劇場公開日 2025年9月19日

「「諦めの悪い男」が最後に手にしたものとは…+原作との比較」ひゃくえむ。 しーぷまんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 「諦めの悪い男」が最後に手にしたものとは…+原作との比較

2025年9月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

「原作未読」勢です。
魚豊先生作品は「チ。〜地球の運動について〜」のみ漫画版読破しました。
(チ。のアニメ版は未視聴です)

いや〜面白かったです!
トガシという才ある人間が挫折と逃避を繰り返しながらその度に「走る事に魅入られた自分」を見つめ直し再起するという、
波乱に満ちた…でも誰もが彼の人生の一端は経験するであろう「敗北」の味をロトスコープ技法による映像でシビアに、リアルに、色濃く見せてくれます。

また、
「栄光を知りながらも何度も打ちのめされてきたトガシ」
と、
「トガシに見出され、財津という天才に答えを提示されたが故に走る事に取り憑かれてしまった小宮」
の対比や彼らが辿り着いた先の景色を見た時の表情、
脇を固める仁神、財津、海棠といった才人達が最終的に見出す「走る事の意味」や彼らが持つ「走りに対する哲学」も個性的で非常に胸を打たれるもの、「なるほど!そういう考え方もあるのね!」と膝を打つものと様々でした。

エンドロールで流れるOfficial髭男dismの「らしさ」もトガシ自身、あるいはトガシと小宮の対比というダブルミーニングにも取れる上手い塩梅の歌詞で目頭が熱くなる曲でした。

強いて言えば気になったのは染谷将太さんの演技でしょうか。
「走りに取り憑かれていくうちに段々と光を失っていく」という非常に難しいキャラではあるのですが、
彼が「語る場面」だと滑舌が気になりました。
染谷将太さんの実写映画での演技はわりとイロモノであっても「リアルなカジュアル感」が魅力だと思ってるので、
「ボソボソと喋る寡黙なキャラ」とは食い合わせは悪かったかもしれません。
ただ、所々で光る演技もあったので某恐竜映画の主演みたいな絶望的な棒読みとは無縁でした。

あとは原作読んだ人からすると「端折られてる名シーンも多い」と聞きます。
100分に収めるために仕方なかったのは分かるんですが、
欲を言えば「あのキャラとかこのキャラの活躍もっと見たかったかも」と私も思います。

総じてゴア表現や変な癖もない(強いて言えば小学生編以外はほぼロトスコープ技法ってとこかな?)作品なので、
予習も要らずにオススメできる一作でした。

2025年9月20日追記:
映画鑑賞後、原作漫画(新装版)を読んできました。
確かに結構端折られてるのですが、中盤に主人公2人が直面するとある「理不尽」な展開をオミットした事で、
走る動機が「走りに魅入られたから」一本に集約されて、
「2人が違う切り口から走る事にのめり込んでいってしまう」って物語の核に大きくフォーカスを当てて「先鋭化」してると思いました。

なので「真剣(ガチ)って言葉前半に仕込んでほしかったなぁ」とか、
「仁神の葛藤と活躍がもう少し見たかったなぁ」
とか細かい事は言えますが、
100分に収める為にかなり良いアプローチだったんじゃないかと思います。
心情描写とかも先鋭化した事で演技とアニメーション演出で省略しやすくなったしそこも成功してると感じます。
(漫画ならギリ許せるモノローグの長さはアニメだと冗長に感じたでしょうし)

しーぷまん
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。