ひゃくえむ。のレビュー・感想・評価
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10秒の終わりに始まる試合ーー作品が突きつけてくる哲学
この作品を貫くのは、驚くほど単純で、同時に過激なルールだ――「大抵のことは100mを誰よりも速く走れば解決する」。子どもの頃なら、この言葉は真理のように響く。徒競走で一番なら周囲の尊敬を集め、足の速さこそが揺るぎないアイデンティティになる。しかし、大人になるとその単純さはむしろ呪いに変わる。速さを与えられた者は常に勝ち続けることを求められ、追いすがる者は限界を超えなければならない。『ひゃくえむ。』は、この才と努力の交差点に生じる葛藤や孤独を、緊張感ある描写で掘り下げていく。
だからこそ本作は、単に「速さ」を競う物語ではない。むしろ「なぜ走るのか」を問う物語だ。才能も努力も、勝利も敗北も、すべてはわずか十秒に凝縮される。その十秒に意味を見いだせるのか――これはトガシや小宮に限らず、観客自身に突きつけられた問いとなる。決勝レースでは、スタートと同時に「試合開始まで10秒」のカウントダウンが始まるという大胆な演出が導入される。つまり、レースが終わると同時に“試合”が始まる。ゴールとスタートが重なり合うこの逆説は、終わりが同時に新しい始まりになるという人生観そのものを象徴している。
この哲学性をさらに強調するのが、脇役たちの存在だ。海棠や財津は、勝負の意味を相対化するような哲学的な台詞を放ち、観客に「走るとは何か」「勝つとは何か」という根源的な問いを直球で突きつける。彼らの言葉は競技解説ではなく、人間存在をめぐる思想的断章のように響き、物語を単なるスポ根の枠組みから解放している。
声の演技についても特徴的だ。俳優が声優を務めたことで、“説明くささ”や“棒読み感”が目立つ場面もある。しかしそれすらも作品世界に馴染んでいる。むしろ不自然さこそが哲学的な台詞と噛み合い、現実的な熱量よりも思想的な響きを前面に押し出す効果を生んでいた。観客はキャラクターの会話を「物語内の台詞」としてではなく、「思想そのものの朗読」として受け取ることになる。結果として、この“ぎこちなさ”は異化効果となり、作品の哲学的トーンを補強していた。
さらに、リアリティを支えたのが撮影方法へのこだわりだ。実在のスプリンターのフォームをロトスコープでトレースし、スパイクが地面を蹴る音や雨天での水しぶきまで実際に収録。わずか十秒のレースを「身体感覚」として観客に追体験させる工夫が随所に施されている。その徹底ぶりが、速さの刹那をただの映像ではなく「生きられた現実」として迫らせる。
『ひゃくえむ。』は、十秒の走りを通じて人生を凝縮し、「あなたにとっての十秒は何か」を問いかける作品だ。速さという祝福であり呪いでもある才能、努力することの意味、勝利や敗北を超えて生きるとはどういうことか――すべてがトラック上の十秒に集約される。そしてその問いは、映画を見終えた観客自身の胸の内に、重く、しかし鮮やかに響き続ける。
原作は知らなかったが
原作は知らなかったが、スポ根好きのおっさんにとって、とても良い映画だった。絵もストーリーも、10秒の中に詰まったそれぞれの人生を感じさせるものだった。自分の人生とも重ねながら、あっという2時間弱だった。本気になる事の幸福感をもう一度体感したくなる作品だった。
まさに旬‼️
って、世界陸上2025東京と重なったのもGOODだが、私は元々陸上競技が大好きである。だから好きなやつだろうなって想像はできていたが、やっぱり面白い。
当初は初日に鑑賞予定でチケットも買っていたが睡眠に負けて逃してしまった。買い直しは躊躇したが評価も良かったので再度購入。大満足の作品でした。
競技とか順位争いは大好き、面白い。更にこのアニメは部分的に哲学みたいな要素もあり勉強にもなった。
原作を知らない私はてっきり小宮が主人公なのかと勘違い。なのに何故かトガシを応援したくなる。何故?って思ったが、エンドロール観て気づいた。なんだ、トガシが主人公だったのか(笑)
色々と強くて主人公要素ある登場人物の面々も面白くさせた。まるでキャプテン翼の陸上版気分だった。最後はどうだったのか気になるが、夢を見させてくれたのかな。
続編があったらまた観たい。
加えて髭ダンのらしさ。最高にいい曲。最近ずっとヘビロテでした。やっぱりいい映画にはいい歌がついてるんだな。
スポ根ではなく生き方を描く物語
原作未読で『ひゃくえむ』を観ました。
まず、ロトスコープの表現が印象的でした。特徴が活きている場面もあれば、アニメ的な描写が交互に映ることで、少しまとまりに違和感を覚える瞬間もありました。
予告で泣き崩れていた人物が誰なのか分からなかったのですが、本編でトガシだったと分かったときは驚きました。感情があふれ出るような演技はとても印象的でした。
登場人物たちが「なぜ走るのか」という問いを持っていて、それを言葉にする場面が多いのも特徴的でした。魚豊さんらしい作風だと思います。説明的に感じるところもありましたが、単なるスポ根ではなく、より哲学的なアプローチに感じられました。『ピンポン』のような熱血ものを想像していたのですが、むしろ「生き方を模索する物語」に近いかもしれません。
キャラクター面では、海棠さんが少し印象に残りにくかったのが惜しいと感じました。逆に、先輩や小宮、トガシは存在感が際立っていたと思います。ただ、陸上部に入らないまま、地元の近い高校に強い二人が揃う展開は、かなり偶然性が強いように感じました。とはいえ映画ならではのドラマ性として楽しむのが良いのかもしれません。
競技描写については、100mという短距離種目をどう描くかの難しさが伝わってきました。『ピンポン』のように試合中に心情を多く挟み込める競技とは違い、100mは一瞬で終わってしまう。その中で、海棠さんが走りながら心情を垣間見せるシーンがありましたが、他のキャラクターにももう少し踏み込んで描写があれば、さらに熱くなれたのではとも思いました。何度か鳴る大きな音の劇中音楽も場面を盛り上げる反面、それ以外にも心内描写があればよかったかなとも思います。十秒という時間にいらないかもしれませんが...
ラストはドラマや映画にありがちな結果をあえて見せないタイプのエンディングで、想像の余地が残る終わり方でした。皆が一番を目指している中でオリンピックや世界規模の話に広がっていくのかと思いましたが、そこまでのスケールではなかったですね。
最後に流れるヒゲダンの曲はとても良い曲で、余韻を一気に高めて締めてくれます。
手に汗握る
何のために走るのか
Official髭男dismの『らしさ』を聴くために鑑賞。
自分が文化系で、スポーツとか陸上とか興味なかったけど、そういう人でも心に刺さる映画だと思った。結構よかった。
原作は未読、事前情報はスポーツ系ということだけ。
またよくある学園青春ものかと思っていたら、全然違っていた。100m=人生そのものが描かれていた!
映像は、アニメなのに人間の動きが妙にリアルに描かれていて、話しているときの肩の動きとかまるで実写のそれですごいなーと思っていたら、ロトスコープっていう技法だった。初めて知った!競技自体も臨場感が溢れていたし、走り出す瞬間の緊張感が、映画館だからこそ感じられた気がする。
名言がいっぱいあったけど、自分的には小宮の質問に答える、財津のセリフが刺さったな〜。ありふれた耳障りのいいアドバイスじゃなくて、名言1つ1つに希望が持てるなにかがあった。原作も読んでみたくなった。
この作品に出てくる人たちはみんな熱いものを持っていて、人生を賭けていて、やっぱり情熱って強いし最高だなと感じた。私ももっと熱くなりたい!
最後のシーンの最後の表情に全てが詰まっていて、見終わって私も走りたくなった笑
そのままエンドロールで『らしさ』が流れて、この映画にぴったりの曲だと思った。(映画の中で、絶対的〜のセリフがあったときに、さとっちゃん、さてはひゃくえむ。熟読したな?と思った。『らしさ』の中にひゃくえむ。の要素がいっぱい詰まっていた!)
ルックバックby魚豊
フリー(水泳アニメ)も入ってるかな
今週枠は藤本タツキと魚豊の一騎打ち?と思ったら上映回数がめちゃ違ってた
しかし僅か100m10秒の世界でこんな緻密なストーリーが出来上がるとは!チといいやっぱり藤本タツキもですが御二方とも天才です この人何でもない話を感動作にしてしまうの凄いわ そしてツダケンはファンなの?
感情の揺れ、0.の動きの表現が、作画が崩れたようになったり特に雨の描写が面白かった リズム系の効いた効果音みたいなBGMも良かった 選手の皆さんもう仰ることが...まるで走る哲学者のようでした 個人的には小宮はあら!北九州、2時間掛けて通学 高倉山って言ってたようなが気がしたけど気のせいかな
素晴らしい映画体験でした
王道のスポーツ物
スポーツものはいいね。あれこれ頭を悩ませることなくスクリーンを凝視するだけで楽しめる。
原作は読んでいないが、作者の「チ。-地球の運動について-」は読んだことはある。妙に哲学的なところはこの陸上競技の短距離を描いた作品でも同じだった。陸上短距離の漫画と言うと小山ゆうの「スプリンター」を思い出すおっさんだが、似たような印象も受けた。
主人公、トガシが子供の頃に走り方を教えた相手(小宮)が後にライバルになる(というか置いて行かれる)という展開はスポコン物ではあるあるだが良い。弱小の高校陸上部に入って活躍するとか、挫折した先輩(仁神)が立ち直って協力するとか少年漫画の王道。大人になっても仁神は世話を焼いたり面倒見がいい。
小学生から始まったので、高校で終わりかと思ったら少々くたびれた大人になるまでやるとは思わなかった。海棠の見た目と声優もあって誰かを思い出させるが、そういうキャラクターも多かった印象。
監督の岩井澤健治は、『音楽』というアニメで知った。映画祭で賞を取るなど評価されたが、一般ではあまり話題にならなかった。日本のアニメから連想する雰囲気とは違う、海外のアニメーション的な作品で印象に残っていた。この映画を見たのも『音楽』の監督の監督作品ということがあったからだ。アニメーションの動きには独特のこだわりがあるのか、『音楽』でも行っていたロトスコープの手法を今回も使っていたが、『音楽』よりも洗練されていて、3DCGのキャラクターが動くのとはまた違った独特の雰囲気になる。走っているシーンよりも、トガシを陸上部に誘っているときの浅草の動きなどが、アニメのキャラクターなのに人間が動いているような独特の現実感があって良かった。
岩井澤監督は、『音楽』の時に、映画のパンフレットが値段の割に薄っぺらいのが気に入らなかったので、『音楽』のパンフレットは読みごたえのあるものにしたとか言っていたとおもうが、『音楽』のパンフレットは作品資料集といってもいいものになっていた。『ひゃくえむ。』はそこまではいかないが、結構読ませるものになっている。
ロトスコープの撮影には日本のトップアスリートだった江里口匡史や朝原宣治が参加したようだ。若い頃に陸上競技に打ち込んだ人ならなおのこと楽しめる(あるいは身につまされる)映画になっているだろう。
嫉妬した。
足の速い奴が思いっきり走ってるだけの話。それを映画として色々な方法で表現している。
周りより特別足の速い奴らが集まって、その中でも特別足の速い奴になろうとする。そのために人生を賭ける。シンプルで綺麗でカッコイイ。もちろん人間だから色々思い悩んだり考えたりするけど、実際やることはただ100mを走るだけ。だからこそ、この100mが特別な意味を持ってくる。最終的には100mの中に人生を見出す。しかし最後の最後で、その意味はただ「ガチになること」に集約する。至極個人的なことだ。
主人公にとって最高なのは、自分と同じ速さで同じレベルでガチになれる奴が隣に居ること。「ガチ」で競争して「ガチ」を互いに高め合って、誰も追いつけないレベルの「ガチ」まで行って話は終わる。
その一瞬の「最高っぷり」な様を観せてくれる映画だ。
映画としての表現方法や作中の音楽は最高。とても熱い。
しかし正直「羨ましい」としか思えられなかった。一心不乱に「ガチ」になれる何かを見つけられなかった人間の、ひねくれた見方だが。映画に出てくるセリフを自分が言われてる気になって、それこそ「現実」を思い知らされた。
ということでオレも現実から逃避するとしよう。
新しいアニメ表現
「足の速い少年」の人生を覗き観た
良かった!でも原作が大好きな分ちょっと……
原作のネタバレ注意⚠️
以下原作厨の面倒臭いオタクによる感想です。
原作が大好きなので観ました!
公式Xもずっと追いかけて楽しみにしてた作品。
映像、声、音めちゃくちゃ良かったです!!
推しが動いて喋ってるのに感動😽💖
ただ本当に原作が大好きで全部まとめてくれると思ってたから残念……
前半の改変がな〜〜という感じ。
ほんっっっとうにトガシくんの心情がない!!!!!これマジで悲しい🥲
原作読んでて「うわここアツい!」って思ったシーンはそれほどでもなく……
アメフト部の話(体育祭)無いし、陸上部1人いないし。
寺川はちょっと見てみたかった笑
トガシの高校の話が全然違って結構嫌だったな〜。
浅草さんと椎名さんは親友みたいでずっと仲良いし、仁神部長の心情少ないしすぐ戻ってくるし(これは多分尺の問題なんだろうけど)
陸上部の"カッコ良さ"が削られていた気がする。
アクスタになるくらいの名台詞シーン、すごいあっさりしてるし迫力が無いし勿体ない🥲大好きだったのに……なんならその台詞楽しみにしてたまであった。色んなシーンが削られているせいで台詞の説得力にも欠けてたし。
「勝ちたい」が「勝たせてもらうよ」になってるのは予告から気になってたけど、これは個人的に嫌な改変だな〜と。
あと小宮くんの幻覚は!?小宮くんが転校してトガシくんが1人で走ったシーンで終わり!?この幻覚を通してトガシくんは自分と向き合えたんじゃないの!?
オリジナルキャラクター加えるくらいなら原作準拠で作って欲しかったかも、面白くて良いキャラも居たけど(;_;)
経田はね、小宮に越されることを恐れて陰湿な嫌がせをするくらいの奴じゃないといけないの……小学生時代の話でもここの高校の話でもいじめは無かったね
でも後半はめちゃくちゃ良かった!!
財津も海棠も樺木も良いキャラだなと改めて思った。
大会は全部ドキドキしちゃうし迫力も動きも凄かった。背景がアナログだったり陸上に使われてる道具?も細かくて小さいこだわりが強くて感動。
選手によって走り方も呼吸も違って本当に凄い。
カッコ良かった!!!
前半の改変を除けば全部良かった💖
原作5巻を約100分にまとめるのはやっぱり難しいよな〜しょうがないか〜。
原作未読であれば最高に面白いと思います!!
また観るかと言われたら別にいいかな!原作読む!
追記:原作読み直してびっくり。台詞の"重み"が違うし読んでて圧倒される。みなさん原作をぜひ読んでください😭🙏
圧倒的映像と上から目線のありがたいお言葉の数々
まず、主人公のトガシと小宮の小学生時代から描かれるが、最近公開されたリアルな小学生を多数起用した映画『ふつうの子ども』を観た後だと、この2人が小学生に見えないのが少し気になった。
トガシは100m走で小学生の日本一という設定だが、練習シーンがほぼないのは不自然に感じた。
いくら足が速いからといって、普通の小学生生活を送るだけで日本一になれるのか疑問。
クラスの人気者と周りから孤立した存在という対照的な立ち位置で、同じ趣味を通して絆を深めていく展開は、去年公開の映画『ルックバック』を連想した。
個人的に物語に引き込まれたのは、2人が高校生になってから。
トガシ編は、廃部寸前の弱小陸上部に元天才選手が入部し、チームを立て直していくストーリー。
一方の小宮編は、底辺にいた人間が陸上との出会いで人生を変え、強豪チームの中でトップを目指すという物語。
どちらもスポーツものでは王道の展開で、自然と話にのめり込んだ。
高校入学時、トガシは陸上を辞めており、その理由は明かされない。
しかし、観客に理由が明かされないまま彼の心が癒やされ、陸上部に入部。
その後、ようやく辞めた理由がわかるという構成は少し不思議に感じた。
小宮の高校にOBとして登場する、100m走の日本記録保持者の場面が印象的。
全校生徒の前で演説する姿は、アスリートというよりミュージシャンに見えた。
深そうな発言をしているが、いまいちピンとこなかった。
この映画に出てくるトガシ以外の陸上選手も皆同じような雰囲気で、ハツラツとしたアスリートのイメージとはかけ離れていた。
物語は中盤から説教じみたセリフが増えてくる。
100m走はわずか10秒ほどで終わるため、スポーツ自体の駆け引きでドラマを生み出すのは難しい。
その分、対話シーンが多くなるのは理解できるが、それが説教くさく感じられるのは残念だった。
数年ぶりに再会した高校生のトガシと小宮が対決する大会の場面は、間違いなくこの映画最大の見せ場。
小雨の中、選手がレーンに登場してから走り出すまでを長回しのワンカットで描写。
高揚感を煽る音楽も相まって、レース前の緊張感が伝わってくる、凄まじい映像。
レース終了と同時に画面を掻き消すほどの大雨になる演出は、心理描写をうまく表現していて見事だった。
その後、物語は一気に10年後へ飛ぶ。
プロの陸上選手になったトガシが全盛期はとっくに過ぎていて、クビ寸前の状態から物語が始まる構成は面白いと思った。
公園で落ち込むトガシが、運動会の練習をする小学生たちに走り方を教える場面。
物語の序盤、小学生だったトガシが小宮に走り方を教える場面を思い出した。
彼には指導者の才能があり、この後指導者を目指す話になるのかと想像し、もしそうなったら素敵だなと思った。
しかし、競技への未練を捨てきれないトガシは目の前の小学生たちが逃げ出すほどの見苦しい姿になり、個人的には残念だった。
スポーツにドラッグ的にのめり込むことを肯定するような内容に違和感を覚えた。
最後、幼なじみの2人が人生をかけた勝負の最中に子供時代に戻る演出は、他の映画などでもよく見るため、正直古臭く感じてしまった。
「感動」を超える「圧倒」
終わってみれば、一度も涙は流すことはなかった。感じたのは「感動」よりも「圧倒」だった。この映画は、すべてがラストの「10秒」に向かって収斂していく。
まずストーリーについて。スポーツ映画の多くは、対戦と勝敗が生む高揚や挫折で観客の感情を揺さぶる。しかし本作は、競技を「なぜやるのか」という理性の部分を徹底して問い続ける。そこには、栄光の高揚や敗北からの挫折のようなドラマはない。ただ理想と現実を突き合わせ続ける。いわば「人生哲学」ならぬ「スポーツ哲学」の映画だ。そこで発される言葉は、時に誰かの生き方を変えうる“名言”として響く。
正直、その言葉の密度は一度の鑑賞では咀嚼し切れないほど早く流れていく。だが、数あるフレーズのうちひとつでも心に引っかかれば儲けものだと思う。
演出面では、競技シーンを中心にロトスコープを用いた表現が冴える。派手な展開もなく数秒で終わってしまう100メートル走は映画的に“絵”にしづらい。だが、この技法がスタート前の張り詰めた緊張感とゴール後の脱力感を生々しいまでに可視化し、熱の質量を伝えてくる。アニメーションとしても一見の価値があるだろう。
私自身、個人競技の経験があり、鑑賞前はどこかで「共感」や「涙」を求めていた。はっきり言って泣きに行くつもりだった。けれど、彼らほどストイックに打ち込んだわけではない私には、その情熱と苦悩はあまりのも遠く、涙はおろか共感すら難しかった。
ただし、あの「10秒」だけは別だ。100メートルを走った者にしか届かない領域に、確かに触れられた気がする。それを演出し切ったこの映画には、ただただ圧倒された。
原作未読。 スポーツアニメだけど、「なぜ走るのか?」「どう生きるの...
原作未読。
スポーツアニメだけど、「なぜ走るのか?」「どう生きるのか?」みたいな哲学的映画だった。
陸上に興味なかった私でも、ロトスコープで描いた競技シーンとその時の音はすごく良くて、この臨場感は映画館だからこそだなと思った!
私も地面を蹴って走り出したくなる。
原作者の魚豊先生が朝井リョウとの対談で「真理を追求する人でありたい」みたいな話をしてたけど、チ。と題材は違えどそういう作風なんだなと思った。
でも原作勢の感想をみると競技をモノローグではなくアニメーションで見せてたり、内容の改変もあるらしく、原作既読だとそこをどう感じるかが変わりそう。
確かにモノローグがない分受け手によって感じ方も違いそうだし、淡々と進んでるように見える部分もあるかもしれない。
あと、ロトスコープで大量に描くのはアニメーターさんはめちゃくちゃ大変だったろうと思うけど、大画面で観てるから会話シーンとかは人物の動きがない分、作画は少し気になってしまった。
でもそんなことはどうでも良くなるほど陸上競技シーンが良かったな。
アニメ、映画にする意義を感じる。
雨のシーンが特に印象的だった。
原作も読んでみようかな。
全126件中、81~100件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
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