。その感想を聴いた時、私には無い発想だったので「なるほど」と膝を打ちました。こういう自分に無かった着眼点を知れるのが、他の人のレビューを見る一番の楽しみですね。
とても面白く、色んな人と語り合いたくなる素晴らしい映画でした。オススメです!!!!
静かで、熱い。
100mに取り憑かれた男達の話。
何故走るのか?という問いに対する答えは、人それぞれ。
このシンプルで根源的な問いに対する答えがそれぞれシンプルで、深い。
天賦の才があっても、目標を見失うと、速く走れなくなる。
偉大な親の血を受け継ぎ、英才教育を受けても、世間が作り上げたイメージと自己との葛藤で、速く走れなくなる。
努力を積み重ねても、小学校での怪我の記憶が邪魔して、速く走れなくなる。
そんな挫折と葛藤を乗り越えて、登場人物達は、走る。
「現実を受け入れた上で、逃避する」という海棠の言葉が心に残った。矛盾するような不思議な言葉だが、「現実逃避」するのではなくて、「自分の追い求める理想とのギャップ」を冷静に測りつつ、その「ギャップを埋められると信じる」という意味だろう。
そして、彼らはトラックの上で、「今」、「この10秒」に集中していた。
100m走という1つの陸上競技にフォーカスした物語だが、そこには人生を考えさせられる奥深さがあった。今まで観たことがない、スポーツアニメ。
ロトスコープという手法で作られた映像の場面は、立ち姿でも微妙な身体の揺れがあるなど、人間らしい自然な動きが違和感なく表現されていて、新鮮だった。
キャスティングもよく、俳優と本職の声優ともに映像とマッチしていた。
ラストの2人の笑顔は、走る喜びが身体の底から湧き上がってきたかのように思えた。
アニメの新しい映像表現と心理描写
視聴直後に原作漫画購入!
これまでのアニメの表現とはベクトルの違う新しさを魅せてくれた点は「ルックバック」に近いものがある(表現方法が似ているという意味ではない)。
実際の人間の動きを撮影してアニメに描き起こすロトスコープという手法は、大昔のディズニーアニメ映画でもやっている古典的手法だが、単純にトレースしているわけではない。
そこには原作とは違うキャラクターの深堀り方が加筆されている。セリフ、モノローグではなく、動き、描線、そういう「アニメ」でしか表現できない方法で内面を表現している。
小宮のキャラクターは原作漫画とは大きく違うが、限りある上映時間の中でキャラを明確に立たせる手法として、素晴らしい脚本だと思う。
原作の改変ありだが、、
原作既読。
小学生編で小宮を鼓舞するシーンで小宮をバカにしてヤジってた隣の同級生をぶん殴って叫ぶのが削られてたり、初めて熱くなったガチ勝負でトガシは自分で作り出した小宮くんの亡霊に悩まされるとこや、やはり高校生編でラグビー部とのいざこざ一連がなくなってたのは悲しい。あと小宮くんの高校生編の部活でポツンと孤立してしまうエピソードも。嫌がらせで靴をズタズタにされる→小学生時代のガムテープで直す!とこもカットか…、まぁ言い出したらキリがないんですが、それらの不満点を差し引いても劇場版として☆5だと思います。
あと松坂桃李は上手すぎました。違和感なしです。
ぜったい観て欲しい!
原作は未読の状態で中学生の子どもと観ました。登場人物のそれぞれの立場や信念も考えさせられるものがあったし、競技場での映像は実写のような迫力がありました。選手の足音や息遣いの臨場感も凄いです。最後の2人の清々しい表情と、主題歌の歌詞に涙が出ました。高校生の子どもも友達と観に行って、感動した!と言っていました。すぐに原作を購入して、また違うエピソードもあり素晴らしかったです。鬼滅やチェーンソーマンと重なってしまい、埋もれてしまうにはあまりにも勿体ないです。大人になればなるほど刺さる作品だと思います。映画館でもう一度観たいと思います。
財津押し
「不安は対処すべきではない。人生は常に失う可能性に満ちている。そこに命の醍醐味がある。恐怖は不快ではない。安全は愉快ではない。不安とは君自身が君を試す時の感情だ。栄光を前に対価を差し出さなきゃならない時、ちっぽけな細胞の寄せ集め1人。人生なんてくれてやれ。」
なんとなく恐怖=不快、安全=愉快のように本来ひとつひとつ別の思いを大雑把にまとめてしまっていることに気付く。
逆接的だが、人生はもっともっと複雑に輝く。一人じゃないって思える名言。
哲学を語る映画
100mを通して哲学を語る物語。登場人物が、皆、人生を達観している。別ジャンルの漫画だが湾岸ミッドナイトとも共通するものがある。小学校から選手としての晩年までを一気に描いているので、映画の尺では詰め込みすぎな印象はあるが、見てよかったと思える佳作。
映画と漫画で1つの作品
私は原作から入ったひゃくえむ。ファンです。
やはり競走シーンは迫力満点で見応えがありました。BGMやロトスコープならではの生き生きとした表現が素晴らしかったです。5000点満点でした。しかし、原作勢からすると、幼少期のトガシに負ける事への恐怖の感情描写や、仁神とトガシの競走シーンなど、心理描写が足りてない所があり、そこは物凄く惜しいと思いました。特にトガシ、仁神が入部してくるシーンなど、映画版では非常にあっさりとしていたので、原作を読んでいない初見の気持ちで見ていると訳が分からなくなりました。なので全体的に原作と比べると浅い作品だと思います。さらに、いじめの描写が無くなったところもかなり大きいと思います。特に小宮は。
色々な意見はありますが、映画→漫画→映画の順で見ていくと作品の深みが増していくのではないでしょうか。まさに、映画と漫画の両方を見て、ひゃくえむ。という作品を理解できるようになると考えています。
熱いものがずしりずしりと来る。
息子に勧められた映画予告で何か刺さり、映画館へ。
100M走、子供の時から圧倒的に速い子、そして始めは遅い友達。となれば展開は読めそうなものの、それでも何か昔のスポコンとは違う何かを期待して、そして良い意味で好きなスポコンでありながら、展開は昔のそれとは違ってて、そしてそれだけじゃない何かをたくさん与えてくれたように感じる。
キャラクターそれぞれに大切なものがあるっていうの好きです。
そしてそれぞれのキャラクターがくれる大切なメッセージの一つ一つが心に刺さる。
展開もいい感じに予想を外してくれる。そこでその人かーみたいな。
あ、あー嫌な予感、、、これは当たるんかーい(涙 な展開も。
出てくる登場人物かっこいいなぁ。
原作ではもっと丁寧に時間をかけて展開しているのかなと思いますけど、映画だけでも楽しめました。そして帰りに古本屋で原作買おうと思ったけど売り切れてました。
心を熱くしてくれる映画。
スポーツ熱も上がりましたけど、それだけじゃない人生観にも当てはまるストーリーでした。
なんか社会人になった若い女性とかでも意外と刺さるメッセージかもだし、年齢を経た人たちにもチャレンジする意欲だったり前向きになれるような、なんというか人生に対して奮い立たせてくれるような。
原作も見たいけど、映画も何度か見て噛みしめて製作者さんのメッセージをしっかり受け止めたいです。
いやー、燃えたけど、今でもまだじわじわキテる。
また見たいです。
そして試合出たい(怪我療養中なので)。
あ、それと終わり方もおしゃれでした。
ピンポンみたいな終わり方も好きなのですけど、この映画はあれも合ってるように思います。
あ、それに歌もよかったです。
歌詞サイコーです。
心を高鳴られる100m
たったと言えばそれまでだが、誰しも時間を気にしなければ走れる100mという距離に掛ける思いと情熱。
その一瞬の世界が無限の可能性と力を持ち、それに魅了され生きる男たちのドラマ。
その刹那の空気の中、スターターの音が血を湧き上がらせ、呼吸が高鳴らせ両脚に流れていく。
この感覚はとても心地よく。
またあの高鳴りを感じたくなった。
走ることにすべてを注ぎ込む物語
100m走選手たちの物語を描いた映画
原作未読です
小学生のころに足が速かったトガシと
走ることでつらい現実を忘れようとする小宮が
親友となるが小宮は転校をしてしまう
トガシが中学生で陸上からスランプになり陸上から距離をとっていく
高校生でもう一度陸上を始めるが
そこでトップクラスの実力を持った小宮と再会し敗れてしまう
そして、10年後になり
トガシは選手として結果が出せないまま
小宮と差をつけられてしまう
先輩選手のアドバイスでなんとか調子を取りもどすが
試合直前に肉離れになり、無理をすると走れなくなる状態だったが
最後のレースで小宮との対決に臨む
陸上の内容を描いた作品だが
陸上選手は若い時からいろいろプレッシャーがあり
ケガなどで才能があっても陸上選手を続けられなくなったり
理不尽な部分もドライに描かれる
本作では脇役で出てくる選手たちも
個人的にかなり魅力的に見えた
小宮が高校生のときに自分の肉体を酷使する選手だったのに対して
社会人ではかなり合理的な選手になっている感じがして
その変化の理由がわからなかった
ロトスコープの作画で好き嫌いがあったり
最後の勝負はどちらが勝ったかわからないまま終わるので
ちょっと好き嫌いが分かれそうな内容だったが
個人的にはよかった
あいたたたた
登場人物の発する言葉が全てポエムなのがとても痛々しい 作中まともに喋っていたのは陸上部員の女の子だけ。
『ひゃくえむ』に限らず、「所作」とか「行動」「経歴・経験」の部分で登場人物のディティールを描いて、視聴者に想起させるという手間を省く作品が多すぎる。
富樫が一度陸上から離れた理由、
財津や小宮がああなった理由、
海堂が急に勝った理由、
財津が失速した理由、
伏線や動線が欠如していて分からない。
セリフのポエムっぽさが作品全体に悪影響を及ぼしている。本来は場面に応じてセリフがあるはずなのに、むしろセリフが場面を左右しているような違和感がある。
説明を全部文字とか言葉に頼るなら映像作品、ましてやアニメーションじゃなくていいじゃん。己の価値観・世界観・ロマンを広める上で、楽になろうとする作り手の意識が垣間見えてしまう。
褒められるところは、競争シーン。人が走るシーンの作画はどうしても某ウマ娘みたいに残念になりがちだが、流石に力が入っていて集中して見れた。あと浅草ちゃんが可愛い。よって★★にします。
トップアスリートの珠玉の哲学
小学生トガシが「100メートルを誰よりも早く走れば全部解決する。」という。
トガシ(彼だけ、カタカナ)が最初に放つ哲学的言説。
そして、さまざまな紆余曲折を経て、再びこのセリフに回帰する。
登場人物の放つ哲学を全部、記録しておきたい。
原作をそろえれば全部、載っているのかしら。
しかし、最も素晴らしいシーンは雨の全国大会での小宮のセリフ。
「トガシさん、走り変わりましたね。」
言うまでもなく、変わったのは技術的なことではなく、トガシの生きざま。
それを指摘されて、トガシがショックを受けるシーン。
雨ですべてが覆われる。
アニメーションでなければできない表現なのだろう。
「栄光の前に対価を差し出すとき、ちっぽけな細胞の寄せ集めの人生なんてくれてやればいい。」(財津)
「現実から逃避せよ。」→「現実を見ずに逃避するか、苦しい現実をみてそれを乗り越えるか?」(海裳)
「トガシくん、走り変わったね」(小宮)
「明日を生きるために今日死んでました。」
トップアスリートたちは私たちの現実においても、哲学を語る。
大谷翔平、羽生結弦、藤井聡太
ぎりぎりの世界で生きる若武者たちの言葉は美しく深い。
先日観た「宝島」は膨大な事実と時間と心情にあふれ、それらの総体が消化しきれないこと、そこに価値を見いだすべき映画であった。
それに比べて、100メートルは10秒の世界。
その短時間に凝縮される哲学の深さに圧倒される。
トガシの挫折と、理想と現実との折り合い方、涙は初老を迎えないと本当のところはわからないと思ったが、否、深く生きる若者たちにとってはリアルなことなのだろう。
トガシのみカタカナ。
ひゃくえむ。が平仮名「。」付き。
に意味がないわけがない。
多分、この一作のアニメーションの解説の為に本が一冊必要になるのだろう。
すごいものを見てしまった。
鰹西高校とか、鰯第二高校とか、妙な遊び心も楽しい。
試合が始まる前の準備の描写が長い。ロトスコープの効果を最も感じた。
あの空気感を出すのはこの手法がベストだと思った。
実写ではこうはいくまい。
アニメーション表現に比重を置き過ぎたかも
ところどころいい台詞がありアニメーション表現もロトスコープをめいっぱい使って並々ならぬ労力で作られたことは分かった。
エンドロールでロトスコープのモデルになった人の人数が半端でなく子ども時代のトガシ陸上シーンのトガシ日常シーンのトガシなど他のキャラも同様なので、どれだけの人数と時間をかけたのかと気が遠くなるほど。
じゃあ、その努力は実ったのかというと確かに陸上シーンは素晴らしかった。しかし、日常シーンはふわふわと揺れて不安定なところが結構あった。陸上シーンと差異が少ないように日常シーンもロトスコープを使ったのかもしれないが、それはあまり上手くいっていない気がした。
さらに感情が爆発するシーンでは急に手描きになりデフォルメが強く違和感になった。
スポーツアニメという事で思い出したのがスラダンを見た時3DCGで原作の雰囲気をここまで出せるんだと感動した事だ。しかし、表情のパターンはやや少なく女子マネの驚いた表情は全部同じに見えた。スラダンの次に2Dのハイキュー!!の迫力あるデフォルメ手描きを見たら、2Dも3Dもそれぞれの良さがあるが歴史的蓄積がある分2Dで出せる迫力は捨て難いと感じた。
穿った見方かもしれないが、本作はロトスコープの良さと手描きデフォルメの良さをミックスしたいと思ったのかもしれない。しかし、そこはやや統一感がなく成功したとまでは言えない気がした。
いろいろアニメーション表現の事を書いたがアニメーション表現にめちゃめちゃ力が入っているのはヒシヒシと伝わったが、人間の業や性(さが)に関しては表面的に感じた。つまりアニメーション表現で手一杯で作品思想まで手が回らなかったように思えた。
原作未読なので原作も似た感じかもしれないが、漫画は絵の表現もさることながら普通はストーリー重視だから、もっと何か言いたかった事があったのではという気がしている。なのだが、アニメーションを見てさほど響かなかったのでわざわざ原作を読む気にならないのが自分でも残念だ。
全77件中、1~20件目を表示
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