「疾走感動の100分間」ひゃくえむ。 TSアラヨットさんの映画レビュー(感想・評価)
疾走感動の100分間
原作は未読だが、今年のマイベストTVアニメ「チ。」の魚豊先生の作品と知って、まず面白さは保証つきだと予想。直近で「川島明のそもそもの話」というラジオ番組に魚豊先生がゲストで出ておられ、本作のことも話しておられたのを聴いてさらに期待が膨らみ、観ないという選択肢はなくなった。
はたして、予想以上の出来で文句をつけるところがひとつも思いつかない。
良かったところが多すぎて上げるとキリがないが、いくつか記載。
①上映時間がこれ以上ないほど完璧。長すぎず、短かすぎず、場面の切り替わりのキレが良く、大袈裟でなくムダなシーンは1秒たりとも存在しない。30分刻みのシリーズ作品にしなかったのが英断。原作にどれだけ忠実なのか判断できないが、TVアニメでなく、続編を予感させるものでもなく、1本の映画として完成度が非常に高い。音楽も映像も素晴らしいので映画館で観るべき作品となっている。
②映像が凄まじい。全速で走るシーンが全く違和感なくリアル。実写をアニメに仕立て直す技術や、中盤の雨のシーン、必死の形相や泣き顔が作画崩壊寸前の絶妙なヘタウマ感で表現される絵画的なタッチ。それも技術を見せつけるためではなく、徹底してストーリーと登場人物の心象描写にリンクしているので、悉くハマって心動かされる。
昨今のバトル系アニメやアイドル・ファンタジー系アニメとは全く別の、日本人らしい、古くて新しい(?)独自のアニメ表現に終始圧倒された。
③ランナーのキャラ設定が魅力的で、そのキャストも皆適役ぞろい。話題作りのためのタレントにわか声優ではなく、主役のふたりは本人がモデルみたいにイメージ通りで全く違和感がない。この作品唯一の違和感といえば、津田ケンの役柄が現役ランナーだったこと。あの渋さなら、絶対鬼コーチ役とかだと思っていたので。マイナス要因では全然ないけど驚きました。
また、逐一沁みるセリフが多く、自分のような60過ぎの年代にも響く名言揃い。20代の魚豊先生、本物の天才。最後の方はずっと涙がにじんだ状態でスクリーンを観ていて、エンドクレジット髭ダンの「らしさ」にとどめを刺された。大好きな作品です。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。