宝島のレビュー・感想・評価
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「ナンクルない」では終われない―突きつけられる沖縄の現実
映画「宝島」は、真藤順丈の小説『宝島』を原作としています。この小説は第160回直木賞を受賞しており、沖縄戦後の混沌とした時代を背景に、若者たちの成長と葛藤を描いています。
1952年、米軍統治下の沖縄。物資を奪って困窮する住民に分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいました。グスク、ヤマコ、レイの幼なじみ3人は、英雄的存在のリーダー・オンと共に活動していましたが、ある夜の襲撃でオンが“予定外の戦果”を手に入れたまま消息を絶ちます。残された3人は、それぞれの道を歩みながら、オンの行方を追うことになります。
当初は沖縄本土復帰50周年の公開を目指していましたが、コロナ禍による二度の延期を経て、6年がかりでようやく完成しました。総制作費は25億円に膨れ上がったそうです。大友啓史監督ならではの映像美は見どころで、米軍統治下の沖縄の空気をリアルに感じることができます。
上映時間は191分。3時間を超えますが、不思議と冗長さはなく、むしろ物語を描き切るために必要な尺だと感じました。
今をときめく日本映画界の豪華キャストも圧巻です。窪田正孝さんの放つ狂気には目が離せません。ヒロインの広瀬すずさんは、正義感と澄んだ瞳で観客を惹き込み、息をのませます。主演の妻夫木聡さんは、クライマックスでの叫びや、緊迫感あふれるレイとのやりとりに胸を打たれます。そして永山瑛太さんの存在感も忘れてはいけません。誰もが熱演し、作品全体に重厚さを与えていました。
映画「宝島」で描かれているのは、遠い過去の話ではありません。ほんの半世紀前、この国のすぐ隣の小さな島で起きていた現実です。戦後、日本(本土)は東京オリンピック(1964年)や日本万国博覧会(1970年)など高度経済成長に沸きましたが、その陰で沖縄が辿った苦難の歴史をここまで詳しく描いた作品は、これまでになかったかもしれません。
「知らないことは罪深い」
映画を観終えたあと、そう感じる人は多いでしょう。
私もその一人です。知っているつもりで実は知らなかった大切な事実を突きつけられ、胸の奥がざわつきました。それは、語りたかったけれど語れなかった沖縄の人々の心の声を、少しだけ代弁しているように感じられます。熱く、鋭く、ときに優しく、ときに苦しく――その声は私たちの胸に突き刺さります。
そして、その苦悩は「現在」にもなお続いています。歴史の「声なき声」に耳を澄ませるよう、映画は静かに問いかけてくれます。
私たちが知る沖縄は、多くの場合「観光地としての沖縄」です。ソーキそばやゴーヤチャンプルといった食文化、年中温暖な気候、「ナンクルナイサ〜」と踊り明かす陽気な県民性。どこか気ままで陽気な人たちだと、勝手に思い込んでいました。
作中でもその陽気さは描かれています。戦禍の中でも踊りをやめない人々。独特の沖縄弁は、最初は耳に馴染みにくいですが、30分もすると自然と心地よく響きます。長尺だからこそ、この言葉のリズムや響きが当時の世界観を体現する大事な演出になっていました。
観終えて感じる県民性は、観る前より少し哀愁を帯びて映ります。
クライマックスでグスクが叫んだ言葉がすべてを物語っています。
「なんくるないで済むか!!」
「ナンクルならんぞーーー!」
怒りや葛藤を抱えながらも、それでも米国と共存し、生き抜くしかなかった当時の沖縄。そのやるせなさを、この「ナンクルナイサ(なんとかなるさ)」という言葉は含んでいるように思えました。
時は2025年、大阪万国博覧会。
日本は平和に見えますが、平和ボケしている暇はありません。米軍基地の割合は本土返還当時より増えており、日本や東南アジアの防衛のため、沖縄の米軍基地が抑止力として不可欠になっている現実からも目を背けてはいけません。沖縄だけを国際政治の犠牲者にしてはいけないと強く思います。
戦争を知らない若い世代にこそ、ぜひ観てほしい作品です。歴史を知るための重要な映画であり、未来に向けた沖縄からのメッセージでもあります。
自分の目で確かめてほしい作品
2度の延期を乗り越え、6年かけて作り上げた作品からは、何としてでもこの歴史を、メッセージを、現代の私たちに伝えたいという想いで溢れていて、何度も心が熱い想いでたぎった。
確かに3時間は長いと感じる人もいると思う。
歴史物は難しく、時代背景的にも重い内容だから腰が重い人もいると思う。
沖縄の方言がきつくてわかりづらいというレビューもわかる。
けれど、見ないで判断しないでほしい。
見て、知って、感じる想いは100人いれば100通りある。この作品は届けたい想いで溢れているから、それを自分の目と耳と心で受け取った上で判断してほしい。
私は本当に見て良かった。
同じ3時間作品の「国宝」「鬼滅」と比べたら、個人的には圧倒的に最後まで没入して見ることができた3時間11分だった。あっという間だった。
私はこれまでたくさんの戦争を題材にした作品を見てきたけれど、戦後のアメリカ統治下だった沖縄をここまで描いた作品は見たことがない。
だからこそ初めて知ることも多かった。
思えば沖縄は唯一日本で地上戦が行われ、4人に1人が亡くなるという悲劇に見舞われた土地だ。
それなのに、戦後も沖縄だけがこんなにも理不尽な悔しさに耐え続けていた。同じ日本なのに。
特に今回描かれた本土復帰前の沖縄は、ずっと怒りと悔しさとやり場のない思いで渦巻いている。
そんなぐつぐつと煮えたぎる思いが、クライマックスのコザ暴動で爆発する瞬間は圧巻だった。あのシーンは本当に自然と涙が出たし、その後の妻夫木くん演じるグスクと、窪田くん演じるレイの対話は、現代に生きる私たちへのメッセージに思えて胸に響いた。
綺麗事でもいい。私も信じたい。諦めたくない。
暴力に支配される生き物ではなく、トモダチを信じられる人間でいたいと思った。
今の私に何ができるのか。
このたぎる想いを未来に繋げていきたいと思った。
是非多くの方に映画館でこの作品のもつパワーを感じてほしい。
たぎれ、日本!!
沖縄の”感情”に触れる機会をもたらす人間ドラマの力作
戦後沖縄をこれほど一連の感情として見つめた経験はかつてなかった。その意味でこの物語は我々に191分の爆発的な感情体験をもたらしてくれる。私が何より唸ったのは、妻夫木演じる役柄を主役に据えているところ。人間的なスケールで言うと英雄オンちゃんに誰も敵わない。が、本作では彼の失踪によって梯子が外され、行き先や目標をなくした妻夫木はじめ3人こそが舵を握るのだ。実際のところ、戦後沖縄の右も左も分からない状況で悩み、生き抜き、世の中の底力となり得たのは彼らのような人たちだったのかも。傷だらけで葛藤しながらも希望だけは失わない。そんな彼らは、オン以上に共感すべき等身大の「思いをつなぐ」人たちだ。ハードボイルド的なディテクティヴストーリーの体を取りつつ、過去から未来へと貫く躍動と祈りすら感じさせる本作。実際の歴史写真に彩られたエンドクレジットに至るまで、歴史のダイナミズムと次世代への想いが詰まった力作だ。
堂々たる大作
堂々たる大作だった。コザ暴動に至るまでの、沖縄県民たちの怒りのフッテージが高まる必然性が克明に描かれていた。アメリカにも日本の本土にも苦しめられてきた沖縄の歴史、その中で翻弄された人々の生き様が色濃く刻印された作品だった。こういう骨太の社会をえぐるエンターテインメント作品が日本で出てきたことは素晴らしいことだと思う。
本土復帰前の沖縄を再現するためには、25億円かけるのは必然だっただろう。ここが安っぽかったり嘘くさかったりすると、本気度も伝わらないし、沖縄の人々の怒りも薄まってしまっただろうなと思う。
役者陣も本当にいい仕事をしたと思う。沖縄出身の俳優をもっと主要キャストに入れることはできなかったかとか、色々と思うところはあるのだけど、妻夫木聡をはじめ、出演した役者はみないい表情をしていた。特に個人的には窪田正孝の「野良犬」感がすごく良かった。危険な匂いをプンプンさせているんだけど、放ってはおけない感じ。
広瀬すずは、『遠い山なみの光』と本作で子どもを守れなかった小学生の教師の役を演じている。奇妙な接点を持った2作が9月に相次いで公開されているので、合わせて見るといいかも。
沖縄の、日本の未来のために観られるべき超重要作
長く待ち望んでいた、日本現代史における大事件を題材とする社会派の劇映画がようやく登場した。同ジャンルの製作は韓国がここ10年ほど活発で、本邦で公開されるたび「日本はずいぶん遅れをとってしまった」と嘆いていたが、この「宝島」が流れを変えてくれたらと願う。
第二次世界大戦で連合国側に敗戦した日本は1952年発効のサンフランシスコ平和条約で主権を取り戻すも、沖縄県だけは米国の統治下に置かれた。米軍基地から市街に繰り出す米兵らによる若い女性への殺人や暴行などが頻発し、軍用機が墜落事故を起こして大勢が犠牲になるなど理不尽な出来事から県民らの不満が爆発して、1970年のコザ暴動が起きた――という大まかな流れを知ってはいた。それでも、真藤順丈の直木賞受賞作を大友啓史監督が映画化した「宝島」を観ながら、自分が知ったつもりになっていたのはごくうわべだけで、沖縄であの時代を生きた人々の苦しみ、悲しみ、怒りといった感情の部分にまでは思いが至っていなかったことを痛感していた。
ストーリーは「戦果アギヤー」と呼ばれた若者たちを中心に進む。ある夜の襲撃でリーダー格のオン(永山瑛太)が失踪し、時を経てグスク(妻夫木聡)は刑事に、ヤマコ(広瀬すず)は教師に、レイ(窪田正孝)はヤクザになる。オンの不在を内に抱えつつ、60年代の沖縄の現実を生きる3人。だが、度重なる米兵らの犯罪行為に住民たちの怒りがついに爆発し、1970年12月20日未明に米兵と軍属車両を襲撃する暴動が起きる。
観客も主要登場人物らに没入し、占領下の沖縄での出来事を追体験することになる。それによって、うわべの知識にとどまっていた沖縄の人々について、より自分に近づけて感じることができる。個人の自由について、国が独立することについて、より深く考えるきっかけを得られる。「宝島」にみなぎる演者と作り手の熱量が観る者にも伝わるからこそ、それが可能になる。
レビューの冒頭で現代史をベースにした社会派劇映画のジャンルで日本は韓国に遅れていると書いたが、この手の邦画がまったく作られなかったわけではもちろんない。ただ、国家権力、政治家、官僚や大企業などに関わる事件や不祥事を真正面から取り上げ、批判すべきことはしっかり批判して描く作品は、邦画界では避けられがちだ。これは単に作り手側だけの問題ではなく、観客側にもこのタイプの作品を積極的に求めないというマイナス要因があるように思う。一方の韓国では、こうしたジャンルの映画が観客に支持され大ヒットし、それが次の製作を後押しする好循環が続いているようだ。
現代史の不都合な真実、暗い部分に光を当て、きちんと向き合うことは、明日を、未来をより良く変えることにつながる。優れた劇映画にはそれを促す力があると信じるし、「宝島」に続く力作が今後増えることを切に願う。
フィクションだけど実話ベース
なんくるないですむかー!!
大作・力作……だけど、正直いってそんなに大きな感動はなかったです。
物語の序盤から中盤にかけては、「うーん」という感じで見ていた。緊迫した内容なのに、いまひとつ緊張感がないのは何故だろう? 凄い場面なのに、あまり凄みを感じないのは何故だろう? と。
それでも、中盤以降は、物語のボルテージがあがるのと同時に徐々に映画の中に引き込まれていった。
クライマックスのコザ暴動のシーンでは、さすがに熱いものがこみあげてきた。オンの物語を抜きにして、いっそのことコザ暴動に焦点を合わせて作ったほうが、ストーリーもわかりやすく、且つ、沖縄における不条理をよりシンプルにストレートに表現できたのではないか、などと思ったりもした(でも、原作あってこその映画だし、オンの存在が本作を貫く芯棒になっているのでこんなこといっても仕方がないですね)。
そして、役者たちの熱演。素晴らしかったです。
俳優って本当にすごいなぁ。
けっきょくこの映画で一番訴えたかったことは、「なんくるないですむかー!!」という、沖縄の怒りが爆発したともいえるグスクの叫びに集約されていると僕は感じたのですが、いまこうやってレビューを書いていると、その魂の叫びは、沖縄県外で安穏に暮らしてきた我々にむけて発せられたものでもあるのだろうという気がしてきました。
期待していたほどの大きな感動がなかったのはちょっと残念だけど、作り手たちの並々ならぬエネルギーには感服しました。
観てよかったと思います。
素材は素晴らしいのに活かしきれてないのが惜しい
上映前からずっと気になっていた映画を今日観ることが出来た。
評価はどうかと言うと。。
素直に述べさせて頂くならば
カメラワークと挿入曲が驚くほど下手であった。
特に一つのシーンのカメラ割の回数が多く、
目が疲れて仕様がなかった。比較的薄暗い中での
動きも災いしてた。
本土復帰前の米軍支配下の沖縄だからか、
前半、事あるごとに米国のオールディーズが流れるのも
どうかな?と思った。
沖縄問題を広く扱っているのは良いとしても、
数々のエピソードを無理やり盛り込み過ぎた為、
焦点がぼやけてしまい、何を伝えたいのかが
曖昧になってしまった感がある。
コザ暴動のセットとエキストラの数、そして熱演された俳優人は
皆、素晴らしいのに、肝心のストーリー展開に無理があり、
終わってしまえば、3時間11分の上映時間に付き合わされた
”疲労感”だけが残る感じでした。
なんでキャッチコピーが「たぎれ、日本」なの?日本? やはり県外の役...
なんでキャッチコピーが「たぎれ、日本」なの?日本?
やはり県外の役者の方々のアクセントがどうにも違和感がある…チョイ役で少しだけ喋るオバァの言葉のほうがめちゃくちゃ耳に入ってくる。そりゃ県民だからそうなのかもしれんけど。
前半は大阪弁か博多弁喋ってんのかとマジで思った。時おり耳慣れた方言単語が聞こえて「あ、そっか沖縄か」と思ったくらい。
そしてずーっと「台詞が聞きづらい」。字幕があっても良いんじゃないかと考えた。コレわざとなのか?と勘ぐってしまった。
しかし1960年代から演技や言葉使い?にも慣れてきてぐっと観やすくなり、伝えたい事が心にしっかり刺さるくらい響いた。メインキャストの3人(4人?)は自分的には過去最高の演技だったと思う。とても響いた。
美術や衣装、ヘアメイクも最高だし、相当な熱量気合い気魄で作ったのには敬意を表すしかない。凄い。
コザ暴動とか「親に聞いたまんまの描写」だったから鳥肌立った。
けど、でも、まぁ仕方ないけど、うちなーんちゅがぜーんぶ脇に回ってるのが悲しいですね… 架空の物語ならいいんだけど史実がベースになった分だけ沖縄県民がガヤに回るのが寂しかった。それも込みでこの映画だなと。
いつか完全に沖縄県民メインでリメイクして欲しい作品。
過去を越え、未来を切り拓く――『宝島』が教える挑戦と再生の物語
映画 宝島 は、圧倒的スケールと深い情感で、私の中に強く刻まれました。1950年代、米軍統治下にあった沖縄を舞台に、若者たちが「戦果アギヤー」として物資を奪い、分かち合いながら生き抜こうとする姿が描かれています。
まず、映像の迫力と空気感に引き込まれました。豪華キャストに支えられた熱演が随所に光り、特に重要な場面での緊張感が凄まじかったです。たとえば、主人公たちの行動が描かれる朝焼けや米軍基地の影が映る夜景のシーンは、まさに「その場に立っている」ような感覚を観る者に与えてくれました。
この作品が私の経営者としての視点と重なったのは、「過去の枠に囚われず、新たな領域で挑戦する」というテーマです。私自身、大学時代に環境工学の研究に専念し、社会人を経て起業というチャレンジを行ってきましたが、本作の若者たちもまた、状況に押しつぶされそうな中で、自らの可能性を信じて動いていきます。彼らが直面する「基地という絶対的な構造」や「社会の目に見えない壁」―これらは、ビジネスにおける不確実性や常識との闘いにも通じるものがあります。
終盤、青春と理想、現実の狭間で揺れる彼らの姿を見て、私は改めて「志を持って挑むこと」「仲間とともに進むこと」の重要性を感じました。起業して以来、私が追い求めてきた“未知の視野を持って好奇心旺盛に挑む人生”という想いと、本作のメッセージとが重なったのです。
映画「宝島」は、ただ歴史を描くだけの作品ではなく、「人の可能性を信じ、変革を起こす力」を静かに、しかし確かに呼び起こしてくれます。私自身のこれからの挑戦にも、大きな励みとなる一本でした。
なぜ酷評されてるのか分からない
方言に字幕は欲しいな
観終わってまず感じたのは、「どうしてここまで評価が分かれるのだろう」という素朴な疑問でした。
確かに上映時間はやや長く、もう少し短ければより観やすかったかもしれません。
それでも、戦時中を描いた作品は多い中で、戦後の沖縄、特に占領下の時代に焦点を当てた作品は珍しく、とても貴重だと感じました。知る機会の少ない歴史に触れられて、自分にとっても学びの多い時間になりました。
中でも印象的だったのは、ゴザの暴動のシーンです。長く押さえつけられていた人々の怒りが一気にあふれ出す迫力に、思わず息をのみました。その熱量は、やはり映画館のスクリーンでこそ伝わるものだと思います。
ノンフィクションとフィクションの間で
方言がね・・
原作は未読です
方言が出てきて何言ってるんだろ・・と思ってるうちに置いてきぼりにされましたね
字幕でも付けてるか台詞を共通語に近づけてたらまた少し違ったかもしれませんね
でもまぁ長い上にストーリーはそんなに面白いものでもなかった感じですが
主要キャラのオンって人への執着が全然理解できない。
グスクのオンを探す為に刑事になった?えっ?うーん・・理解できません・・
ヤマコの恋愛感情なら多少は分かるけどそれでもね・・
なんか浮世離れしたキャラクター達っすね。感情移入が難しい
そして原作者も映画監督も沖縄人でもないんだよね
なんか色々代弁してるつもりなんですかね。正直煽ってるみたいで苦手です
まぁ・・政治的な事はやめときましょうか(汗
妻夫木聡さんはお年を召して良い役者に成られましたね
昔からの甘さと苦み走った感じが両立してて素晴らしい
広瀬すずさんは相変わらず素晴らしい
そんな感じでした
戦後の沖縄を知るきっかけとして
沖縄版ジョーカー
戦後間もない沖縄では、戦果アギヤーと呼ばれる集団がいた。彼らは、米軍基地に侵入し物品を盗み、貧しい日本国民にそれを分け与えていた。その組織のリーダーであるオンと呼ばれる人物が突如姿を消した。組織の人間やオンの周囲の人間は彼を探し求める…。
本作は、2018年に直木賞を受賞した小説を基に作られた作品である。戦果アギヤーというのは実際に存在したらしいが、ストーリーはオリジナルのためノンフィクション作品になっている。
まず、鑑賞した第一の感想としては、作内の興奮が観客に乗り移ってくるな、というものである。
沖縄という美しい自然と海が存在する場所で、血生臭い抗争が常に起こり続ける。映画から、血と潮の匂いがしてきそうな雰囲気である。
小説が基になっているだけあって、構成もしっかりしている。最後に答え合わせのようなシーンがあるが、分かりやすい説明があるため、観客を置いてけぼりにせず、消化不良にはならない。
本作で最も印象的だったシーンは、グスクが乗り込んだ車両が衝突事故にあったところである。ここからの展開は、まさにジョーカーというほかないだろう。米軍によって圧迫された沖縄民の不満が爆発した瞬間である。
主要登場人物の演技も素晴らしい。妻夫木さんをはじめとして、怒りや悲しみの感情を爆発させるシーンが多い。なぜか鑑賞していて北野武作品が想起された。日焼けした男と海と拳銃がソナチネに変換されたのかもしれない。
史実に関連した俯瞰的に観る映画だと思っていたが、実際は登場人物の主観に焦点を当てた作品であった。喜怒哀楽も美醜もぐちゃぐちゃに混ぜ込んだような出来になっている。現代の安全な日本で微弱なストレスに悩んでいる方は、窓を開けて本作の血と潮の空気を取り入れると活力が湧くかもしれない。
平和だったことは一度もない
敢闘賞をあげたくなるような力作だけど そもそも映画化の企画自体の難度が高過ぎ? でも日本人みんなに観てほしい歴史的大作
2025年の夏から秋への4ヶ月ほどの間に、私は比較的高名な小説を原作とする下記映画3本を、すべて原作小説を読んだことのある状態で鑑賞しました。
-『国宝』: 原作は多くの映画化作品を持つ人気作家 吉田修一の、元々は新聞連載小説だった話題作。
-『遠い山なみの光』: 原作はノーベル文学賞作家 カズオ•イシグロの長篇デビュー作(原題 “A Pale View of Hills”)。もちろん、私が読んでいたのは小野寺健訳の翻訳のほうですが。
-『宝島』: 原作は真藤順丈の第160回直木三十五賞受賞作。
原作小説とそれを基にした映画は別モノで、それぞれがそれぞれの姿で評価されなければならないと思いますが、原作既読者がそれを基にした映画を鑑賞した場合、原作との差違はやはり気になってしまいます。上記のうち『遠いー』に関して言えば、原作小説が文庫本で280ページほどの中篇とも言うべき長さで、内容も「何が書かれているか」よりも「何が書かれていないか」が重要な感じで、映画の作り手側が原作小説をどう読んだかを映画内で表現できれば、普通の長さの尺内で映画化したことの付加価値を示しやすいと思います。
問題は残り2篇で『国宝』は文庫本で上下巻合計で800ページ強、『宝島』は同700ページ強の本格的な長篇で、3時間という劇場公開映画としては長めの尺を使っても収まりきらない素材となっています。ということで『国宝』の李相日監督は映画化にあたって原作のエピソードや登場人物をバッサリと刈り込んで私のような原作ファンを残念がらせつつも、吉沢亮、横浜流星演じる「半半コンビ」の感情の動きを中心に描き、かつ、小説では絶対にできない、歌舞伎の演目を美しく見せるという付加価値を加え、小説とはまた違った魅力を引き出すことに成功しています。ところが『宝島』では物語の構造上、この刈り込みができないのです。小学校への米軍機墜落とかコザ暴動とかの実際の出来事を絡めながら、終戦直後から本土復帰直前のアメリカ統治下の沖縄の姿を描き、物語の中心には消えた戦果アギヤーのカリスマを探し出すことを据えるというこの構造は、原作小説を読む限り、簡単に交通整理ができそうにありません。よって、上記3篇のうち、この『宝島』が内容を考えると原作小説に対する「忠実度」がいちばん高いように思われます。でも、原作既読者の目から見るとダイジェスト版のように感じましたし、原作の持つ空気感とか魅力とかを伝えきれているかという観点からすると、残念ながら、他の2篇ほどではないとも感じています。
で、ここから、身も蓋もない言い方になってしまいます。大友啓史監督の「沖縄」の思いを汲んでの「撮らなければならない」という決意は尊敬に値するのですが、そもそもあの小説を一篇の劇映画にするというのはかなり難度の高いミッションで、この映画の製作陣はそのミッションに成功していないのではないかということです。まあ、これはいろいろな意見があると思いますので、このサイトで皆さんのレビューを読むのが楽しみです。
もうひとつ、キャスティングの件。物語の主要4人、オンちゃん: 永山瑛太、グスク: 妻夫木聡、レイ: 窪田正孝、ヤマコ: 広瀬すず、皆さん、立派な俳優さんですし、この映画の熱演には拍手を送りたいのですが、なんか、それぞれ原作で読んでいたときのイメージから微妙にずれていると感じました。微妙どころではなく、大きな違和感があったのはヤマコの広瀬すずです。戦果アギヤーのカリスマの恋人で後に小学校教師となり、沖縄の本土復帰運動の先頭に立つ闘士、イメージとしては長身で色浅黒く、長い髪で瞳がキラキラした野生的な女性をイメージしていました。別に広瀬すずが嫌いというわけではなく、私は『遠い山なみの光』の悦子を演じた広瀬すずはとても評価しています。まあ、ぶっちゃけ言ってしまえば、『遠い山なみの光』の悦子と『宝島』のヤマコ、この対照的なキャラクターをひとりの女優でまかなっていいの? そんなにも日本映画界は人材不足なの? 要は客が呼べるキャストが欲しかっただけでしょ? 映画はキャストの人気なんかじゃなく中身で勝負しなきゃ、ということなんですけど。あと、戦果アギヤーの男性3人も好演ではありますが、戦災孤児から戦果アギヤーになった飢えた魂を持つ若者たちにしては、みんないい男過ぎ(笑)。そんな冗談はさておき、4人のうち、最低ひとり、できればふたり、ウチナンチュ、すなわち、沖縄ネイティブの俳優を入れてほしかったです。
ということで、戦後の沖縄の歩みや現状を考えると日本人みんなに観てほしい映画と言えると思いますが、現時点での私個人の評価はそんなに高くなく、実はエンドロールが流れるのを見ながら、これだったら、小説だけでもよかったかな、と思っていました(小説のほうは好きなんですけどね)。でも、冒頭に挙げた3作品は時とともに評価が移ろいゆく可能性がありますので、それも楽しみです。
私は沖縄史を読まなければならない
全605件中、1~20件目を表示
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