ひゃくえむ。のレビュー・感想・評価
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む、胸が苦しい⋯
終始、敗れ去る者たちが描かれています。
画もアニメーションもすごいのですが、敗れ去る者たちの悲痛な姿が心に刺さり過ぎてそれどころではありません笑
敗北や恐怖に特効薬はなく、ただ負けて終わるだけ。だからこそガチになれる。
すべてが不確かな中で 自分がガチになれていることだけは自分で分かる。少なくともそれは真実というデカルトチックな気づきも面白い!
…と同時に、自分がガチに生きて無いことに気付かされます笑
今現在逃げている、それも現実を受け止めずに逃げている人が見ると、刺さり過ぎて危険です。
わたしは普通に致命傷でした。
自分の現実を見つめて、わたしはどう逃げるかな⋯
高校パートでは唯一(?)スポーツの楽しさが描かれていました(それも絶望への前フリでしたが)。
思い通りに動かない体を少しでも理想に近づけるための切磋琢磨、仲間との練習、運動ってやっぱり楽しいよね〜というスポーツの明るい側面が描かれていて、よく同じ映画にこれだけ落差のあるシーンを入れ込めたなぁと感心しちゃいました。
すごく面白い映画表現だった
朝、時間が空いたので何か見ようかなと思って気になっていた本作を鑑賞。公開から1ヵ月以上経ってるはずだけど、いまだにロングランなのが納得の面白さでした
映像表現がとにかくすごい!
- インターハイの雨の中走るシーン、水墨画みたいな表現が真新しかった。おそらく実写を元に2D化してるんだろうけどその完成度が「果てなきスカーレット」の10倍以上のクオリティ
- 登場人物たちの情緒が不安定になるときに、主線がグチャグチャになる表現。これおそらく「かぐや姫の物語」から来てる!感動
あとストーリーも最高!魚豊(うおと)先生流石!
ただ無闇に走りたくなる映画
物語的には落ちぶれた神童の再起物でストーリーラインはシンプル。
主人公トガシは才能溢れる小学生時代とすっかりサラシーマン気質に染まった青年時代との対比が面白い。特に魚豊氏のキャラは顔面力が強いので小学生トガシはやたら貫禄がある。
ライバルの小宮は小学生時代はフォームも何もないドタバタ走りが可愛い。
そんながむしゃら小宮も成長すると才能が開花して陸上界のトップに君臨し、そしてやたら虚無な青年に変貌。同じくトップ層を張る財津と少し虚無キャラが被っているのが気になる。陸上でトップを走るとそうなっていくの?
見ていて良いと思ったのは、スタンバイに入る選手の様子を舐めながら競技場の様子をぐるりと見せ、また選手をクローズアップする中盤のカット。
選手だけにフォーカスするのではなく、選手が身を置く場所をじっくり見せてくれるので、そこに一緒に立っているような気分になって臨場感が上がる。モーションキャプチャーを取り入れた描画といい、全体的に細部の描き込みに余念が無くて素晴らしい。
ただ、テーマ部分の中心はわりと精神論なので、そこが引っかかる人はいる気がする。怪我はちゃんと治してくれ…とは思う。
しかしそれでも、這い上がってきたトガシと帝王小宮が直接対決するラストランは、物語的にも感情的にも熱量のピークで「今この10秒だけ走りたい」という選手の気持ちと観ているこちらのエモーションがピタリと一致する。
ラストショットは競り合うトガシと小宮。互いに「こいつだけには負けない!」と思っているかのような、これまで見せた事の無い良い表情でグッとくる。
陸上100m、10秒の中にこれほどドラマを詰め込むことができるのか。ただ無暗に走り出したくなる、そんな映画だった。
体は子供、頭脳は大人
この手のアニメでレビューが高いとほぼ面白いので安心して見に行ったが、期待していたより更に面白かった。
最初思ったのは、小学生ながら随分と人生を達観した小学生2人・・・
中学生もまた、ベテラン選手のような貫禄で小学生相手に人生論みたいな話をし、それを理解する小学生。
この子たち人生何回目だろうと、心の中でつまらないツッコミをした。
日本トップレベルの走者になるような選手は小学生入学時点で絶対足速いよな、小学生の足の速さはほぼ生まれもった運動神経次第だよな、最初は足めちゃ遅かったとか絶対無いよな(小宮君)。とか、後半、競技を続けられるかスレスレのレベルからあっさり日本最速レベルになったり・・・とかあるけど、フィクションはそれでいいと思う。
個人的には高校入学から800m混合リレーまでのくだり好き。
最後、ようやく2人が並んで心から楽しく走った姿がベストシーンだね!
「100mを誰よりも速く走れば全部解決する」人たち
陸上競技の100m走に取りつかれた、「100mを誰よりも速く走れば全部解決する」な男たちの話。
たった10秒の中に、それぞれの人生が凝縮されている。
ほんの一瞬で終わる世界なので些細なことが大きく影響する。メンタルの調整は大きな課題だ。早く走りそれを維持するために、知らず知らず自分の「真理」を模索している。こうやってもがくのは、一流アスリートであればこそ。真剣だからそうなるのだ。
たびたび哲学的格言が飛び出すが、どれも「普遍的真理」ではない。
あるとき「これだ」と思っても、すぐに通用しなくなる。真理は常に流動的で、その時々、コンディションで大いに変わったりもする。
迷走して、人の受け売りを真理と思い込もうとしたり、見当違いだったりもする。
もがきつつ「真理」を求めているうちに、老いに追いつかれる。
そして、現役を退いたら、もう真理を追究することはない。
「100mを誰よりも速く走れば全部解決」しなくなる時が必ずくるのだ。
重々分かってはいるし、それを受け入れた時が引退の潮時。だが、それは今ではない。
それが彼ら。
「結論から言うと、不安は対処すべきではない」と「現実が何かわかってなきゃ、現実からは逃げられんねぇ」という、海棠の言葉になるほどと思いました。これは100m走に限ったことではなく、広く一般に通用するものだと思う。
シビアな世界で長く生き延びている人には、それを可能にした哲学があるのだろう。
バカでは長生きできませんね。
「生まれつき足が速い」ことで幼いころからヒーローだった男たちなので、みんな表向きの表情はなかなかスタイリッシュ。だが、中身はしょせん「人間」、実は見栄を張っていたり偉そうにしているだけだったり、卑屈になったりと、内面は普通にかっこ悪かったりするのを描いている、かと思えば、小宮のようになりふり構わず、他の一切を断ち切っているものも。深い。深掘りしてないけど。日本の漫画ってすごいなと改めて感心した。
大会準決勝で、常に自分の後塵を拝し続けており見下していたお年寄り海棠の背中を見た。そればかりか他の選手にも抜かれて決勝に残れない、いわゆる惨敗を喫したカリスマ・財津がその場で引退を発表したのは、カッコ悪すぎていたたまれなかったからじゃないかと思ってしまった。挫折したことがないので超打たれ弱かったのかも。天才だっただけで、さほど競技に思い入れがなかったのかも。贅沢だけどこういう人もいるんだろう。
トガシと小宮が主人公のようだが特に肩入れされるでもなく、どちらかというと群像劇。
キャラクターが個性的でひとりひとり面白い。
個々を深堀りしないので、100m競技に取りつかれた男たち、というテーマがぼやけない。
アニメなのに顔芸がスゴイわ。
人物の動きがものすごくリアルで、特に競技の直前のスタート地点の選手の細やかな動作が自然すぎて素晴らしいと思ったら、ロトスコープという、実際に撮影した映像をトレースしてアニメーションを制作する手法を使ったとのこと。まるで実写、というよりベースが実写だったんですね。
トガシと小宮の勝負の結果を見せないラストは、予想できたがそれでよかったと思う。
100m、わずか10秒の勝負に憑りつかれた男たちの、本気の熱量がひしひし伝わってくる映画でした。
面白かった。原作未読。
これはすごい作品 ネタバレ
絶対見た方がいいー!
ド熱い!
普通陸上のアニメは青年期までくらいと思いますが、このアニメはおっさん期までやってくれます笑
激アツです!
おっさんの私は最後まで前のめりで見ました!
活気盛んな若者はもちろん、疲れてるおっさんにも是非見て欲しいです!
これもっと宣伝した方がいい、
これめちゃくちゃ素敵な映画です!
イッちゃってる面々が最高に清々しく潔いです。
私も現実を直視して現実逃避することに決めます笑
生きてる証
『100メートルを誰よりも早く走れば全部解決する』
一見、極端な発言だがある意味、色々な
考えをおいても名文。
走る一瞬に人生をかける男達。
人生をかけて努力し続けている人には
突き刺さるだろう。
涙を流すのも生きてる証。
壁にぶち当たるのも。
人生は長くて尊い。
自分らしく生きて欲しい。
100mを1番早く走れれば大体の問題は解決する
この冒頭のセリフを言うトガシは果たしてラストまでそう思っていただろうか?いつまでも1番でいられない、しかし1番で居続けられれば大体の問題は解決するのか?
ラストの二人はどちらが勝ったかわからないまま終わる。でも、二人の表情がその答え。
原作も読みましたが、割と途中違います。
原作とアニメ、どちらが好きかと言われたらかなり迷いますが、やはり映画かな。でも漫画の熱量ものすごいです。コマから伝わる迫力半端ないです。
100m走者たちの「走る意味」を緊迫感ある戦いと共に描いた熱い作品
周りとは一線を画した足の速さのトガシ。トガシの小学校に人とコニュニケーションがうまく取れない小宮が転校してくる。小宮は速さを求めず、一人で近所を走り続けている。
そんな小宮のことが気になったトガシは自分なりの速く走ることの哲学を伝え、小宮が速く走るための練習につきそう。しかしある日、突然小宮は何も告げずに転校してしまう。
その後、トガシは中学で陸上競技の選手になるがスランプを経験し…。
原作未読。アニメ「チ。」のファンです。
小学生の時はどこか達観したような冷めたようなトガった印象だったトガシが高校では人間味がある人物に変化していた。…それは中学の時に挫折を味わったからなのかもしれない。
その後、社会人となり、一気に人当たりの良いトガシがそこにはいた。しかしアスリートとしてはかつてのような輝きは失われていた。
普通に考えるとみんな強いヒーローが好きだと思う。私自身、速いトガシが好き。紆余曲折してもトップを取って欲しい。なんだかんだトガシはいつも優しいし、この映画の主人公だし、たぶん観ている人はみんなトガシを応援しているはず。
しかし、ストーリーは容赦なくトガシに壁や挫折を用意する。情けないトガシの姿は決してかっこよくなく、残酷なほどただただ惨め。
この映画の登場人物たちは皆人生で一度はトップを味わっているアスリート。しかし輝きいっぱいで描かれることは全くない。みんないつも哲学的な問いや悩みを持って描かれている。
なのでスポーツものだけどちょっと他のアニメとは違う。先が全く予想できない。
印象的だったのは日本記録保持者の財津が高校の講演会で放つ言葉たち。トップ選手のキラキラ感は一切なく、ものすごくシンプルな言葉で生徒たちの質問を哲学的にぶった斬っていく。その様が痛快すぎて一人で笑ってしまった。
そして、その財津の言葉により高校で陸上競技をしていた小宮は抱えていた悩みを乗り越えることができ、大きく飛躍していく。
その後登場するベテラン選手の海棠の言葉もまた哲学的だけど、私の背中をたくさん押してくれる。津田さん渋すぎる..かっこいいです。
頑張ってもなかなか報われなくて諦めかけている人がいたら、海棠の言葉は必ず背中を押してくれると思う。
そしてラスト…トガシと小宮のレースが始まる。
もう痺れる終わり方でかっこ良すぎました。泣きました。
全編通してレースの時にロックが流れるのですが、それが渋くて本当にかっこいい。キラキラはないですよ(笑)アニメの「チ。」のファンですが、作者の魚豊さんは本当に天才ですね。
とにかく走り、走り続けるだけ。
公開から一ヶ月半ほど経った今更ですが鑑賞しました。
動員も公開から一ヶ月半経ったとは思えないほど客入りが良かったです。
内容としてはとにかく最高でした。
ただ走る。内容としては登場人物が走ることを突き詰める物語で、泥臭くもそれ以上にひたすらさわやかな映画でした。
無駄な恋愛要素などもなく、走ることだけに命を懸けて、わずか100メートルの間に得られる爽快感を求めて走り続けるというのかすごく良かった。
自分自身、別分野で同じような気持ちを味わうために
ただそれだけのためにやっていることがあるので
とても共感したし、トガシのどうしようもない才能にぶつかって挫折する様も自分を見ているようで少し苦しかったです。でもそれ以上に見て良かった、面白かったと思える作品でした。
国宝を見た時にも思ったのですが、
もっともっと真剣に向き合いたいと感じました。
〜芸の国宝、武(スポーツ)のひゃくえむ。〜
今年の映画の中での個人的な大袈裟な例えである。
昨年の今頃に放映されていた「チ。地球の運動について」が大変面白くて、その作者の魚豊さんの作品とのことで是非観たいと思い鑑賞した。
100メートル走競技に情熱を注ぐ人達の心境、競技者の心理を違った観点・視点から抉り出した作品。物語が少年期、青年期、現在の3期に渡り展開されるが、淀みなく各期情報不足や不自然な描写なく繋がれていて引き込まれやすかった。途中、決勝直前の大雨の描写で線がメインの荒いタッチに映像がなされたりして、その緊張感が違った味わいで伝わってきた。専門用語分からないので拙い表現になってしまうが、綺麗な映像だけがアニメの全てではないことを教えてくれた。
そう、物事を究めようとすると、人は“狂”の境地、狂地にたどり着かなくなてはならない。そこは、常人の常識や思考が入り込めない、下手したら、普通の人はそれによって傷つけられることもある、竜の巣のような領域である。
今年公開された「国宝」にも似た匂いを個人的には感じる。それで、芸の国宝、武のひゃくえむ。、ということだ。2025年の映画界に誇る傑作の1つではないだろうか。観ていて楽しかった。そして、走りたくなった。
ヒトは走る生き物
赤色をバックに最速で走る様に横切るOPクレジットを観た瞬間、この作品は勝ち確!と拳を握る。
少年は生徒達を置いてひときわ早く走り、ゴールの前でピタッと止まる。誰も追いつかない壁の前で。
周りはもてはやすが本人は気乗りしない。
本能で早く走ることを知っている、走れてしまうトガシ。
自分の居場所はあるがそれは誰にも理解できない孤立する存在。
その横を明らかにボロボロのゼィゼィで走り倒れる少年。
彼は転校生のコミヤ。コミュ症だ。
体育の時間にビュンと目の前で風を切って走るトガシを見て「すごい…」と呟く。
嫌な事を忘れたいから嫌いな走りをがむしゃらにするコミヤ、彼にトガシは「走り方」を教える。初めて自分の走り方を教え、受け入れられ、共に走れる事に喜びを覚える。
運動会でコミヤはたったひとつの百均の金メダルを欲しがり努力で勝ち取る。ちっぽけな意味。
コミヤは競走をしようとお願いする。いつもの練習場所の河川敷、合図は通過音。ガタンゴトン…心音の様に鳴る音…張り詰める緊張感、ダンッ!速いのはトガシだが、だんだんと追いかける黒い影…作画崩壊を起こしたようなコミヤの顔がスクリーンから飛び出す!そして一瞬追い抜きパタリと倒れる。
じゃあ…と言い足を引き摺りながらコミヤは去り転校しそのまま。初めての敗北。
トガシはスランプの後、陸上を辞めるも急かされて制服で走り出す。風を切る音、流れる先輩の髪、走れる…「すごい…」アサクサが呟く。
走ることへの向き合い始めがリレーというのも良かった。孤立せず、仲間と励み、力を合わせる。1人ではない。
しかし、コミヤはまだ自分が「人より速く走れる」と思っていた。学校でも名も知れて、部の中でも1番速い。
小学生の頃に鼻をへし折ったニカミよりも速かった。
しかし、世界は広い。
全国大会で再会するコミヤ。
彼は努力して努力してイップスを克服しメンタルも整えライバルとして現れる。
雨の降る中、周りにも降っていると錯覚する様な雨垂れに合わせて上下する画面をぐるりと周り映し出される8人の選手。1人ずつ名を呼ばれ挨拶をする様子をしっかりと映す、観客は選手達は見えてもいない様な描写。この一連のシーンは本当に素晴らしく見逃してはならないものを観ていると感じる。足をかけ、ゆっくりと頭を下げる。セット!あとは前だけ!前だけを見て雨の中、風を切って走る。ふ…と横を駆けるコミヤ。トガシの髪に大粒の雫が流れる。立ち尽くすトガシ。雨はいっそう強くなり彼の姿を白く塗りつぶしていく。
彼は再び敗北したのだ。
社会人実業団に話は進み、ギリギリの成績を収め続けるトガシ。社会人実業団では主にトガシ、コミヤ、カイドウ、ザイツの4人がライバルとして走る意味や信念の独白があり、それは成長と共に形を変えて勝敗やお互いに作用されながらも100mの世界へどのように取り組まれているのかをじっくりと話される。
しかし、それぞれの言葉の情報力が多すぎて一言咀嚼しようとしたら、あっという間に置いてかれてしまい、すごくいいこと言ってたのに分からなかった!!という自分の頭の残念さを自覚してしまう名台詞がたくさんだった。これは哲学です。
カイドウの「現実を認めないと逃げられないから目を開いて現実を見ろ」
ザイツの引退時の「極上の10秒を味わえ」など痺れるワードが爆発してたので再度視聴するかな。
作品全体を観てとにかく背景が綺麗でひときわ青空が水彩で塗られた様な爽やかさで街全体も輝かしく描写されている。
反してキャラクターは線がしっかり太く、どっしりと描かれてていて会話シーンなどはどこか不気味さも感じる。自分が追い抜かされた、負けた瞬間、ぐにゃりと世界が曲がっていく。非常にわかりやすく見せつけてくる気満々でやってくる。そして立ち直った際に瞳をキリリと持ちあげるのだ。
動き方も非常にリアルでクレジットを観てこんなに沢山のモデルがいたのか〜とびっくり。
彼らの背景はほとんど明かされず、ただ走ることだけに重点をおいている。削りに削りった作りなのでどのキャラクターにも感情移入しづらいことが逆に走りに人生をかける彼ら全員を応援できる。
世界大会決勝戦の日、肉離れを起こし選手生命が危ないトガシはゆっくりと起き、歩き、列車に乗り会場へ着く。
再び対峙するトガシとコミヤ。
「この世界にはすごく簡単なルールがあるんだ。たいていのことは、100mを誰よりも速く走れば全て解決する」
ただ前を見て走る10秒。2人のその目の先には子供の頃に走った河川敷。コミヤの靴にはガムテープがぐるぐる。
EDの髭団の「らしさ」も良くキャッチーなフレーズを繰り返すので視聴後は、ら〜しさ♪と口ずさみながら100mを目視しつつ帰る方が多いのかもなぁと思いながら自分もそうして帰った。
自分を甘やかすことなく励み、貪欲に勝利を求め勝利の為に考え、時々立ち止まり走る意味を考え、孤独を感じそして己を信じまた走りはじめる。10秒を走ることに人生を捧げ続けるどこまでもストイックな男たちの作品。
子供の頃は足が速い子がモテる時代だったのだ。
有酸素運動でダイエットもできるのだ。
ただ走る。それだけでこんなにも。
漫画を1巻だけ履修した上で視聴。
結論から言うとかなり面白かった!
ただ100mを走るだけ。それだけの行為のはずなのにそこに関わる人達の悲喜交々、作中でも語られていたけど人生がそこにはある。
見ていて熱くなるし、怖くなるし、圧倒される。
とにかく話の構成がいい。
漫画の1巻だけのみ見ていたけどたったそれだけでも分かるほど漫画の中身を見事に分解、再構築していた。個人的には1巻にあった小宮の走りに対する評価のシーンがとても気に入ってたからあそこが見れただけでも見に行った甲斐がある。
表現面もかなり凄い。
まず映像。CGも使っていたみたいだけど違和感がなくアニメの絵のままぬるぬる動いてるのが凄いし、走っているシーンなんて様々な角度と時間感覚で表現されてて迫力が凄まじいの一言に尽きる。これは是非映画で見るべき。
そして音楽も凄くいい……!走る直前に流れるロックっぽいインストは最高に盛り上げてくれると同時に迫力も満点。見たあとCDがほしくなった。
総じて今年のアニメ映画の中でもかなりの上位にある作品だったと思う。
できれば原作全部見た上で見た方がいいかもしれない。
最後涙目になったよ
ひゃくえむであろうとなかろうと、自分の未知の姿を思い描いて、のるかそるかの"ガチ"の勝負をしている姿の美しさが心に響いて離れない。
主人公の目から見た競技場の景色、自らの心臓の鼓動、髪を伝う雫、隣の競技者の息遣いがまるで静止画の様な、また時間が遅く流れているかの様な表現で迫ってくる。
己の概念と世界の概念のぶつかり合いは己の概念で捩じ伏せられなければ終われないし終わらない。
そんなギリギリで生きてる、みんなの代表であるトガシとコミヤとライバルたちの刹那を描いた映画。
たった10秒のために人生を捧げる男たちのドラマ
ピカソの逸話にこんなものがあります。
ピカソの人気絶頂だった30歳の頃、とあるマーケットでピカソは見知らぬ女性から「この紙に私の絵を描いてください」と依頼された。ピカソは30秒程度で簡単なスケッチを仕上げた後に「この絵は100万ドルです」と言った。女性は驚き、「たった30秒程度で描いた絵なのに?」と問うと、ピカソは「いいえ、私はこの絵を描くのに30年と30秒掛けています」と返答した。
この映画はまさにそんな映画でした。100m走は時間にして僅か10秒。そのたった10秒のために、これまでの人生、そしてその後の人生までも賭けようとする。自分の人生の全てを、その10秒のために注ぎ込む。そこまで熱中できるものを見つけることができた彼らを羨ましいと思うと同時に、彼らのような生き方をしてみたいかと問われればNOと答えるだろうと思う。
普通のスポコン漫画とは一線を画した、魚豊先生にしか描けない哲学的なスポーツ作品を完璧に映像化できていたと思います。
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生まれつき足が速く、その才能から友人や居場所に困ることは無かった富樫(松坂桃李/種﨑敦美)は、小学校のクラスの中心人物だった。ある日、ひょんなことから転校生の小宮(染谷将太/田中有紀)に走り方を指導するようになるのだが、つらい現実から逃避するためにがむしゃらに走り続けていた小宮は、富樫の指導もあってみるみるうちに成長していく。親の仕事の都合で小宮が転校してから会えなくなった二人だったが、高校進学後、トップアスリートとして全国大会で再開を果たすこととなる。
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100m走をアニメ化する。これ、下手にアニメ化したらどのレースも同じような映像で退屈になってしまう気がします。サッカーや野球みたいに試合の中で劇的な展開があるわけでもなく、言い方は悪いですがただ走るだけのスポーツです。しかしこのアニメ、そのただ走るだけの映像が身体の芯まで熱くなるくらい盛り上がるし面白いんです。これは本当にすごいことです。
個人的に痺れたレースが2つあります。
一つは、高校生になった富樫と小宮が再会して決勝戦でぶつかる高校全国大会のシーン。盛り上がるBGMが絶妙なタイミングで差し込まれ、レースが始まる前の準備のシーンから長回しでじっくりじっくり丁寧に見せてくれる。レースが始まるまでが結構長いのに、レース自体は本当にあっさり終わってしまう。これが100m走という刹那的な競技の魅力を端的に表現していて素晴らしかった。
そしてもう一つが、ダークホース小宮が財津の大会記録タイで優勝した北九州大会。まさかの「走っている選手の姿を一切映さない」という演出。澄み渡る青空と、選手たちがスタートしてから10秒後に鳴り響く地鳴りのような歓声。歓声の大きさからとんでもない記録が出たということが察せられる素晴らしい演出だったと思います。
現役陸上選手の方が本作の感想として「具体的なタイムを明示していないのが良かった」とおっしゃっていました。私には無い視点です。私の記憶では100m走のタイムが明示されたのは半年引き籠ってた仁神が久々に100mを走って出た「12秒」というタイムだけだったと思います。陸上に詳しい人なら、具体的なタイムを示されると現実の陸上選手と比較してしまいます。それはアニメの没入感を阻害し、現実に引き戻される行為です。本来100m走とタイムは切り離せない存在のはずなのに、映画を没入して楽しむためにはタイムはノイズになってしまうんです。その感想を聴いた時、私には無い発想だったので「なるほど」と膝を打ちました。こういう自分に無かった着眼点を知れるのが、他の人のレビューを見る一番の楽しみですね。
とても面白く、色んな人と語り合いたくなる素晴らしい映画でした。オススメです!!!!
静かで、熱い。
100mに取り憑かれた男達の話。
何故走るのか?という問いに対する答えは、人それぞれ。
このシンプルで根源的な問いに対する答えがそれぞれシンプルで、深い。
天賦の才があっても、目標を見失うと、速く走れなくなる。
偉大な親の血を受け継ぎ、英才教育を受けても、世間が作り上げたイメージと自己との葛藤で、速く走れなくなる。
努力を積み重ねても、小学校での怪我の記憶が邪魔して、速く走れなくなる。
そんな挫折と葛藤を乗り越えて、登場人物達は、走る。
「現実を受け入れた上で、逃避する」という海棠の言葉が心に残った。矛盾するような不思議な言葉だが、「現実逃避」するのではなくて、「自分の追い求める理想とのギャップ」を冷静に測りつつ、その「ギャップを埋められると信じる」という意味だろう。
そして、彼らはトラックの上で、「今」、「この10秒」に集中していた。
100m走という1つの陸上競技にフォーカスした物語だが、そこには人生を考えさせられる奥深さがあった。今まで観たことがない、スポーツアニメ。
ロトスコープという手法で作られた映像の場面は、立ち姿でも微妙な身体の揺れがあるなど、人間らしい自然な動きが違和感なく表現されていて、新鮮だった。
キャスティングもよく、俳優と本職の声優ともに映像とマッチしていた。
ラストの2人の笑顔は、走る喜びが身体の底から湧き上がってきたかのように思えた。
アニメの新しい映像表現と心理描写
視聴直後に原作漫画購入!
これまでのアニメの表現とはベクトルの違う新しさを魅せてくれた点は「ルックバック」に近いものがある(表現方法が似ているという意味ではない)。
実際の人間の動きを撮影してアニメに描き起こすロトスコープという手法は、大昔のディズニーアニメ映画でもやっている古典的手法だが、単純にトレースしているわけではない。
そこには原作とは違うキャラクターの深堀り方が加筆されている。セリフ、モノローグではなく、動き、描線、そういう「アニメ」でしか表現できない方法で内面を表現している。
小宮のキャラクターは原作漫画とは大きく違うが、限りある上映時間の中でキャラを明確に立たせる手法として、素晴らしい脚本だと思う。
原作の改変ありだが、、
原作既読。
小学生編で小宮を鼓舞するシーンで小宮をバカにしてヤジってた隣の同級生をぶん殴って叫ぶのが削られてたり、初めて熱くなったガチ勝負でトガシは自分で作り出した小宮くんの亡霊に悩まされるとこや、やはり高校生編でラグビー部とのいざこざ一連がなくなってたのは悲しい。あと小宮くんの高校生編の部活でポツンと孤立してしまうエピソードも。嫌がらせで靴をズタズタにされる→小学生時代のガムテープで直す!とこもカットか…、まぁ言い出したらキリがないんですが、それらの不満点を差し引いても劇場版として☆5だと思います。
あと松坂桃李は上手すぎました。違和感なしです。
ぜったい観て欲しい!
原作は未読の状態で中学生の子どもと観ました。登場人物のそれぞれの立場や信念も考えさせられるものがあったし、競技場での映像は実写のような迫力がありました。選手の足音や息遣いの臨場感も凄いです。最後の2人の清々しい表情と、主題歌の歌詞に涙が出ました。高校生の子どもも友達と観に行って、感動した!と言っていました。すぐに原作を購入して、また違うエピソードもあり素晴らしかったです。鬼滅やチェーンソーマンと重なってしまい、埋もれてしまうにはあまりにも勿体ないです。大人になればなるほど刺さる作品だと思います。映画館でもう一度観たいと思います。
財津押し
「不安は対処すべきではない。人生は常に失う可能性に満ちている。そこに命の醍醐味がある。恐怖は不快ではない。安全は愉快ではない。不安とは君自身が君を試す時の感情だ。栄光を前に対価を差し出さなきゃならない時、ちっぽけな細胞の寄せ集め1人。人生なんてくれてやれ。」
なんとなく恐怖=不快、安全=愉快のように本来ひとつひとつ別の思いを大雑把にまとめてしまっていることに気付く。
逆接的だが、人生はもっともっと複雑に輝く。一人じゃないって思える名言。
全85件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。










