宝島のレビュー・感想・評価
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本土復帰するまでのコザの25年間
「アキサミヨー」戦後すぐ、コザで住民や自分たちが生き延びるために悪ガキたちが基地泥棒を繰り返していた頃の英雄譚。映画では裸足と汗や日焼けにはこだわっていたらしい。
SONY、東映、電通。
真藤順丈さんの原作(講談社刊)もaudibleで松本健太氏の朗読で拝聴しました(合計18時間超)。
沖縄の史実を踏まえたアクション活劇。主要登場人物たちはいずれも原作から。
(VXガスとヤクザとフェンス越しの基地が原作の裏テーマとも言えるのだけど三時間かけた映画なのに説明描写がもの足りなかったように思う。)VXガスが、そもそもわかりにくいのだから、怖さが伝わりにくいのでは? 仮に毒物が「サリン」だとしても、小説上ならともかく、映画では緊張感は出しにくい。缶に何が入ってるかわからないのだから。登場シーンの少ないレイをいきなり出してきて、ほいよ、VXガスを作った、これから基地で脅すために使うよ、という唐突な計画説明は、脅迫相手(グスクや米軍のお偉いさんたち)に信用性が低い。これは原作でもそうだったと思うが、映画でも唐突にやってしまったためにせっかくのクライマックスが不自然な展開に。
米軍側に、毒ガス技術者が誘拐されているので焦りがあるとかを、あらかじめもっとちゃんと見せないと(バーの黒人が英語で語ってはいたが)。あとリアルには、あの程度のマスクでどうにかなるものではないだろう(レイの自爆テロだったとしても)。レイの「計画」の信憑性が低すぎるので、そのあとの白骨死体のある洞窟でのウタによるオンちゃん逃亡生活の長い語りも信憑性が薄まっていた。残念。
コザ騒動(「コザ暴動」とも。言い方でぜんぜん変わる)は、1970年のクリスマス直前に、コザで起きた現実の事件であるが、対アメリカ軍相手の騒動であったにも関わらず、死亡者はゼロだったという(負傷者、逮捕者あり)。
とは言え映画で再現していたような混乱は起きていたらしい。ただ、映画の直後の基地内の出来事は小説のフィクションなので、もし本当に死んでいたら死者一名ということになってしまう。
いま、これを主題にした映画製作が可能だったことが単純にすごいとは思う。やりすぎないように、史実を踏まえて再現したのだろうけれど、迫力はあった。仕方ないのだろうが、基地内の描写が非常に少なかった。
基地に侵入できた時代があったのは確かだろうから。
クライマックスの1970年というと、大阪万博があった年で、有名人でいうと阿部サダヲさんとか岡村隆史さんが生まれはった年で、比較的近年なのである。
であるけれど、皆忘れている(生まれてない方も多かろう)。アメリカはベトナム戦争をやっていた最中である。ベトナムでは「地獄の黙示録」や「プラトーン」のようなことがあった。
アメリカ軍も狂気に満ちた戦争にはまっていたのだと思う。ただ犯罪容疑兵士たちの処分は甘く、基地の町の人々の人権はとても軽んじられていた。
そもそも沖縄は、明治維新で日本に組み込まれたあと、昭和になって米軍の沖縄上陸戦で、地上攻撃や自害を強要されたなどの悲惨な目に会い、戦後も基地の島として米軍統治下での混乱状態がながーく続いたということなのだと思う。
若い人たちにこそ、見るべき映画だと思う。昭和のオキナワ史をここから学ぶのもありだろう。コザ騒動と本質は違うのかもしれないが、本土、東京では1969年には東大安田講堂攻防戦もあった。東京のど真ん中の事件なので有名だが。
グスクだけを主人公にするなら、リュウケイ(琉球警察)の雰囲気とか、原作通り中盤で警察やめて「探偵」になっていたりした方がコミカルで妻夫木聡の雰囲気にも合う。
原作と比べると、瀬長亀次郎氏に関する言及とか、語り手の主観みたいなところはことごとく取り除かれていた気がします。それでもラスト近くの基地内でのVXガスのやり取りなど原作とは少し異なる形ではありますが、なんとかおさまっているのにこの映画の運命を見ました。(役者陣に苦労のあとが見えました。)
あの日突然消えた「オンちゃん」が、どこまで行って死んだのか(まだ生きているのか)の謎をずっと探っていたのが弟のレイと、刑事になったグスク。それを体現しているのがウタと呼ばれるハーフの子供(劇中の数年で若者に育つ)。ウタを主人公にしてウタと義父オンの生涯を知ることがたぶんこの原作の隠しテーマだろう。でももっとフロントにだすべきだったのかも。(最後に飛び出して射殺されるという悲しい結末)
御嶽(のような場所?)で生まれた赤ん坊のためにずっとこの物語が語られてたのだから。(そもそもの着想がどこで湧いたのか気になりますが)どうせやるなら、ハーフの子どもたちをほかにもたくさん出すべきだった。現代に作る意味はそこにあるのに。(すこし違うが「スワロウテイル」みたく)
映画版では、PG12にはなっていたけれど、そこまで残酷な場面はありませんでした。もちろん人によるのだが。たとえば、小説版(朗読版)では戦果アギヤーたちは武器を収奪し、それを使用しながら逃走するのだけれど、映画版では武器は一切奪っていないことになっている(なっていたと思うが、彼らは撃たれていた)。
コザの歓楽街がわりとメインででてくる(つまり嘉手納基地の恩恵を一番受けているということ)のだが、原作ではヤクザ、不良、政治の話がてんこ盛りなのに対してその辺はスパッとカット。
映画「宝島 HIRO'S ILAND」
映画を観た後では、オンちゃんは、永山瑛太、ヤマコは、広瀬すず、グスクは妻夫木聡、レイは窪田正孝を想起させるようになりました。
かなり駆け足で物語に入ってゆくものの、ずっとそのまま駆け足で終わってしまった感あり。三時間超はそれほど長くは感じられないものの、半日はまるまる潰れるのだから、大作には大作なりの責任がある。
映画と原作は異なることも踏まえてはいますが、音楽も良かったし、美術や衣装さんも頑張っていたことがとてもわかるのですが、世界中の子どもたちにみせたいのなら、原作で一番弱点の部分、「ハーフの孤児のウタの生涯」「なぜオンが英雄なのか」「少年時代に泥棒だったグスクが警察に入って苦労したり得したエピソード」「リーダーの女だったヤマコが独身を貫いて教師になりさらに強い女になってゆくエピソード」「兄をさがすために悪石島まで渡って兄が生きた痕跡を見つけたけど首飾りをもらって愕然としたエピソード」などをしっかり書いてほしかった。原作を映画でやればそれぞれが三時間ずつやってもいいくらいの分量があると思う。
九月公開の理由がなぜだかわからないが、沖縄戦終結の六月にするか、全国が終戦に向かう八月にしとけばよかったのかも。あとは思い切って冬にするか。とにかく尺も公開も伸ばしすぎだった。コロナ等での延期につぐ、延期があったらしいけど。
そろそろ起きれ
主役級の俳優が何人も出てくる大作。再現された当時のコザの街並みや用意された数々のクラシックカー、小学校に墜落する輸送機、コザ騒乱、各シーン見応えがあった。広瀬すずが立つ教壇の後ろの黒板に書かれた字がとても美しかった。そのシーンの10分後には米軍機の墜落事故で学校ごと燃えてしまったが。そして、妻夫木聡はいつの間にか眉間のシワが似合う俳優になった。
それにしても、主役3人と米軍が必死で探していたオンちゃんは何年も前に海岸で野垂れ死にしてるし(確かに英雄ではあったのだけど)、基地内の従業員に箝口令を敷き、軍の記録を消去してまで隠蔽していた秘密というのが、米軍高官のやんちゃな下半身の不祥事だったというのが、なんともしょうもなくてバカバカしくて悲しくて腹が立った。
どうにもスッキリしないモヤモヤした終わり方だったけど、これはスッキリしてはいかんのだろう。米国の意に沿わない首相の首はあっさり飛ぶし、羽田発着便の航路は遠回りさせられるし、パレスチナの国家承認は取り下げさせられるし、ほんとに米国から国家承認されてるのかなと疑いたくなるような国に住んでいる身としては他人事ではない。モヤモヤをモヤモヤのまま考え続けないといけない。なんくるないで済むか、そろそろ起きれ、はわれわれ観客に向けられたメッセージだと受け取った。
あと、世間を騒がせている排外主義者の皆さんにはホンモノの外人特権がどういうものか見てもらいたいものですね、この映画で。
何故だか乗り切れず
舞台や雰囲気は本当に良かったが
エキストラに何度も現実に引き戻された気もする。
邦画に出てくる外国人の演技の下手さってなんなんだろう。
まず冒頭の沖縄基地でオン達を追いかけてくる軍人達の
台詞の違和感や、気質の違和感を感じた。
安っぽい!
コザ騒動の映像は
正直ジョーカーのラストの暴動シーンを超えていたと思う。
だが、エキストラが、、、
怪我しないように?みたいな、
よく分からない動きをしてる人が多かった気がする
軍人もコザ騒動のエキストラも
PS2のゲームのモブキャラみたいというか
まぁ動いてればいいっしょ!みたいな感じが凄くて
沖縄の方言が聴きづらいって人も多いけど
そこはそう言う声が上がるのも想定の範囲内で
批判覚悟でそのまま行ったんじゃないかなと思う。
これは熱意と捉えて私は評価したいです。
ただ、この様にお金もかけて、すごい熱意で作ったのは伝わってくる分
エキストラとかもう少し拘って欲しかったと思いました。
そしてストーリーが、、、
原作があるから仕方ないと思うけど
オンちゃんの事実が、えーって感じでした。
最後が思った程感動できなくて。
演出も日本映画独特の冗長なシーンも多く
謎の効果音と共に意味深な風景を映すシーンとか
多分いらないですね。
この映画のダメな部分は、
国宝では逆にとても評価できた部分で
観客にも泣かされましたし、
日本でも表現できるところではあると思うので
今後洗礼されていって欲しいですね。
それでも
妻夫木さんは本当にいい役者だなって
レイとグスコの滑走路でのやり取りで思った。
ヤマコを総理大臣にする!って言った時の
妻夫木さんの顔が観てる観客と同じ顔してて、すごい心が通じた気がする。
いい演技するなーって思いました。
主役陣の演技はとてもよかったし
最初にも言ったように雰囲気とか舞台はとても良かったからそれだけでも観るべきとは思いました。
惜しい!ワクワク感が欲しかった
戦後、本土復帰前の沖縄を舞台に、若者たちがたくましく生きていく。宝島というタイトルが意味する隠された宝とはなんだろうか?と、勝手にワクワクしながら、想像をたくましくしていました。役者さんの顔ぶれも楽しみでしたし!
見終わったあとの感想は、うーん惜しいなぁ、なんでそうするかなあ、というものでした。ワクワクさせてもらえなかった。
この映画のストーリー的に、オンが既にいなかったというのは壮大な肩透かしで、終盤が盛り上がりませんよね。
いやいや原作がそうなっている、ではなく、映画の流れとして、の話です。
アメリカ軍相手にケンカを売るのは爽快ですし、暴動シーンも迫力ありますが、暴動シーンの描き方に共感を覚えにくく、そこまでやっちゃダメでしょうみたいに見えてしまいました。
基地に忍び込むシーンもハイライトな訳ですから、もう少し、やってやれ〜って共感したくなるように描いてほしかったですね。せめて3人の共同計画であってほしかった。
それにしても妻夫木聡の若々しさ!
広瀬すずとカップルで全く違和感ないのは、星3つくらいの価値ありでした。
光るセリフもあるのだが
みんなで、アメリカ軍所有の車をひっくり返して気炎を吐いても、結局は届かずに潰されてしまう人々の思い…。
車の上に立って叫ぶ瀧内公美演じるチバナも、通りを泣き笑いしながら歩く妻夫木聡演じるグスクも、共にまとっているのは、どうしようもない哀しさだ。
基地内でのグスクとレイのやり取りは刺さった。
だが「予定にない戦果」の答えを見せただけの、その後のラストエピソードの展開には、個人的に気持ちが離れてしまった。
前述のグスクとレイのやり取りで浮かび上がらそうとした「人間らしさとは何か」や、金門クラブでの、グスクの「経済がよくなれば犯罪が減るっていうが、米軍のように金のある奴らがなんであんなにたくさん犯罪を犯すのか」という問いなど、原作にはない光るセリフもあった。
だが、あのラストの展開にしたことで、今作が決定的に欠いてしまったのは、原作が貫いていた「英雄」とは何かという柱だったと思う。
妻夫木聡も、窪田正孝も、広瀬すずもとてもよかったからこそ、残念でならない。
<追記>
だいぶ前に観た予告編で、「たぎれ、日本。」の言葉が出てきた時から心配していたが(いつの間にそのコピーは見かけなくなったが)、宣伝部は、そもそもこの作品にそうした煽りコピーをあてて、誰をターゲットに、どんなメッセージを伝えようとしていたのだろうというのも気にかかる。
本当の「宝」
まず初めに、わたしはレビューはどこまでいっても個人の感想に過ぎないと思っている人間です。なので、これから書くことも他愛もない一個人の感想を個人的な理屈で書いているに過ぎないと思っています。
そういう人間が書いていることをご承知の上で、それでもお読みになっていただけるのなら幸いです。
まず結論から書くと、「やっぱり正解のない話だったな」というのが感想です。
これは別に悪い意味で書いているわけではありません。沖縄の米軍問題は今も解決していない問題であり、根が深く、本当の解決にはまだ時間が掛かってしまうのだろうな、と漠然と思っていました。なので、取り敢えず「宝島」という題名だけ見ても絶対に明るい終わりにはならないことは分かっていましたし、ティザーポスターを見ても、予告を見ても、それは一目瞭然でした。
そのような大きなテーマをどのように物語として成立させているのか、期待して観に行きましたが、期待どおりだったところもありつつ、やや期待外れと思えたところもあり、上記の点数になっています。
物語は、第二次大戦直後の沖縄を舞台に、妻夫木さん演じる主人公の刑事「グスク」が、かつて米軍基地で行方不明となった永山瑛多さん演じる「オンちゃん」を探していく中で、窪田正孝さん演じる「オンちゃん」の弟「レイ」が絡んでいる企みに巻き込まれていくというものだと思います。そこに幼馴染であり紅一点の広瀬すずさん演じる「ヤマコ」も同じく巻き込まれていくということで、この映画は3人の群像劇となっていると思いました。
舞台が第二次大戦後間もない米軍占領下の沖縄から始まり、日本へ返還される辺りまでの十数年間を描いているのですが、描かれているのは、「沖縄は米国のものでも日本のものでもない」という叫びであり、自分たちのアイデンティティを取り戻したいという沖縄県民の切実な想いだったように思います。特に「レイ」は反米感情だけでなく、自分たちを政治的に利用している日本政府への不信感も強く、明確でした。逆に、抗議デモや集会活動など言葉で米軍の撤退を訴える「ヤマコ」は、気持ちは同じでも方法は至極真っ当で大人です。主人公の「グスク」はその中間を行き来しており、とても分かりやすい人物造形になっていました。それでも、3人とも米軍や日本政府への怒りと憎しみは同じくらい募っており、それらは沖縄県民すべてのものであるようにも描かれていました。
良いところだと思ったのは、まず①「頑張って平等な目線で描いているところ」だと思っています。どうしても、反米感情や反政府的な描き方になってしまうところを、どうにか頑張って米軍駐留による特需で生き永らえている人(ピエール瀧さん演じるヤクザの元締めっぽい人とか歓楽街の女性など)を描いたり、米軍基地内部にも人道的な倫理観を持った情報部の人間がいることを描いたりするなど、あまり思想の押し付けになり過ぎないように配慮している印象を受けて好感が持てました。また、反米感情の強い「レイ」は序盤、高級車に乗っている訳ですが、それも嫌悪するヤクザの元締め(つまり米軍特需の恩恵に預かっている人)から貰ったお金で得たものであるところなどは、何とも皮肉だな、と思いました。
次に②「言葉による感情の説明がくど過ぎないところ」も良かったと思いました。特に終盤、米軍基地で「レイ」たちテロリストの企みを阻止しようと「グスク」が対峙した際に思想の言い合いになるのですが、そこも割と自然に作られており、わざとらしさがなくてすんなり登場人物たちの感情に共感できました。
あと、当然ではありますが③「物語が良いと思えたところ」もあります。この物語は単純に米軍に占領されて好き放題されている沖縄県民たちの苦境を訴えているだけでなく、戦後民主主義を掲げた日本がどのような外交をしてきたのかも想像できる教養にもなっていますし、何より、「グスク」を中心とした3人が「オンちゃん」という消えた英雄(つまり過去の希望)に囚われ続けているという悲劇も描いています。つまり、単なる「昔話」だけではなく、今にも通じる人間ドラマにもなっていると思いました。ラストの夜の浜辺で「オンちゃん」の白骨死体を見付けるまでの流れも、「オンちゃん」が命懸けで守った「宝」を、「レイ」の暴力による暴走が殺す、という皮肉な結末となっており、暴力の無常さや報われない登場人物たちの気持ちなど、現在の沖縄県の現状を映し出しているようで好感が持てました。また見方によってはその「宝」の存在自体が米軍のスキャンダルであり、それを「成果」としているところも、なんだか皮肉だな、と思った次第です。
もちろん、妻夫木さんを中心とした役者さんも全員超一流で一気にこちらの感情を引き寄せる演技を見せてくださいます(「ヤマコ」が「オンちゃん」の形見である首飾りの匂いを嗅ぐように顔に寄せる時の表情などは狂気じみていて好きです。)し、演出についても、遠くの「光」(夜の花火、回想の中に立つ「オンちゃん」に当たる光、暴動の中で上がる閃光など)を「手の届かない希望」として描いているように見える描写も、終わりのない苦しみを抱える沖縄県民の気持ちを代弁しているのかな、と思い、しつこくないけど分かりやすいな、と思った次第です。
ここからは受け付けられなかったところとなります。まず①「3時間以上の上映時間は長く思ってしまったところ」がありました。別に単に時間が長いということでなく「長いと思ってしまった」ということです。つまり、上記したとおり、途中で物語が間延びしていると思う時間があったということだと思います。逆に言えば、とても丁寧に映像化しているという証左でもあるはずなので、感覚は人それぞれですが、正直、「グスク」の家庭のシーンはなくても良かったように思いました。特に物語に絡んでいないし、彼の心の拠り所になっているとは思えない作劇だったためです。
あと、個人的にはガスマスクの件など「誰が何のためにお金を掛けて配布したの?」という疑問が解けないまま終わった感が否めません。きっと、どこかでちゃんと答え合わせがあったはずなのですが、良くも悪くも群像劇なので視点が行き来していて良く分からなくなりました。あそこに時間を割くのなら、「レイ」たちテロリストがVXガスを作成する件を入れて欲しかったな、と個人的には思う次第です。分かっていたとはいえ、3時間以上も映画を観ている者としては、どこかで「意外な真相」みたいなものを期待していたところもありまして、なんだか色々と絡み合った割には結局「オンちゃんはとっくに死んでいた」という当たり前の結末に落ち着く結果となり、それなら余計に細かな疑問も解消できる3時間にして欲しいとは思いました。
次に、これは①にも共通することかも知れませんが、②「製作費を25億円掛けている割に、ダイナミックなシーンが少ない印象」も持ちました。わたしは、個人的に映画を観る理由の一つとして「大きな画面で迫力ある映像を見て、リッチな音響設備で迫力ある音を聴く」というところがあるのですが、例えば飛行機が墜落して小学校が燃えるシーンなども主人公たちの表情を映しているだけで終わり、次のカットでは既に堕ちて大惨事になっているところが映し出されているので、いまいち臨場感や悲劇性が伝わりませんでした。同じく、最後の暴動シーンももっと遠くから多くの民衆が車に群がっているように見せてくれると、それだけ県民の怒りも伝わるように思い、片手落ち感を勝手に感じました。音響は良いと思えただけに、もっと映像でも魅せて欲しかった印象を受けました。演出意図もあるでしょうが、リッチな映像も、3時間を飽きさせないために必要なのではないかと思いました。
あと、良くもあるのだろうと思いつつ微妙だったのは「ちゃんと沖縄の方言を使っていたところ」でした。これも沖縄のアイデンティティを描いていると思われる本作では仕方ないことなのですが、いっそのこと字幕を付けても良かったように思いました。
結末については、「オンちゃん」が命懸けで守った「予定外の成果」=「米軍高官と日本人女性との間にできた非嫡出子」である少年「ウタ」を、「レイ」の暴走が切っ掛けで失ってしまうというかたちで終わりを迎えます。「オンちゃん」の優しさを感じるとともに、その「宝」であったはずの少年「ウタ」の呆気ない最後、その「ウタ」が命懸けで守ったのは皮肉にも誰よりも死に近い場所で生きてきた、「オンちゃん」の弟である「レイ」だったという事実もスパイスの利いた結末でした。そういえば「オンちゃん」は冒頭で「欲張るな。生きて帰ることが最大の成果だ。」と、ちゃんと結末について語っていましたね。
一方で、ラストシーンを見ると、結局、誰よりも「オンちゃん」(=「今はない希望」のような存在)に引っ張られているのは主人公の「グスク」であり、怒りにも似た表情で浜辺に背を向けるところなどは、個人的に、半ば憑りつかれて死に急いでいるようにすら思えました。そう思うと、彼が日本の政府関係者に監禁・拷問を受けている際に見た夢で「オンちゃん」から首飾りを受け取るところなど、「意志の継承」であるとともに「呪いの伝播」にも思えてしまい、人の想いの表裏一体性を感じさせると思いました。
という感じで、わたしのレビューを終わりにさせていただきます。
ご拝読いただき、誠にありがとうございました。
ガマには今も戦没者の遺骨が
重い映画でした。ヒーローだったおんちゃんは、やはり。。
原作は未読、事前情報無しで映画館に足を運びました。遅い時間帯のせいかお客さんは少ない。
だが、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝らトップを走る俳優陣の演技は素晴らしい。特にうちなー言葉は、わたしは解らないのですが、沖縄の人から見て完成度はどれ程だったでしょうか?解らないながらも、かなりのレベルではないかと思えました。
色々と語りたいのですが、たいした知識を持たずに書くのははばかられる程の重厚さでしたね。
ラストでみんな死んでしまうのかと、はらはらしましたが、撃たれたウタ意外は皆、生きて苦しみを背負っていく。。おんちゃんが救ったウタ少年は助かっても良かったのではないか、、。
手を組んでいた米軍のアーヴィンと通訳?の小松(山本蒼)は、信用できる者だったのでは?
このあたり原作ではどうなんだろうか?原作にも興味が湧きます。
わたしの稚拙な感覚では、グスク妻夫木に暴行を加えた主犯のダニー(小松より立場が下らしい)が、暴徒と化した街人にボコボコにされたであろう場面が、すこしスッキリしたところでした。
沖縄の声を聴け
3時間の『国宝』の大ヒットは、『鬼滅の刃 無限城編~』以上に日本映画界への意義は大きい。
映画は時間やジャンルは関係ない。良きものにはちゃんと客が入る事を証明したからだ。
よく長尺映画に難を示す声が多い。何だかがっかりする。今の時代、配信でドラマシリーズやアニメシリーズを一気見し、3時間なんて悠に越える。なのに、何で映画だけ長いなんて…。
そりゃあつまらない映画だったら拷問だが、面白ければこの上ない充実感と見応え。
『風と共に去りぬ』『七人の侍』『ベン・ハー』『ゴッドファーザー』『ダンス・ウィズ・ウルブズ』…。『タイタニック』もこちら側に入れておこう。往年の名作は長尺が当たり前だった。
近年(2000年代)も『ロード・オブ・ザ・リング』『愛のむきだし』『ドライブ・マイ・カー』『RRR』など面白い作品が多い。
長尺は名作の宝庫!
『国宝』の大ヒットがそのきっかけになってくれたら…。
そして、もう一本…。
終戦80年。
日本が今日の平和や繁栄に至るまで幾多の努力や困難があったが、最も激動の80年を駆け抜けたのが、沖縄。
今沖縄と言うと、日本のハワイのような南国。
夏シーズンは台風の通り道だが、年間通して比較的温暖な気候。
本土とは違う雰囲気、文化、歴史。
沖縄料理も人気。今年新たなアトラクション施設もオープンし、日本屈指の観光地。
沖縄出身の有名人や人気スターも多い。
陽気で、方言“なんくるないさ~”が耳に心地よい。
私も是非一度は行ってみたいのが、沖縄である。
そんな沖縄が今日の平穏を手にするまで、どれほど壮絶な受難に晒されてきたか…。
おびただしい血が流された沖縄戦。実に、沖縄人の4人に一人が戦死…。
戦後長らくアメリカの統治下に。1972年にようやく日本へ返還されるも…
沖縄県民と米軍の確執、米軍基地問題…。さらには沖縄と本土の関係…。
何故こんなにも理不尽を…?
しかし、沖縄も堪え忍んでばかりじゃない。抗う者たちがいた…。
米軍基地から物資を奪い、困窮する沖縄の民に分け与える鼠小僧のような若者集団。
“戦果アギヤー”。リーダーのオン、親友のグスク、オンの弟レイ、オンの恋人ヤマコ。
危ない橋を渡りつつも、沖縄への迸る思いを胸に、熱く生きていた。
沖縄に真の平和が訪れるまで、まだまだ闘い続ける。
そう皆を鼓舞していたオンがある日突然、姿を消した…。
やがて、グスクは刑事に。ヤマコは小学校教師に。レイはヤクザに…。
各々の道を歩んでいたが、ずっとオンの行方を探していた。
そんな彼らが直面する沖縄の受難、そして真実とは…?
グスク、ヤマコ、レイ各々の今と、オンの面影がメインストーリー。
グスクが刑事になったのもオンを探す為。かつてオンと共に“戦果アギヤー”として名を馳せた彼に接触してきたのは、アメリカの諜報員…。
沖縄の子供たちの為に学校を造る。そしてヤマコが先生になれ。オンとそう約束したヤマコにも未曾有の悲劇が…。
一応真っ当な道を歩んだ二人に対し、荒々しい生き方のままのレイ。刑務所に入ったり、悪い連中とつるんだり揉め事を起こしたり…。
ここに様々なエピソードが交錯する。
浮浪児のウタ。その出生は…。
グスクが追う婦女暴行殺人事件。
米兵ばかりを狙った事件。
米空軍機が墜落。墜落した場所は…。
50年代~70年代、沖縄で起きた県民と米軍の諍い…いや、対立や争い。遂には暴動にまで…。
フィクションとノンフィクションを絡ませた大ボリューム。
妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら今の日本映画界を代表する実力派たちのアンサンブル。とりわけ危うさを孕んだ窪田正孝が存在感放つ。
スケール感のある映像。美術が素晴らしく、あの時代を知らない者でもタイムスリップしたかのように。映像や美術であの時代の混沌をヒリヒリ感じる。
かなり痛烈な反米色は賛否分かれそう。現独裁者が見たら激怒しそうだが、分かり合えば…というメッセージも受け取れる。
並々ならぬ覚悟と意欲で挑んだスタッフ/キャスト。その圧倒的本気度、熱量の191分!
大友啓史監督にとってもキャリアの一つの到達点と言えよう。
間違いなく今年の日本映画の力作の一つ。
そう言った意味では『国宝』と並ぶが、果たしてヒットはするだろうか…?
『国宝』は万人受けしそうにない題材ながら、特異世界を見易くストレートに描き、見る者を引き込む魅力と見応えがあった。
本作もメッセージはひしひしと感じる。
が、あの時代の混沌を表したせいか、話がちと分かり難い。
沖縄特有の方言で聞き取りにくい台詞もあったかな…。
登場人物たちや話自体が何に向かっているか、迷走してしまった感も…。
彼らのように熱くがむしゃら…と言えば聞こえはいいが、大友監督、ちと力み過ぎたか…?
しかし、思いは伝わった。
訴えたい事は伝わった。
理不尽さに憤り、胸に突き刺さった。
小学校に墜落した米空軍機。生徒たちも死傷。が、起こした米パイロットは軍内部で軽い処罰を受け、罪を裁かれる事はなかった。そんな事、あってたまるか!
実際にもあった米空軍機の墜落。米兵によるレイプ事件…。
民間人が米兵の車に轢かれ、死亡。沖縄の怒りが爆発し、起きたコザ暴動。
それを誘発したのは何だ…?
何が沖縄をこんなにも混沌とさせた…?
米軍の傲慢。本土は見て見ぬふり。
本土返還が決まった時、多くの県民が歓喜。やっと自由になれる。本当に自由になれるのか…?
歓喜する県民とは裏腹に、レイは皮肉。アメリカの隷属に成り下がっている本土に返還されたって結局同じ事。
沖縄の自由は何処にある…?
一体誰が沖縄の声を聴いている…?
声を上げる者は居ないのか…?
冒頭、米軍基地を襲撃した戦果アギヤーが追われ、密林の中へ。
そこで聴いた謎の声…。
オンが姿を消した理由と深く関わっていた…。
散り散りに逃げ、オンは思わぬ遭遇をする。
赤子を出産し、息を引き取った民間人女性。居ない父親は言うまでもない。あの時代、米兵に孕まされた沖縄女性は多くいた筈だ。
この名もなき若い女性と赤子もその犠牲の一つ。
母親の方は息を引き取ったが、赤子の方は…。辛うじて息がある。
オンは人工呼吸で息を送り、歯でへその緒が噛みちぎる。
死ぬな!生きろ!
赤子は息を吹き返し…。
その赤子を引き取り、離島に渡ったオン。育てながら重労働。
ある時、米軍の攻撃が…。重傷を負ったオン。その傍から離れぬ成長した少年。木舟に乗って沖縄へ…。
その少年こそ…。
しかし彼もまたある修羅場で、米兵から被弾する。
傷付いた身体である場所へ。グスクたちも後を追う。
そこにあったのは…、白骨体。ウタが葬ったオンの亡骸。
姿を消したオン。いや、彼はずっとここに居たのだ。
まさかの真実。また俺たちの前に姿を現し、何かをしてくれると思っていた。
沖縄の運命や時代は変えられなかった。
しかし、繋ごうとした。
一つの小さな命を。未来を。
俺たちの思いを受け継いでくれ。
その命と未来も不条理に奪われ…。
レビュー序盤で“沖縄が今日の平穏を…”と書いたが、訂正したい。
沖縄は今も苦しんでいる。
沖縄は今も悲しんでいる。
沖縄は今も怒っている。
今も続く事件や理不尽に、沖縄の闘いはまだ終わらない。
沖縄の声を聴け。
中途半端。才能の無駄遣い
広瀬すずはかわいいし、妻夫木も窪田もいい演技。なのに安っぽく感じる。
まず長すぎる。国宝のように没入感がないので時間が長く感じる。
歴史映画かと思えばそうでもないし、なんならミステリーだったのか?はたまたタッチみたいな切ないラブストーリー感もある。感動も特にない。
中途半端な沖縄の方言、時々出てくる英語セリフ、劇中の音楽、ところどころ安っぽい。私はしらけてしまって楽しめなかった。
どうやったらこの映画を3時間楽しめるのか、映画好きの方に教えてもらいたい。
どうやったらこの映画を
好き嫌い分かれるかと
ものすごく前評判もいいし
キャストは豪華だし
テーマも戦後80年に沿っていて
沖縄の歴史を垣間見れて
期待大でしたが
自分はハマれなかった。
邦画あるある、台詞が聞き取りにくく
方言も難しくて冒頭数分で
「あ、無理かも」となった。
瑛太、妻夫木、窪田、3人主役と
言っても過言では無いと思います。
素晴らしい演技を見せてもらいましたが
物語が全然入ってこない。
なぜそんなにオンちゃんに固執してるのか
とか
原作を読めばもっと読み解けるのでしょうか。
途中離脱者が何人かいましたね。
(トイレじゃなく)
3時間を超える超大作
戦後の沖縄
アメリカ占領下での混乱と渾沌
リアルが描かれ、それらを知れた事は
よかったかな。
戦果とは何なのか?広瀬すずはどうしてあんなにかわいいのか?
戦果とは何なのか、それをひたすら考えさせられる映画でした。
略奪した食料でしょうか。
沢山あやめて、頭蓋骨の数を増やすことでしょうか。
独立を勝ち取ることでしょうか。
敵を追い出すことでしょうか。
差別を無くすことでしょうか。
戦いという激情が溢れる状況で、目的も手段もぐちゃぐちゃになって、分からなくなって、迷って、苦しんで。
そんな感情がヒシヒシと伝わって来ました。
また、暴動のシーンでは市民の不満が爆発。
沖縄の人達に感情移入していた自分も、熱い気持ちになりました。
しかし、カメラが上から見下ろす形でふっと引きになると、スーツやドレスなど綺麗な服装をして贅沢品のタバコを吸いながら暴動する市民と、ひたすらに市民の攻撃を盾で受け止める米軍の姿がありました。
そこでよぎったのは冒頭のシーンです。
スーツとはかけ離れた汚れた服装を主人公達がしていたことを思い出しました。また、そんな主人公達に米軍が銃の雨を降らせていた光景を思い出しました。
その光景の差に愕然としました。
いやーもうどうしたらいいのやら、感情の置き場所がなくなって溢れそうです。
オンちゃんはまさに英雄でした。
そんな激動の時代において、ウタの出生の秘密を知りながら「愛されて生まれたんだよ」と伝えていく姿は忘れられません。
その英雄オンちゃんが、戦果だと言ったのは、笑顔でハグしてくる広瀬すずでした。
私はそれが、この映画としての一番のメッセージと感じました。
しかと受け取りました。ありがとうございます。広瀬すずさんかわいかったです。
*
これらを踏まえて、私なりに戦果の意味を考察してみました。
それは戦果=宝島というものです。
沖縄を舞台にして、映画のタイトルが「宝島」となると、宝島は沖縄そのものを表しているように感じます。
もちろん、その意味も込められていると思いますが、私が注目したのはワンピース的な「宝島」です。
ワンピースでも、きっと存在する宝島を目指して人々は航海に出かけます。
そんな大航海時代で英雄になれるのは、やはり宝島にたどり着いたものです。
ただし、宝島はがむしゃらに航海してもたどり着けません。地図を広げて目的地を見定めて、ゆっくりでも確実に向かって行く必要があります。
つまり、最後の場面のセリフでもあったように「見失わないように」しなければなりません。
オンちゃんにとって、宝島の地図は広瀬すずでした。
広瀬すずがいてくれるからこそ、オンちゃんはちゃんと島にたどり着けるのです。これは冒頭の場面で、オンちゃんが自分が帰ってこれるようにが広瀬すずに残って欲しいと言っていたことにつながります。オンちゃんは、基地に略奪に行く訳です。それは広瀬すず含むみんなと笑顔生きていく為です。必要以上にものを取って困らせたり、まして、アメリカ軍に発砲するためではありません。ただ、激情の波の中では人は簡単に目的が見えなくなります。だからこそ、宝島の地図が必要なのです。
オンちゃんは広瀬すずがいたからこそ、目的を見失わずに行動できました。そして、オンちゃんは広瀬すずのことを戦果とも言っています。それは広瀬すずの存在が宝島の地図であり、その広瀬すずと笑顔で過ごせる日常、それがたどり着くべき宝島そのものなのでしょう。
また、最後オンちゃんは死んでしまったことがわかります。でも、オンちゃんの残したものは大きいです。宝島の地図を持たず、がむしゃらに激情の荒波の中を航海する人々に、宝島の位置を示したのですから。
本当に傑作だと思いました。最高でした。ありがとうございます。
ストーリーと沖縄おきなわの言葉が
長編の割に時間がそこまで長く感じませんでした。面白くてあっという間に時間が過ぎたという感じではなく、ストーリーがあまりなく、1シーンが長く描かれている感じです。2時間の映画の各シーンを長くした感じです。
あとストーリーが分かりにくいです。それにプラスして沖縄の言葉が何を言ってるのかよくわからないシーンが度々あり、余計にストーリーが分からなくなってしまいます。
キーになる英雄的な人が、特に英雄ぶりもなく簡単にヤクザにいいようにされてしまってるところとか、思わぬ収穫があったといいながら、その収穫も特に交渉材料などに使われる事もなく、孤児として普通に生きてたり、なんだかよくわからない映画でした。
CMはすごく面白そうだったんですけど、映画の内容は思った感じと全く違ってました。
希望だけは、支配させない!
宝島のポスターの中に「希望だけは、支配させない」・・・
この一言がこの映画を上手くまとめていると感嘆しました。
戦争を知らないほとんどの人間が、この言葉で何かを連想することが出来るだろうか?
やはりこの映画を見て正解でした。
それぞれの役者が、見え方の違いがあるけれど、希望を私たちに伝えてくれました。
ちゃんと沖縄の戦後の流れを丁寧に描こうとしているのが伝わってきましたし、それは原作がそうだったのだろうと感じました。
上映時間は全く気にならないほど、どのシーンも心に響きました。
特に印象的だったのが、オンちゃんの葬儀の時のヤマコの言葉
見守っていてね・・・
見失わないように・・・
私たち日本人は決して沖縄であった出来事を忘れてはいけない!
見失わないように・・・と語っているようでした。
多くの人にこの映画が届きますように。。。
上映時間の割には、描き込み不足と感じられるところが多い
終戦後の沖縄を舞台にして、殺人事件が起きたり、米兵を襲撃するグループが出てきたり、日米の諜報員が暗躍したり、米軍機が学校に墜落したりといった出来事が描かれるものの、表層的で断片的なエピソードが続くばかりで、失踪した「英雄」の行方を捜すというミステリーが一向に進展しないことには戸惑いを覚える。
どうやら、米軍基地への侵入時に、「予想外の宝」を手に入れたことが失踪の原因らしいと分かるのだが、その後も、主人公達が、「英雄」が島内に潜伏しているという情報を聞いて喜んだり、「英雄」が身に付けていたネックレスを発見して、彼は死んだのだと絶望したりと、一体どうなっているのかと混乱されられる。
米国の統治下における沖縄の社会情勢といったことも、本作の大きなテーマになっていて、刑事の台詞等から、米兵による犯罪がMPによって揉み消されている状況が理解できるのだが、その一方で、ラストのコザでの暴動へと繋がっていく沖縄の人々の怒りや憤りが、今一つ実感できなかったのは残念だった。
例えば、米兵の飲酒運転による被害者や、米軍機の墜落に巻き込まれた犠牲者が、「名前の無い誰か」ではなく、主要な登場人物であったならば、沖縄の人々が味わった苦難や屈辱とか、彼らが溜め込んでいた不満や鬱憤といったものが、もっと自分のことのように感じられたのではないかと思えてならない。
最後に明らかになる「予想外の宝」の正体や、「英雄」の失踪にまつわる真相にしても、軍事機密とか、政治的な陰謀とかとは無関係で、何だか拍子抜けしてしまった。
米国による統治や、米軍基地の存在に異を唱えるのであれば、むしろ、「毒ガスの存在を隠蔽するために、「英雄」は抹殺されたのだ」といった話にした方が、良かったのではないかとさえ思ってしまう。
百歩譲って、「予想外の宝」が米兵の隠し子だったとしても、皆が「英雄」を探していることを知りながら、どうして、彼が「英雄」のことを隠し続けていたのかという大きな疑問が残るし、「英雄」が、命を懸けて守り抜いたにも関わらず、その子が死んでしまうという救いのないエンディングにも納得することができなかった。
その他にも、人々にガスマスクを配ったのは誰だったのかとか、誘拐された米軍の化学者はどうなったのかとか、密輸の現場を取り締まるのに、わざわざ爆撃までする必要はあったのかとか、色々と釈然としないところも多かった。
ただし、「10年、20年後には、きっと今より良い状況になっている」という主人公の台詞は、「実際は、そうなっていない」という逆説的なメッセージとして強く胸に突き刺さったし、「今から10年後、20年後は、どうなっているのだろう?」と、沖縄が抱える問題とその将来に思いを馳せざるを得なかった。
戦後沖縄のすべてを描こうとしたが…
映画『宝島』は、沖縄の戦後史を真正面から描いた作品だ。その臨場感は圧倒的で、街をまるごと再現する美術の力と、なにより群衆を描こうとする姿勢に心を打たれる。デモや暴動で声を荒げる人々の一人ひとりに思いがあり、それが伝わってくるからこそ、切なく、やるせない気持ちにさせられた。
占領下で米軍基地を押し付けられ、米兵が罪を犯しても裁かれない理不尽。祖国復帰をめぐって島民の間でさえ意見が分かれ、分断されていく――沖縄そのものを描こうとしていることが伝わる。もちろん、沖縄すべてを描ききることは不可能だ。しかし、一人ひとりを描き、街を描き、時代を描くことで、その大きな挑戦を果敢に試みている。
やはりゴザ暴動はいちばんの見どころだ。車を囲みひっくり返し爆破することが、いたるところで起きる。『ジョーカー』のラストを思い起こす混沌とした場面。
ここにオンが降臨することを期待してしまう自分がいた。しかしそうはしない。誰か特定の人物が煽っての暴動ではないのだ。日本政府、本土の人たち、米兵に向けた怒り。煽っているジョーカーがいるわけではないのが、より恐ろしい。暴動を起こす人たちへの切なさも感じさせる。
キャスティングもすばらしい。オン(永山瑛太)、グスク(妻夫木聡)、レイ(窪田正孝)、ヤマコ(広瀬すず)、いい役者にいい役があれば、印象に残る人物になるのだ。オンの大きく包み込む存在感、葛藤し続けるグスクの姿、暴力性を体現するレイ、無力感を抱えるヤマコ――それぞれが確かにこの時代を生きた人々の足跡を映し出していた。
欠点がないわけではない。本筋として「オンがなぜ姿を消したのか」という謎はありつつも、各エピソードが十分に絡み合っていないように思える。そのため物語の先が気にならなかった。あとレイの行動がチープに感じられる場面もあった。終盤も、軽さが残ってしまった印象である。
それでも、この映画を観てよかった。
沖縄をないがしろにしてきた現実を、あまりにも知らなすぎたからだ。グスクとレイが思いをぶつけ合う場面、レイが暴力で変革を起こそうと決意するが、グスクはそれでも未来を信じ続ける姿を見せる。
なぜ争いが生まれるのか、なぜ力を持たざるを得ないのか、なぜ戦争は起こるのか――そんな根源的な問いすら感じさせるものであった。
20年間、一体何があったのか
1952年の本土の独立後も1972年までアメリカ施政下に置かれた沖縄で実際に起きた多くの事件を基に、寓話的なストーリーを絡めつつも、我々が気づいてなかった当時、そして今なお続く沖縄の人々の気持ちを描いた強烈な作品です。
もちろん、沖縄の人々も米軍との利害関係で一様ではない一方、安保条約下で返還交渉を進めていた日本政府関係者(ヤマトンチュ)の思惑もあり、見捨てられた感情が渦巻いていたのは無理もない事。
重いテーマに「戦果アギヤー」のリーダーのオン(永山瑛太)の失踪というミステリーを絡めた寓話ながら、名優陣の、特にグスクを演じた妻夫木くん、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人が素晴らしい演技で引っ張り、リアリティに溢れてました。
ただ、オンが強制労働させられたヤクザの密輸の根城が突如爆撃されたのは唐突感ありましたが… それも何か実際にあった事件がモデルなのかしら?
前述のとおり、主人公3人ともが名演なれど…おばあの葬式を済ませたヤマコがグスクとのひとときの幸せな会話から復讐の殺人後に逃げ込んできたレイに襲われるシーンまでの感情の起伏、変化を見事に演じたすずちゃんには役者の凄みを感じました!
今、観るべき映画ですっ
流石に長いしメリハリがない。
熱量のある映画だったが、3時間は流石にきつかった。
2時間ぐらい経ったかなって、思って時計見たらまだ1時間だった。国宝とは違う。
映画としてはエピソードをもっと取捨選択して、短くし、ストーリーラインをわかりやすくして欲しかった。物語りに起承転結的なメリハリが弱いせいか、途中何度か気絶した。
例えば、おんちゃんやうたの話が筋の中心なら、アメリカの諜報機関との交流とかいらなかった気がします。
暴力シーンや言葉で激しく罵るシーンが多くちょっとうんざり。カメラワークは良かった。あとbarで散々米兵の悪口言って、客として入って来たら、歓迎ムードとか面白かった。
沖縄の苦しみ押し売り的な感じが目立ちますね。
もっと自然な形で、静かな怒りを伝える方法はなかったか。あと一人中心人物に沖縄の人、入れた方が良くなかったですか。
これは疑問だが、おんちゃん、なぜ基地で生まれた子を一人で育てた?村のおばんに預けた方が良くなかった?
俳優さんはよかったが、中でもすごかったのは広瀬すずさん。出てくるだけで画面が華やぐし、視線、表情、言葉の説得力がすごい。あの時代を生きている感じがした。
熱波を放つ命の叙事詩
通常スクリーンで鑑賞。
原作は読了済み。
最初から最後まで、凄まじい熱気を放ち続ける圧巻の191分。俳優陣の演技の持つ熱量が、魂の迸るような強いエネルギーが、スクリーンから溢れ出して来て、心も体も呑まれた。
叙事詩的なストーリーが、あの頃の沖縄の空気感や人々の想いを鮮やかに浮かび上がらせる。沖縄の歴史は、奪われ、犠牲を強いられて来た歴史であると、登場人物たちの叫びが痛切に響く。それは決して過去ではなく今も陸続きの問題であると、観る者を傍観者でいられなくさせる力強さがあった。
当時の空気感を再現したセットのクォリティも妥協が無かったし、その時の温度や湿度まで伝わる。原作の換骨奪胎も絶妙だ。今年度ベスト級の大作であると自信を持って断言する。
[余談]
総じて見れば「原作の換骨奪胎も絶妙だ」と感じたが、端折り過ぎてしまっていることが気になる部分か無かったと言えば、嘘になる。
例えば、ダニー岸に拷問を受けたグスクが解放されるシーンである。原作では、命からがら脱出する展開で、かなりスリリングだ。
この時の拷問の苛烈さが原因でグスクはダニー岸へのトラウマを抱えてしまい、クライマックスのとある意外な事実へと繋がっていく。
だがこの要素がごっそり無くなっていたために正直がっくり来た。ダニー岸がグスクをあっさり解放した理由の説明も無いため、単に不可解さが残る。
*修正(2025/10/26)
役者よし!演技よし!熱量もよし!ただ惜しい……
191分の大作で、キャストの熱演や制作陣の熱量は確かに伝わってきました。妻夫木聡や窪田正孝、広瀬すずらの存在感は強く、日本映画としては破格のスケールです。
ただ長尺ゆえに冗長に感じる場面も多く、映画としてのテンポは緩慢。オンが命を懸けて守った“戦果=ウタ”が未来につながらずに終わってしまう展開も残念で、犠牲の意味が薄れてしまいました。埋葬のシーンも蛇足に感じます。
意欲作であることは間違いありませんが、観終わって残ったのは「惜しい」という感覚と同時に、結局この映画は何を一番伝えたかったのか、腑に落ちない思いでした。
全140件中、101~120件目を表示
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