ひゃくえむ。のレビュー・感想・評価
全111件中、21~40件目を表示
10秒の世界に一人ひとりの人生が見えた!
100メートル走というのは、学生生活を無難にこなしてきた人間にとっては、一つの憧れのようなものがあるのかもしれません(少なくとも私は?)。眩しい太陽の光を浴びて、凄まじい勢いでグランドを駆ける姿はある意味、極上の美学のような気がします。作品の中でトップランナーと言われるメンバーたちが、最高の人生の記録を目指して大地を蹴って走る靴音がめちゃくちゃ涙を誘うような気がしたのは私だけではないでしょう。だから、青春時代の夢や希望が満ちているこの作品に、心が鷲掴みにされたような気がしました。作品の中では、小学校でのライバルの出現、高校でのライバルとの再会、社会人としての人生を賭けたライバルとの決着という風に淡々と描かれますが、ド直球のスピードへの執念にはただただ圧倒されます。人生を真剣に生きている人間の凄みのようなものです。ただ真剣と言っても、私には人生を楽しんでいるとしか思えません。私なりのなんのために走るのかの答えは、「人生を楽しむため」だと、この作品を見て腑に落ちました。あと、素晴らしい哲学的な言霊が続々と出てくるのでただただリスペクト!心に残ったセリフをあげておきます。「不安は対処すべきではない。人生は常に失う可能性に満ちている。そこに命の醍醐味がある。恐怖は不快ではない。安全は愉快ではない。不安とは君自身が君を試す時の感情だ。栄光を前に対価を差し出さなきゃならない時、ちっぽけな細胞の寄せ集め1人。人生なんてくれてやれ」
私見 才能とは生まれ変わるごとに磨かれて行く。今世で果たせなくても、来世以降で果たせるということはいくらでもあると考えます。感謝!!
圧倒的な絵力と達観した台詞でねじ伏せられた感じを受ける。
原作未読
映画を観る限り、作者をはじめ製作陣の圧倒的な熱量やパワーを感じさせる力強さがあり、絵の迫力と細密な描写、脚本(セリフ)による伝えたいことをド直球に伝える空気感や緊張感があった。
また大学陸上部、(音響だけの様だが)強豪高校陸上部、名だたるスポーツメーカー、競技場などなど多くのホンモノの協力を得ての製作は、作品に誠実であろうという意思があり、観る側もちゃんと対峙して鑑賞しないといけない雰囲気があったw。
一方、作者の溢れ出る哲学は人生観でもあり、極論100m走ではなくても成立してしまい、また子供だろうが大人だろうが関係なく登場人物を通してその哲学を語らせているのには違和感を感じた。(コレがこの作者が支持されている所以という事は十分わかっています)
主役2人が小学生時代に語る言葉はまるで借り物のようで、「大人びた」で済ますにはさすがに無理があり、少し気持ち悪さを感じてしまったのは残念だった。
生き方、考え方の参考になります
何といっても世界陸上が東京開催で盛り上がっておりましたので、タイミングよく陸上物のアニメが上映されると知って観に行きました。
テーマは100メートルと言う短距離走。一流のアスリートであれば、10秒弱の短い時間の競技ですね。確か桐生選手は47歩で100メートルを駆け抜けると聞いた記憶があります。
この物語は小学校時代に出会った2人の生き方を対比させながら、中学校・高校で新たに出会うライバルや先輩との交流、そこにチームメンバーとのコミュニケーションが織り交ぜられ、特に先輩からの助言に人生の生き方や考え方にとても参考になる言葉がたくさん出てきます。
10秒と言う短い時間に人生全てをかける競技だからこその尖った考え方が垣間見られ、50過ぎのおっさんにもとても響きました。
映画を見終わった直後に、世界陸上の最終競技4 × 100メートルリレー決勝をテレビで見ました。日本人選手のインタビューの様子が、何かこの映画の余韻を感じさせるものであって、とても沁みましたね。
スポーツ物のアニメにあまりハズレは無い気もしますが、私にとって短距離走のアニメは初めてで、とても内容の濃い良い映画だったと思います。
いくらなんでも
走ってる時の顔が怖い
小さい時から走るのが速くてクラスの人気者だったトガシと、何をやっても上手くいかず現実逃避のためがむしゃらに走っていた転校生の小宮。小宮はトガシに速く走る方法を教えてもらい、放課後に練習を重ねていった。打ち込めるものを見つけた小宮は貪欲に記録を追うようになり、いつしか2人は100メートル走を通じてライバルともいえる関係となっていった。数年後、天才ランナーとして名を馳せていたトガシは、勝ち続けなければならないプレッシャーと戦っていたが、そんな彼の前に、トップランナーのひとりとなった小宮が現れ・・・さてどうなる、という話。
100m走の選手が走る話だけど、確かに小さい頃って喧嘩が強いか、走るのが速いかで人気があったよな、って思った。
努力をして、速く走れるようにはなるとは思うが、競馬でも血で走ると言われるように、努力だけでトップに成れるとは思わないけど、そこはまぁいいか。
普通の時はそうでもないけど、本気で走っている時の顔がみんな怖い。わざとだろうけど、あそこまで怖く描く?
あと、浅草さんが絵も可愛かったし、声優の高橋李依の声、やっぱり良い。
予想通りの雰囲気とアニメ、でもその遥か上の雰囲気とアニメ
だいたいこんなムズくて恥ずかしすぎる捨て台詞の数々をよくもまぁ並び立てられるもんだと思って見ていたし、妙にリアルな絵づくりもなんかキモいんですけど、それをとことん徹底していて、内容と一緒で何か求道的なものを製作側に感じて、感心したというか、思わずニンマリしちゃいました。しかも世界陸上真っ最中のこの時期にTBSも絡んでいるこの作品、気合い入ってるなぁなんてさらにニンマリ。
内容とか台詞やストーリーは、ある意味にやにやしながら見ていたんですけど、絵はかなりすげぇーなんて思いながら─。モーションキャプチャーを多用していると思われるような動きの数々に絶妙なバランスで絡み合っている漫画チックな絵が、本当に絶妙で、独特の世界観を確立していた印象です。なので、かなりズレたりぶっ飛んだ内容とか演出でも、違和感なく、むしろごく自然に作品の一部として捉えることができたので、相当没入できたような気がします。
興奮してる
原作も読んでいて、もちろんチ。も好きで
「まぁコレは原作が良いから、『原作と違うっ!』って原理主義のように文句言いながらでも観とかんと、上映すぐ終わっちゃうかもしれんけんね。応援せんとね。」と映画館へ。
素晴らしかった!
それはもう想像の50倍良かった。
アニメーション映画としても、画面は手描き感もありつつ、なのに!人間の動きをそのまま取り入れて物凄く躍動感がある。
そして、漫画にはない、音!
電車の、雨の、心臓の鼓動、、無音の間!!
音楽にのせてキャラクターが歌い踊るアニメーションは楽しいけれど、
この作品はそうではなく、エンディングまで
歌は流れない。それがこの作品ではとても良い!
漫画原作がこんな風に上手に映画にされて
本当に嬉しい。
観て良かった。未だ興奮して眠れない。
走りたい。
語らせてくれ、真剣で。
知り合いに「ひゃくえむ。」を知っている人がいないから語るに語れない。だからこそこういう場があるのだと考え、ここで語るしかない。
多分に漏れず、「ひゃくえむ。」は私も「チ。」から入った者。「チ。」よりも話が単純で分かりやすい。スポーツ漫画自体が好きなのもあって、むしろこっちの方が好きまである。
「チ。」がアニメ化してしかも結構話題になった時から、ひゃくえむの映像化ももしかしたら叶うかもしれないと期待していたところにまさかの映画化!ずっと楽しみだった。
ただ、映画化となると尺が足りないのでは、と不安になった。小学生編は物語の始まりだし必須で、社会人編も最後の締めだから必須だし、高校生編が短くなるしかないよね。でも、高校生決勝でトガシと小宮が戦わないと次に繋がらないし、どうすんだろと。
とにかく楽しみだった。公開日がまさかのチェンソーマンと同じになるとは思わなかったけどね。最寄りの映画館では一日7回ぐらいやるチェンソーマンと比べて、なんとひゃくえむは一回だけ。2番目に近い映画館はまさかの上映なし。日曜日の朝っぱらから一人遠くの映画館まで見に行くことになったとさ。
さて、ようやく映画の話へ。
もうね、最高だった。ずっと楽しみだったのを見られて、むしろ上映後には喪失感に苛まれたぐらい。
ただ、やはり尺足らずの問題を解決するには至らなかった。原作の完全再現というのはできないしすべきではない、と原作者もパンフレットで言っていた。一番の違いはモノローグがほとんどないこと。好みは分かれそうだよね。
思いつくものをさらっていこう。
【小学生編】
概ね原作通り。小宮が運動会で初めて一位になるとこまではほぼ一緒。その後周りの扱いが変わっていく様子は無かったかな。仁神が出てきた辺りから改編されていく。トガシとの対談になり、しかもテレビの演出でトガシと仁神の100m勝負が始まる。
そして最後にトガシと小宮の一騎打ち。原作に特徴的な画面一杯の台詞言うシーンは全体的に薄めな演出だったかな。前述の通り、モノローグがほとんど無いから、この一騎打ちもあっさりに見えるかも。ここで後ろから迫ってくる小宮に対して熱くなり真剣で走るトガシ、負けがよぎり勝ちへの焦燥が強くなるトガシ、のような演出はなかった。
一番の違いはこの勝負を仁神が見ていない所。だから小宮に衝撃の苦言をするシーンはない。それはこの後に別の人が言うことになる。
【高校生編】
一番の改編がこの高校生編。まあ仕方ない。始まってすぐ気づくのが、椎名が陸上部に所属してること。おい!おまえむしろ敵側のキャラだっただろ。何を仲良く練習しとんねん。あれ、あのメガネの男子部員はどこいった。後ろを通り過ぎたぞ。アメフト部は?部活対抗リレーは?
とまあ、がっつり改編。アメフト部との抗争はなくなり、部活対抗リレーは地元の記録会の男女混合800mリレーに変更された。なるほど、だから女子2人にする必要があったわけだ。浅草さんのヒロイン力が爆発しているのはすごくよい。
仁神の過去を彫り上げることはなくなった。その代わり?仁神の前の学校が登場し、仁神の自称ライバルという唯一のオリジナルキャラが登場。声が杉田(銀魂の銀さん)だったのはウケた。
原作の好きなシーンに、浅草さんがリレーで走る男友達に「お願いすれば手加減するよ」みたいなこと言われて「・・・お願い。アップして」と返すめちゃくちゃかっこいい台詞があるのだが、当然見ることはできなかった。
リレーのシーンはこれまた素晴らしい見応え。仁神がアンカーを走るわけだが、その決着がまたニクい演出するのよ。
次に小宮側の話が始まる。こちらも尺の都合で、小宮が経田に嫌がらせされそれに負けずに勝つ流れはなくなった。その代わり、経田は仁神が言うはずだった台詞を言うことになる。いい役もらったな。しかし、言う人を変えて台詞を生かすというのは、制作側も相当工夫しているな。
高校生全国大会はほぼ原作通りだし、映像ならではの迫力はすさまじい。雨の中の決勝戦は見応えある。
【社会人編】
こちらはほぼ改編なし。モノローグがないことがやはり物足りなく感じてしまうが。
海棠の威厳が半端ない。財津か小宮か、のシーンはやたら強調されていたし、原作でも印象深いから、それをみたときが何故だか映画通して一番泣きそうになった。
あと、トガシが公園で小学生と話すシーンあるけど、突然号泣するのは、映像でみるとかなりヤバい奴。通報されるわ。
海棠のモノローグで、今、自分史上最高の走りをしてる、だから分かる、財津、おまえ速すぎるよ。この流れがほんと好きだが、この台詞自体はなかった。
そうしてラストの決勝戦へと流れるわけだが、そこはもう何も言うまい。
再三言うがモノローグはないので、どう感じるかは人それぞれかな。
決着は知っての通り。むしろ原作未読で見に来る人はどれくらいいるのだろう。
【エンディング】
特に無いのだが、スポーツ漫画だけに、知っている企業が多かった。ナイキ、アディダスからプーマ、アンダーアーマー、そして陸上といえばNISHI、さらにJAAF、各陸上競技協会、法政大学陸上競技部、そして最後に日本陸上競技連盟。
残念ながら埼玉県陸上競技協会の名前はなかった。しらこばと陸上競技場を使ってくれ。
さて、全体的に改編せざるを得ない中、これが映画でやる場合の最適解だと信じたい。勢いでパンフレットも買ったが、その辺のことも何人かが話題にあげている。
見終わったときの喪失感が強かったが、時間と共に和らいできた。
DVD化したときは買ってしまうかもしれない。
人の為より自分の為に書いたレビューとなったが、もし読んでくれた方はありがとうございます。
密度濃かった
原作読んでいません。ダレるシーンも少なくて、緻密に計算された登場人物設定だなと思いました
高校に入った時に、あれ?この話どうなるのと思いましたがまさかの登場人物。そこから引き込まれましたね
100m競技の勝てなかった時の残酷的な負けた気持ちも良く表現されていたと思います
ただ最後の財津選手はどういった選出なのかとか、もう少し前から絡みを演出して欲しかったですね。いまいち誰この人?的な感じがしました
カクカク走るラファウ的な
ち。しか観てなかくて、知識ゼロでみにいきましたが
チェーンソーマンを見た後だったので、背景やキャラの動きがカクカクしていたのが気になりました。
ルックバックもですが、手書きの味を出してくるアニメ映画なのかなと感じました。絶望の雨のシーンや、空を写し続け音だけで表現であったり、ユニークな新しい表現が多かったように感じました。
屁理屈か哲学か分からない語りが面白かった(笑)
人間は色んな理想論で動いている、キャラが引き立って魅力的でした。
染谷くんカッコヨカッタ(^^)松坂桃李も上手かった。
津田さんの戦闘シーンもっと見たかった(笑)
原作を知らなくても楽しめる
原作を知らないが、十分に面白かった。上には上がいるのだから、どこかで人は諦めるのだろうけれど、挑戦し続けてきた人の姿に感動するのだと思う。引きこもっていた仁神がさらっと復帰してしまったのは時間的な制約のせいだろうか?もっと腐りきっていても良かったかも?
小学校時代のトガシは冷静で天才のようだったけど、社会人になってヘラヘラする姿に悲しさがあった。天才のトガシと努力の小宮らしいけど、お互いに努力してるから、才能だけでは勝てないのだと思う。
ストーリー
1 小学校時代
トガシと同級生が走っているが、断トツでトガシ。トガシは既に小学校NO.1なので当然ではある。そこに転校してきたのが小宮。小宮は暗い性格であるが、トガシに走り方を教わると足が速くなっていった。
月陸の企画でトガシは中学生トップランナーの仁神と出会う。100mを競うとトガシの方が速かったように思われるが仁神は最後まで走らなかったので、勝敗は不明。
ある時、河川敷にて小宮はトガシに100m走を求めた。小宮はトガシに勝ったように思われたが、走った後、右足を痛めてしまう。その翌日、小宮は引っ越してしまった。
2 高校時代
トガシは近所の高校に通う。中学生時代もトップランナーではあったが、記録が伸びなかったため、高校では陸上部に入らなかった。
トガシの通う陸上部は部員の少なさから廃部の危機となってしまう。陸上部存続のため、トガシは入部を決意。先輩女子2人と、もう1人いる陸上部員に会いに行く。
先輩は仁神だった。仁神は腰を痛めてしまい、陸上から離れていたが、もう一度走ることを決意。とある大会に、部の存続をかけた200✕4のリレーに4人で参加することになった。
アンカーを務めた仁神は負けてしまうが2位入賞のため、部の存続が決まった。
一方で、小宮は中学生時代はトレーニングをしてはいたものの陸上部には入っていなかった。高校から陸上部に入る。試走では前半は非常に良いが後半に失速。昔痛めた右足を気にして全力で走れないようだった。
学校に来た財津からのアドバイスで、小宮は吹っ切れることができ、記録を伸ばしていった。
大会にてトガシと小宮は再会する。土砂降りの中始まったレースでトガシは小宮に負けてしまった。
3 社会人時代
10年が経った。トガシは会社との契約をかろうじて更新出来た。一方で小宮は財津と並び陸上界のスター選手になっていた。
ある時トガシは肉離れを起こす。医者からはしばらく走らないことを勧められる。トガシには契約更新をしていくには走るしかなかった。
トガシの怪我を知った会社はコーチの道を勧めた。トガシは徒競走を練習している子供たちにアドバイスしていると、感情が抑えられなくなりがむしゃらに泣いた。それで吹っ切れたようだ。
トガシは大会に参加した。予選、準決勝と勝ち進んだ。財津は準決勝で負けて引退を決意した。決勝にて、再びトガシと小宮が戦う。走りながらも2人はこの瞬間を喜んでいるようだった。どちらが勝ったか分からないまま、幕が下りた。
手放しで称賛できない
原作未読です。
確かに面白い作品でした、レースの迫力も、キャラ立ちも良かったですが、ストーリーと演出の面では違和感を感じました。
こんなに高校までかきちっとストーリーとして成り立っているのに、急に社会人からはサラサラッと、各種イベントも流れるように進みますし、キャラの掘り下げもたいしてありません。なぜ財津の圧倒的な走りが観れないのか良く分かりませんでした。それで海堂が勝っても、引退してもいまいち盛り上がりきれませんでした。
後は、演出がしつこいです。雨にしても泣くにしても、しつこい。絵の具での表現みたいなシーンも多すぎる。キャラがぬるぬる動くのは一つの売りでしょうが、それにしても高校の女子は喋っている際の動きが不自然すぎる。
原作を読んでいないので何とも言えませんが、レビューで高校までに不評が多く、そこが改編が多いのかなと思います。ただ、初見だと高校までか面白かったです。正直、そのままなら余裕で星5の作品だと感じました。
あとは主題歌です。歌詞はまだしもホップ過ぎます。原作未読でも、そこまで明るい作品では無いのは分かりますし、歌詞もメロディーもあまりにも軽すぎる印象しか受けませんでした。
楽しめた上映でしたが、気になる点と最後の主題歌で、イマイチ盛り上がり切れなかった作品と言う印象です。
クセが強め 笑
改変が多すぎる
いい改変もあったがあまりにも多すぎる。
ぶちかませ小宮くんのところは暴力的なため仕方ないとは思うがやはりひゃくえむを語る上で必要なシーンなので欲しかった。
時間の問題だったりもあると思うがもう少しボリュームが欲しかったと感じる。
走る前の動きからしっかりアニメにするの凄すぎる
そもそも100メートル走を題材にした漫画があることがすごいしそれがアニメ映画化されるだけでもすごいのよ。しかも結構な力作。
例えばトガシと小宮で走り方が違うんだがその書き分けだって本来面倒なわけで。これをやるだけですごいんだよ。
で。やっぱり今作のハイライトは雨の試合場面で。あれも実写で撮影した映像をわざわざ一コマ一コマアニメしにているんだ。その手間によるこだわりがあの場面の説得力になっている。
選手ひとりひとりの走る前の動きも全部違う。係員の人の動きまで入れて。あれだけ手間がかかっていると観る側もおお!って思うんだよな。
もちろん、ロトスコープならではの変な瞬間はある。例えば高校で陸上部の女子が勧誘してる時の動き。不自然に細かく動いているように感じるんだよな。でも、この表現に挑戦したことに意義がある。
音へのこだわりもすごい。電車が通り過ぎる音がスタートの合図な場面も良すぎるな。あの電車の轟音は映画館だからより迫ってくる。
エンディングのヒゲダン曲は哲学的な雰囲気の本編に対しちょっと爽やかで元気過ぎるんじゃないかと最初思ったんだが。よくよく歌詞を観るともう映画の内容どおりなので、これが正解なんだなと。あと、これくらい明るく勢いある曲の方が後味が良い。たぶん『らしさ』のメロディ思い出しながら映画館から走って帰る客もいると思う。それくらい映画と曲に力がある。
地動説に人生かける人々を描いた『チ。』の原作者だけある。どんだけひとつのことに人生かける生き様が好きなのよ、っていうね。こういった題材にこういうスタンスで挑む漫画家がいることがまず嬉しい。
そして岩井澤監督ですよ。きっと『ひゃくえむ。』に感動した客の中に監督の過去作の『音楽』も観てみる人が現れると思う。『音楽』はマジですごいから。こんなシュールギャグのような不思議な題材を何年もかけてほぼ1人でぬるぬる動くアニメに仕上げたのかよ!っていうとんでもない作品だから。『音楽』の頃から続く「動きへのこだわり」が今回も観れて自分は嬉しいよ。こんなアニメ監督もいるんだよな。
『鬼滅の刃』が記録更新中の中で『ひゃくえむ。』は埋もれるかもしれない。くしくも同時公開の『チェンソーマン レゼ篇』もかなりの傑作だ。ここら辺のヒットタイトルの勢いはすごい。
でもね。日本のアニメのすごいところは『ひゃくえむ。』のような作品もあることなのよ!100メートル走題材のアニメ映画をほぼ100M(100分)で作ってしまう心意気なのよ!この幅広さなんだよ!
今後も様々な題材で、色々な技法を用いて挑戦的なアニメーション作品が生まれてくることを願う。
陸上に殺されるのか、陸上に生かされるのか。
昔々、100m走者を主人公にした小山ゆうのマンガ「スプリンター」があった。
どんなストーリーだったか…は記憶の果てだが、
主人公が「自分の肉体だけを使って10秒の壁を越えた瞬間、
目の前の世界はいったいどんなふうに見えるのか」的なセリフがあったのを記憶している。
(人力のみでそんなスピードが出せない自分には見れない世界だと当時思った)
映画「ひゃくえむ。」は、
上記のような瞬間的なものから得る“悟り”や“神の領域に近づく”といった
剣の達人的なアスリートを表現するようなものではなかった。
予告編も公式サイトの説明も全く見ず、もちろん原作本も知らず、
評判の良さ(&「ひゃくえむ。」のタイトルとロゴデザイン)で見たのが功を奏し、
新鮮な驚きをもって映画に接することができた。
映画「ひゃくえむ。」は、
わずか約10秒というその時間と得られる結果(&そこに至る過程)に
走者(人間)は「何を感じ、何を手にし、何を見出すのか」、それがテーマの映画。
見ていて最も驚いたのは、アニメーションという手法で、
ここまで自分の思い、哲学、存在価値、走る意味を深く長く語るのか、と
びっくりした。(実写なら間が持たない、ウソに聞こえる)
もうセリフが満載。
特に残ったのは、
「陸上に殺されるぞ」という人と陸上の関係を示す言葉。
そして、
「いままで自分は明日のために生きてきた。これからは今のために生きる」
「現実から逃避する、そこから逃避するためには現実を知らなければならない」
ムチャクチャうろ覚えだが、そんなセリも心に残った。
(というか、本なら繰り返し読み返して咀嚼することは可能だが、
アニメ=映像という表現手法だと理解が追い付かないこともあった)
今回、アニメーションの凄みとポテンシャルを存分に感じた。
と同時に、陸上競技場のトラックを競技として走ったことがない人間にとって、
一線を超えるアスリートたちの凄みとポテンシャルも存分に感じた。
「ルックバック」を見た時も感じたことだけど、
日本のアニメーション作品の表現力はどこまで広がってくんだろうか。
小さいハコだったけど、ほぼ満席だった。
映画館で映画を見るのは本当にいいね。
蛇足‥‥
ただ、閉口したのはエンドロールの音楽。
あれだけ映画のなかで存分に“語った”のに、
なぜ、歌詞で“語る”系の髭ダンの歌を選んだのだろうか。
メロディと楽器で余韻を醸すインストルメンタルで良かったのになぁ…
と思った次第。
全111件中、21~40件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。