「陸上競技に人生を捧げることを許された「選ばれた人々」の見る世界に肉薄した一作」ひゃくえむ。 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
陸上競技に人生を捧げることを許された「選ばれた人々」の見る世界に肉薄した一作
原作を未読のまま鑑賞したので、当然原作との比較といった詳細な検討はできず、せいぜい「単体の映像作品として面白かったか」という感想を書く程度の内容です。
そして本作は、アニメーションとしての様々な手法を駆使し、陸上競技の選手たちに肉薄した作品として、近年稀にみる作品だと感じました。
本作のエンドクレジットには「ロトスコープ」という見慣れない単語が登場しますが、これは写真や動画の一コマをトレースして作画していく技法です。この方法自体はそこまで斬新ではないのですが、アニメーションなのに実写のような現実感がある、という何とも不思議な映像を作り出すことができます。
このロトスコープの手法を使った映像により、競技中の選手たちに、まるで自分自身が手持ちのカメラで彼らに近づいているかのような臨場感を感じることができる上、画面の揺れの手ブレ感が、さらにその感覚を高めます。
加えて低速シャッターで撮影した画像をトレースしたと思しき、手足などの動きの激しい部位のブレや残像感が、わずか10秒足らずの競技の疾走感を強めています。
トガシら主要登場人物は天才型の選手もいれば努力で這い上がる選手もいるなど顔ぶれが多彩ですが、いずれも陸上競技の勝敗と記録に人生を捧げることを許された「選ばれた人々」という点では一致しています。
本作はそんな常人には想像もできないような世界を一人称的な視点で疑似体験させるのではなく、ぎりぎりまで彼らに寄り添う第三者的視点を保ち続けています。
この、「選ばれた人々」との距離感の近さを体感できるという点において、本作は比類ないほどの存在意義を持っていると感じました!
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