「100m走者たちの「走る意味」を緊迫感ある戦いと共に描いた熱い作品」ひゃくえむ。 華さんの映画レビュー(感想・評価)
100m走者たちの「走る意味」を緊迫感ある戦いと共に描いた熱い作品
周りとは一線を画した足の速さのトガシ。トガシの小学校に人とコニュニケーションがうまく取れない小宮が転校してくる。小宮は速さを求めず、一人で近所を走り続けている。
そんな小宮のことが気になったトガシは自分なりの速く走ることの哲学を伝え、小宮が速く走るための練習につきそう。しかしある日、突然小宮は何も告げずに転校してしまう。
その後、トガシは中学で陸上競技の選手になるがスランプを経験し…。
原作未読。アニメ「チ。」のファンです。
小学生の時はどこか達観したような冷めたようなトガった印象だったトガシが高校では人間味がある人物に変化していた。…それは中学の時に挫折を味わったからなのかもしれない。
その後、社会人となり、一気に人当たりの良いトガシがそこにはいた。しかしアスリートとしてはかつてのような輝きは失われていた。
普通に考えるとみんな強いヒーローが好きだと思う。私自身、速いトガシが好き。紆余曲折してもトップを取って欲しい。なんだかんだトガシはいつも優しいし、この映画の主人公だし、たぶん観ている人はみんなトガシを応援しているはず。
しかし、ストーリーは容赦なくトガシに壁や挫折を用意する。情けないトガシの姿は決してかっこよくなく、残酷なほどただただ惨め。
この映画の登場人物たちは皆人生で一度はトップを味わっているアスリート。しかし輝きいっぱいで描かれることは全くない。みんないつも哲学的な問いや悩みを持って描かれている。
なのでスポーツものだけどちょっと他のアニメとは違う。先が全く予想できない。
印象的だったのは日本記録保持者の財津が高校の講演会で放つ言葉たち。トップ選手のキラキラ感は一切なく、ものすごくシンプルな言葉で生徒たちの質問を哲学的にぶった斬っていく。その様が痛快すぎて一人で笑ってしまった。
しかし、その財津の言葉により高校で陸上競技をしていた小宮は抱えていた悩みを乗り越えることができ、大きく飛躍していく。
その後登場するベテラン選手の海棠の言葉もまた哲学的だけど、私の背中をたくさん押してくれる。津田さん渋すぎる..かっこいいです。
頑張ってもなかなか報われなくて諦めかけている人がいたら、海棠の言葉は必ず背中を押してくれると思う。
そしてラスト…トガシと小宮のレースが始まる。
もう痺れる終わり方でかっこ良すぎました。泣きました。
全編通してレースの時にロックが流れるのですが、それが渋くて本当にかっこいい。キラキラはないですよ(笑)アニメの「チ。」のファンですが、作者の魚豊さんは本当に天才ですね。
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