宝島のレビュー・感想・評価
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脚本の瑕疵と泣かせ下手な演出
原作未読なため、種々不可解な点がありモヤモヤしていたところ、原作から補足されているレビューを読んでいくぶん理解できた。けどそれって映画としてダメなんじゃないか。
ガスマスクが配られるくだりも、誰がなぜという疑問が回収されず放置だし、二重スパイ容疑で公安から拷問を受けたグスクがあっさり解放されたのは米軍の脅しだったのか?
最大の疑問点というか明らかに瑕疵と思われるのは、ウタが撃たれて瀕死なのに、なぜ病院に行かずあの海岸に行けたのか。ウタ以外の誰も知らない場所なのに。車内では急いで!と大騒ぎしていたのに。しかもそこで見出すのはオンの白骨化した亡骸、っていやいや。ガマの中ならまだしも、台風銀座の沖縄の海岸で無傷な全身骨格なんて。ここで全員涙に暮れるんだけど、いやいやウタをなんとかしたれよと思えて鼻白らむ。ウタはその後どうなったん?
どうもね。小学校に米軍機が墜落したシーンでヤマコが泣き叫ぶ。泣かせどころなんだが泣けない。何でかな。
沖縄の背負わされた苦難の歴史もとってつけたよう。3人の異なる生きざまも未消化で、3時間超の尺をもってしても食い足りないというのは、脚本と演出がダメなんだろう。
知らなくてはならない現実
沖縄の歴史、日本の歴史として、知らなくてはならない、沖縄の終戦から本土復帰までの道のりを、教えてくれた、絶対に見るべき映画。やはり永山瑛太が出演していた「福田村事件」と同じく目を背けてはいけない現実。
戦果アギヤーの青少年たちの成長と共に語られる沖縄の人々の想いは、その時代を生きていなかったとしても知らなければならない。そして、今も米軍基地を置く土地として、我々は沖縄の犠牲のもとに暮らしていること、それを続けるのかを考え続ける必要がある。
米軍のやりたい放題は当時よりはマシになったかもしれないが今なお続いているし、米国との安全保障条約、集団的自衛権の名の下に我々は兵士として出征するかもしれないことも忘れてはいけない。
理想と言われても武力行使せずに道を見つけようとするのか、テロリストとして力には力で対抗しようとするのか、容易に答えの出ない問いが、妻夫木聡、永山瑛太、窪田正孝という圧倒的存在感のある3人の役者に支えられて、素晴らしい映画になっていた。
ただ、若干冗長な展開もあり、3時間越えにしなくても良かったのでは?とも思ったので、マイナス0.5
原作未読なので、是非読もうと思う。
力作でも映画向けスペックではない
観る価値はあるが…
予想以上にすごく良かった
見に行こうと思いながら口コミや時間などで出遅れたけど、やはり自分で見に行って良かった。
終戦後や本土復帰、暴動など歴史やドラマでしか知らないことが熱気が伝わる大迫力で描かれ、1人のおんちゃんを軸に各登場人物が各々の人生を歩み絡みながら沖縄の歴史を描いていた。もっとこの時代について学びたいと思った。
ただこの映画を見ると当時の人たちが、アメリカ出て行け!という気持ちが痛いほどわかり、暴動などもっともだなとも思ったので、アメリカに対して忖度する人たちは映画を見て欲しくないだろうなとも思った。沖縄にだけ地理的なことがあるとはいえ、人ごとでいいのかとも思いいろいろ考えさせられる映画でした。
ただ沖縄の人の明るさと海の美しさなどが、やけに救いになりました。見るべき良い映画だと思いました。
蹂躙され続けた人達
物語は今後、アメリカに占領され従わされた沖縄で基地から物資を掠め取るグループの登場から始まり、そのリーダーのオンちゃんの消息を探す2人の子分とその彼女の3人の物語です。
今も続く沖縄問題を知る為にも観ておいた方が良い映画でしょう。
戦争時は本土の身代わりに犠牲になり、戦後はアメリカの領土に。
そして日本に返還されても今でも地位協定でアメリカ人を裁けず、アメリカ軍基地の大部分を占める沖縄。
戦争、戦後と本土の代償として蹂躙され続けた沖縄。
今も本土の人と沖縄の人とでは平和の感覚は違います。
多分、アメリカは沖縄を世界戦略のほんの一部としか見ていないでしょう。
トランプ大統領に至っては日米安保条約の経緯すら知らないので、基地の負担の事を言って来るのでしょう。
でも、そこに住んでいる現地人の事をアメリカは考えているとは思えません。
映画自体はそんなにオンちゃんを探すミステリーとしてはそんなにミステリー要素は高くなく、ハラハラドキドキに振り切っている訳でもないので、巨大な製作費からは興行的に成功した方ではないと思いますが、本土の人達と沖縄の人達との平和の温度差を知る為にも観る事をお勧めします。
戦果アギヤー
戦後になっても平和を感じたことがない
インパクトもあり、ずっしりした言葉だ。
私が知らない1952~1972の沖縄を
知る事が出来た。
想像では分からない現実だったのだろう。
沈黙、国家の闇、犠牲
戦争に負けて他国に占領される
という嫌な事をストレートに描かれている。
日本の縮図。
兄を慕い想うレイ役の窪田正孝さん
の演技は狂気だが彼の気持ちや行動が
物語っている。怒り狂うはず。
何が怖いって世界でも変わらず
起きてる事。人間が一番おぞましい。
ドキュメンタリー映画だな
ハゲタカ、白洲次郎、龍馬伝と硬派で映像に迫力があるところが好きだ。
今回は、沖縄の今につながる現実を正面から描いている。私なんかでは理解しようにも仕切れない抑圧されたなかで、人々が懸命に生きている様が迫力の映像とともに伝わってくる。
押し付けられた平和や豊かさなんかクソ喰らえ。貧しくても仲良く助け合って、そして蔑まされないで生活したいとの思いが伝わってくる。
小学校への米軍機墜落事故、祖国復帰運動、コザ暴動など、丁寧に描いている。
ただ、沖縄の思いを余すことなく伝えたいとの思いからか、かなり尺の長い映画になっており、途中でトイレに立つ人、エンドロールが始まるや席を立つ人が多数いた。
内容がある映画だけに、長尺の国宝くらいの反響があってもいいようなものなのだが。
とても良いが、とてもモヤる……
あらすじが面白そうなので興味を持っていたものの、上映時間が3時間超えというのと低い評価を目にするのとで観ようか迷っていましたが、時間があったので観に行ったものです。
原作は未読です。
米軍統治下の沖縄の状況が描かれ、その理不尽さに対する怒りや悲しみの想いが強く伝わる作品でした。
俳優陣の演技も、妻夫木聡や窪田正孝の怒りを含んだやさぐれ感や、広瀬すずの怒りや悲しみを堪えている凛とした佇まいなど、素晴らしかったと思います。
墜落事件でのヤマコの慟哭や、悲しみを飲み込み強くあろうとする様子。
血まみれのレイとヤマコとの感情がぶつかり合う緊迫感あるやり取り。
暴動の混乱ぶりや、その中を行くグスク。
基地を襲撃するレイと止めようとするグスクとのやり取り。
演技の素晴らしさもあり、印象深い良い場面でした。
襲撃時のレイとグスクとのやり取りなどは、やや目頭が熱くなってしまいました。
理不尽な状況は続いている今現在に、その想いが叩きつけられているのだろうと。
……と、良いところもありましたが、モヤるところも結構ありました。
グスクの語りで状況説明がされるのは良かったですが、その心情説明はいらないだろと思う部分も。
回想シーンも、長いと感じる部分や、入れるタイミングがどうかと感じる部分もありました。
血まみれのレイがヤマコの元へ来た場面など、緊迫感が高まろうかというところで回想シーンになり一旦緊迫感がそがれてしまったような気がするので、別の構成の仕方が良かったのではと。
クライマックスも、レイとグスクとのやり取りまでは良かったのですが、急にヤマコやウタや諜報員が集結してゴタゴタしたご都合主義な展開という印象に。
諜報員とグスクにそれまでどれだけ信頼関係があったのかが分かりづらいので、トモダチという言葉だけで信頼関係があったとして見逃す流れは、うーん……と。
何より、少年ウタの扱いがモヤモヤしました。
思わせぶりな登場の仕方の割に、主要人物との交流度合いの描写があまりなく、ヤマコが気にかけているくらいしか。
襲撃の場面では、何でこの状況で父親のことを聞くのかとか、レイを身を挺して助けるとか、唐突な感じで。
もっとウタの父親に対する想いやレイとの交流の描写があれば良かったと思いますが。
最後も、撃たれたのに病院に連れて行かないのかというところがモヤモヤして、オンの回想シーンも全然入ってきませんでした。
吐血してもう助からないだろうから本人の希望を聞こう、ということだとしても、モヤモヤします。
3人がオンの死を知り衝撃を受け悲しみに暮れるのも分かりますが、その横でウタが死にそうになっているのをほったらかしているのはどうなのかと。
オンの葬式は厳かに行われたようですが、ウタは?、と。
個人的なイメージとしては、こういった社会的なテーマの話では、少年とか若者といったキャラクターはやはり次の世代、未来の象徴なので、死んでしまうのはどうなのかと。
大人が何とか守ろうとするべきだろうと。
死んでしまったとしても、それは大きな悲劇であるという認識が必要なのではと。
オンの死については重要で悲劇的な扱いで描かれましたが、ウタの死については特に描かれずオンの死にかき消されてしまったという印象です。
オンが守った命、未来を失ったというのが最も悲劇的だと思いますが、そこに触れなかったのはかなりモヤモヤしました。
あと、そこに触れなかったためか、オンの存在や予定外の戦果がマクガフィン的とも感じてしまいました。
戦後沖縄の理不尽が強く伝わるところなど、とても良かったと思います。
が、少年の扱いの雑さがとてもモヤりました。
広瀬すずをなめてました
劇場で観れてよかった
公開されてすぐと、しばらくしてからの、二度観ました。平日の午前中もあってか両日とも客入は少なかった。方言など分からない言葉がでてきて、鑑賞後すぐ覚えてる範囲調べました。2度目は内容がわかっているからこそ、開始早々もう感情が揺さぶられました。自分の無知さに改めて気づき、知るきっかけとなり本当に良かった。
この力作を世に送り出してくださったことに、心より感謝とエールを送りたい
9月最後の土曜日、映画『宝島』を観た。
全国で観客の入りが芳しくないことをとても残念に思い、レビューを書き残しておきたい。
この映画が私たちにもたらしたものは、ただのエンターテインメントではない。それは、戦後沖縄が抱え続けてきた「魂の傷」と「真実の重さ」を、容赦なく、そして克明に描き出した映像の力ではないだろうか。
妻とともに観に行ったが、「本当にあったことか知りたくなった」「暗くて暴力が怖い」という率直な感想は、まさに『宝島』が成功している証だと感じた。観客が、通常の映画に求める「救い」や「答え」が不在であることに戸惑い、閉塞感を覚えたという事実こそが、この作品の真髄ではないだろうか。
なぜなら、この映画は、観客が目を背けがちな、あるいは知っているつもりでいた「簡単には解決しない現実」を突きつける、セミドキュメンタリーとしての役割を十全に果たしているからだ。
終始、観客を引っ張った「おんちゃん」という存在の謎と悲劇、そして、その絶望性が「命」の象徴であるウタの消滅とともに明らかになる終幕は、安易な希望を提供することを拒否している。それは、制作陣が「ヤマトの同情だけの責任逃れ」を排し、沖縄の現実と正面から向き合った、勇気ある姿勢の表れではないかと強く感じた。
観客は、救いのない暗さにダブルパンチを食らいながらも、この映画が「正しく、偽りなく、詳しく沖縄の抱える問題を描いている良い映画」であることを認めざるを得ない。大友啓史監督が見せた、史実に忠実なドキュメンタリー性と、飽きさせない演出、そして暴力表現の必要性とコントロールの妙は、この重い題材を3時間という長尺で見事に描き切っている。
『宝島』は、現代の戦争や世界の抱える問題の焦点として、沖縄の問題を人類全体の問題として捉え直すきっかけを与えてくれたのではないだろうか。
安易な「答え」がなくても、観客の心に火を灯し、「そんなに簡単なことではないが、生き続けなければならない」という言葉とともに、「そろそろ本当に生きる時がきた」と問いかける力。
この映画は、多くの議論と葛藤を呼び起こしながら、沖縄の過去と現在を未来へ語り継ぐ、かけがえのない「宝」となっている。この力作を世に送り出してくださったことに、心より感謝とエールを送りたい。
沖縄と本土の温度差
ネットニュースなどで、興行収入が…という記事を目にすることがある。
確かに興行収入は厳しそうで、そうなるとこのような大作は、これからなかなか作られることは難しいんじゃないかなぁと思ったりする。
何故このようなことになったのか…あくまで自分の主観ですが、映画にもあったように沖縄と本土との温度差にあると思います。
私は、沖縄に行ったことがなく、どこかハワイのようなリゾート地という感覚があるので、要は敷居が高いし、遠いところと思ってしまう。
ただ、本当に知らなかった。沖縄の方々がこんな苦労を強いられて、厳しい環境にありながら、心を一つにして強敵と闘ってきたことを…。本土の人間は、そのことを知らなすぎるかもしれない。
一つ残念なことは、もう少し深掘りして、人物の細やかな人物描写が欲しかったなと、折角3時間もあるので、そうするともっと感情移入できたかなと思います。
ですが、沖縄の人々や先人達の苦労を知ってもらえる映画を制作された功績は大きい。
個人的に、窪田正孝さん素晴らしかった。
宝であるべき命
大作なのに、、
この作品は見なくてはならない映画だと、期待していた。
3時間が長いとは感じなかった。
しかし、
自分が時代背景に詳しくないこと、沖縄訛り、回想と妄想が散りばめられ、
話の展開についていくのがやっとだった。
ストーリーを理解することに集中し、そこに生まれる感動とか、心の動きを感じるところまではいかなかった。
ウタはオンが助けた子供だったことが、特に驚くほどのこともなく、一体何だったのか?
もっと早くにヤマコやレイたちに伝える機会はあっただろうし、(ウタも父のことを知りたがっていたし)
アメリカが必死になって探していたのは、高官が子探しを命じていただけということなのか。
機密ではなく、親子愛?!
レイはあんなにも覚悟をもって、毒ガス作って嘉手納に突入したのに、仲間を捨てて、車で逃げるのか…
グスクたちに任せて、なぜ基地に戻りはしなかったのか…
そして、まだ生きているのに、病院じゃなくあの場所に行ったのか…
すべては、最後のストーリーを展開するためのご都合主義感があったのは残念。
そして、広瀬すず演じるヤマコが妻夫木聡演じるグスクをニイニイと呼ぶから、てっきり兄妹と思っていたので、後半のグスクの恋心にハテナとなったり、かと思えば別の人と結婚していたり、、
詳しく描く余力がないのであれば、
そのへん飛ばしても良かったのでは?と思った。
ただ、1人1人の役者は熱量があり、
エキストラの迫力は素晴らしかった。
オンちゃんをみんなが慕う意味は永山瑛太から滲み出ている感じはあったし、その弟のレイの苦悩を窪田正孝が見事に演じていて助演男優賞!
複雑な沖縄の時代背景にお金をかけ、きちんと描かれていて、素晴らしい映像の大作に仕上がっていただけに、感情移入できなかったことは残念。
もう少し、誰かの人物像にフォーカスしても良かったのかも。
役者も映像も題材もいいのに、
ラストに辿り着くまでは良かったのに、
米軍基地内に主要キャスト集合して、この伏線回収に、「え?なんで?」となった。
これが隠していたこと?探し求めたもの?
原作があるから仕方ないけど、この映画、ココに辿り着く必要があったのかな??こんな結末見せるなら、通過点のひとつで良かったのに。
衝撃と感動とはならず、
「たぎれ!」と心揺さぶられ損ねた感じとなった。
こんなにも大作なのに、あっという間に上映回数が減ってしまい、ラストがラストなだけにもう一回見たいともならなかった。
本来なら、何度か見て、理解して、心が動く作品なんだろうけど…もったいない。
酷評のようですが、映像としては素晴らしく、映画館で見て損はない!!
艱難辛苦の沖縄
戦後の沖縄が舞台。
俺には対岸の火事だった沖縄の実情が語られる。
生まれる前の話ではあってもたかだか60年程前の話しだ。
故郷を占領された若者館
日本に見放された若者達
そんな人々が描かれる。
何をやっても何をしてても、その柵から解放される事はなく…米兵に殺されても犯されても、彼等を糾弾する事は出来ない。何をされても泣き寝入りを強いられる。
同じ人間なのに。
法治国家のはずなのに。
平然と特権階級が存在する世界。
「戦後からこっち平和であった事などない」
…とてつもなく理不尽な時代を沖縄の人々は生き抜いてきたんだなと思う。
本国の犠牲にされたと言われても仕方がないような状況が10年以上は続く。
漏れ聞こえてくる話はある。
けれど、ここまでダイレクトに描かれた事は無いようにも思う。
壮絶だった。残酷な描写があるわけじゃない。台詞の端々に引っかかる当時の感情や情景がそう思わせる。
方言を操る俳優陣は熱演だった。
今は…当時の沖縄程、表面化してないだけなんじゃないのかと思う。日本全体が抑圧されてるような空気感がある。
しかも、日本人によって。
政治家が罪を犯しても罰せられないし、政治家が決めたルールによって僕らの生活は圧迫されていく。
妻夫木氏は叫ぶ
「そんなもん最早、人間じゃなかっ!」
窪田氏は応える
「それこそが人間だ!」
…本当に。
どちらの主張も間違ってないと思う。
とちらの主張を聞いても悲しくなる。
平和や平等って単語はあっても、実現などされないのだなと思う。そんな絶望の中を生きねばならない。
後半はなんか駆け足だったようにも思う。
3時間を超える大作だから、俺の集中力のせいかもしれないが。前に進まない物語のせいかもしれんが。
そして、帰結が分からなかった。
高官の子供だったから何だというのだろうか?そんな境遇の子供は山程いただろうし、その事で高官が罪に問われる事もない。
澱みに澱んだ物語だからピリオドを付けるのも難しいのかもしれないけれど。
沖縄の話ではあったけど、沖縄だけでは収まらない話だった。
◾️追記
とあるレビューを読んで、自分の投稿を再読した。映画は数時間で終わり、観終わった事は過去になる。
けれど、そこに有り、今も圧迫される環境や感情は現在も進行形なんだと思う。
この作品を過去形で語る事自体が間違いだったのかと、そんな事を考えた。
野心作!
当時の沖縄を熱く描いた力作
個人的に沖縄が好きでよく行く。
光と影の濃さの半端ない場所である。
そして「南の熱い風」が吹く。
まさにタイフーンの国であり、何もかもが濃密に凝縮され、混ざり合った複雑な、そして猛烈な熱気の中にある。ブワァっと体を吹き付け、圧倒的熱気をぶつけてくる空気が充満し、循環し、炸裂している。
今のコザや国際通りなどを歩いてさえも、そうなのだ。ましてや映画の描かれた、戦後のアメリカ支配下の混乱時代は、その何倍も凄まじかっただろう。
アジアの熱い風が吹きまくっていたはずだ。それは逞しく、激しく、苦しみと抑圧を押し付け続けられているからこそ、その濃い影の分だけ強い。
この映画には、もちろん私はその時代に生まれていないが、その「風」があったのではないだろうか。その混沌、圧倒的なコントラストの光と影が。
それがあるだけである意味「十分観せた」と私には言えた。
主要人物は基本的に、ウチナーヤマトグチ(標準語風の沖縄弁)でしゃべる。シマクトゥバ(沖縄弁)でしゃべられたら、全編にびっしり字幕が必要だろう。時代を考えれば本来はそうであったかもしれないが、それでは映画が成り立たないので、「当時の雰囲気を保ちつつ、観客にわかるであろうギリギリ」を攻めたのだ。コレが見事な塩梅であった。だから、あまり詳しく聞き取らなくても本編に影響のなさそうな、端役の人物たちの言葉は、島言葉だったり、かなり聞き取りづらい訛りのきつい沖縄弁だ。
神経質な人は気になるかもしれないが、沖縄弁が分からないセリフは分からなくて良いところだと思うので、「タイムスリップで当時の沖縄にいるつもり」になってスルーして構わないと思う。
話の主要な柱を支える「オンちゃん」がとても魅力的でかっこよく、他の登場人物がずっと影響を受け続けるのがわかる。魅力がうまく描けている。
主人公もいい。妻夫木聡は素晴らしい仕事をした。「生きているよう」に演じている。本当にいたとしか思えないほど、感情の輪郭がリアルだ。
弟もいい。細かいが、中盤の襲撃シーンで、襲撃者たちが沖縄空手の構えをしているのもいい。
外の人間が言うのもなんだが、沖縄の歴史は困難極まる。薩摩藩の支配下では、村内で人減らしをしないといけないほどのすさまじい税金をかけられ、二次大戦時の沖縄戦では、映画にもあるように県民の四人に一人が殺されたとも言われる。米兵だけでなく日本兵も彼らを殺し、いいように使い、犠牲にした。
慶良間など、島の地形が変わるほど砲撃され、ある計算では県民一人当たり60発もの銃弾が撃ち込まれた。つまり赤ちゃんにもおばあちゃんにも、関係なく30発も60発も撃ち込まれた。
島の地形が変わる砲撃など、漫画「ONE PIECE」に出てくる「バスターコール」のようなものを現実にやったということだ。島ごと殺し尽くされたのだ。
その後は統治の犠牲になり、米兵犯罪と飛行機墜落事故にさらされ続け、事故にあっても補償もされず、犯人も隠ぺいされ……。
そりゃあ「なんくるならんどォ!!」(平気なわけねえだろ)だ。
あの叫び声を主人公から聞きたくてこの映画を見た。
いまでも問題は続いている。いまでも米車両に事故されたら、基地に逃げ込まれたら勝ち目はないので米車両に神経質になっていると、沖縄のタクシー運転手は話した。
基地問題の早い解決を祈る。
全729件中、61~80件目を表示
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