宝島のレビュー・感想・評価
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最後に真相が分かるのだけど、ちょっと無理筋と感じてしまった。。
3時間以上(191分)の上映時間。
トイレに飲み物とシッカリ準備してからの入場。
あんまり長い映画は好きではないですけどね。
前評判がよさそうだったのと、かなりのお金を掛けた大作だというのを知って見に行く事に。。
いつも見ているYouTubeの『ホイチョイ的映画生活』で紹介していたのも理由のひとつ。
第二次大戦後の沖縄が舞台。
本土復帰する1972年くらいまでの話。
コザ暴動あたりがクライマックス。
3人の若者と英雄的リーダーの関わる事件と沖縄の歴史が描かれる。
どうも、冒頭から最後までの映画の核となる話の設定がイマイチと感じたかな。
最後に真相が分かるのだけど、ちょっと無理筋と感じてしまった。
詰め込みすぎたような気がする。。
ただ、お金を掛けただけあって、各シーンの見応えはありました。
展開も悪くは無かったので飽きが来るとかは無かったけど、大作感はあまり感じなかったかな。
本土復帰前の沖縄の歴史が知れたのは興味深かったです。
ただ、ただ、とにかく長い。。
3時間11分は長すぎ。
結構、途中にトイレに行く人はいました。。
私もトイレに行かないように、買ったカフェラテは終盤まであまり飲まないようにしていた。
切るところが無くて長くなったという感じはしなかったし、あと1時間は短くしてもクオリティに差は無かったんじゃないかな。。
先日、『グラン・ブルー 完全版』を見たばかりだったので、編集の重要性を強く感じたばかりだったので、そんな事を思ってしまった。
役者さんでは、広瀬すずの童顔の可愛さ、窪田正孝の鋭い眼光、妻夫木の歯の白さ、が印象に残った。
私の期待が大き過ぎたのかな。。
戦後だけでなく沖縄の今も見つめさせる映画
戦後の沖縄で実際に起こった事件を散りばめ、失踪した英雄の謎を解くミステリー。
公開されて評価が割れてきたようだが、3時間半近くの長さは感じず配役もはまっており、良かった。
出番は少ないながら、リーダーシップと共に人としての温かみを感じさせるオンを永山瑛太が担ったのは説得力があったと思う。話題作に出演が続く広瀬すずも実力をつけてきたと感じた。
それとここでも瀧内公美。
話題のドラマに出ている若手や一瞬だが8番出口の子役も出演している。
多くの要素が盛り込まれているのでこの尺の長さになってしまったのだろう。
でも今に続く、犯罪の見逃しだけでなく基地の移設による自然破壊など沖縄が被っている犠牲(という言葉も不適切な気がするが)を見つめてほしいという切実な思いはひしひしと伝わった。
全体的に画面に力があり、特に軍機墜落、ゴザ暴動のシーンは圧巻。劇場で見ることをおすすめします。
惜しい!ワクワク感が欲しかった
戦後、本土復帰前の沖縄を舞台に、若者たちがたくましく生きていく。宝島というタイトルが意味する隠された宝とはなんだろうか?と、勝手にワクワクしながら、想像をたくましくしていました。役者さんの顔ぶれも楽しみでしたし!
見終わったあとの感想は、うーん惜しいなぁ、なんでそうするかなあ、というものでした。ワクワクさせてもらえなかった。
この映画のストーリー的に、オンが既にいなかったというのは壮大な肩透かしで、終盤が盛り上がりませんよね。
いやいや原作がそうなっている、ではなく、映画の流れとして、の話です。
アメリカ軍相手にケンカを売るのは爽快ですし、暴動シーンも迫力ありますが、暴動シーンの描き方に共感を覚えにくく、そこまでやっちゃダメでしょうみたいに見えてしまいました。
基地に忍び込むシーンもハイライトな訳ですから、もう少し、やってやれ〜って共感したくなるように描いてほしかったですね。せめて3人の共同計画であってほしかった。
それにしても妻夫木聡の若々しさ!
広瀬すずとカップルで全く違和感ないのは、星3つくらいの価値ありでした。
極上の人間ドラマに震える
戦後80年。世界は相変わらず過去の戦争の歴史を反省する事より抑止力の名目で軍備拡張にしのぎを削っている。そして、実際に本物の戦争を起こし自国の領土拡大と経済発展を進めている恐ろしい国家も存在する。
戦争を放棄している日本は確かに平和なのかも知れないが、1952年から20年間の沖縄を描いた映画「宝島」と今でも沖縄が負わされたものを考えると、日本の戦後の総括はやはり本当には終えてはいないと思ってしまう。
戦時中の沖縄戦はドキュメンタリーでもかなり見てるが、日本の軍事戦略の最大の犠牲者であるのは疑いがない。そして戦後、アメリカになった沖縄のその歴史上の物語を正面から映画にした作品はなかったのではないかと思う。それだけでもこの映画は邦画の歴史に名を残す価値がある。
日本に返還になる前の沖縄は見たことはないが、映画はその時代を克明に映し出すようロケ地、美術セット、大道具小道具、衣装メイク等など細かく気を配り作られているのがとにかく素晴らしい。小学校への墜落事故のリアリティ、大量のエキストラの皆さんと作り上げたデモ行進。そして住民の怒りが頂点に達したコザ暴動は映画の象徴的なシーンとして観客の脳裏に焼き付けてくれる。
1952年の米軍基地襲撃でコザの英雄ことオンちゃんは姿を消す。それから6年、オンちゃんを探す情報を得る為にグスクは刑事になりレイは刑務所に入りヤクザになる。ヤマコはオンちゃんとの約束を果たす為に教師になる。妻夫木聡、窪田正孝、広瀬すずはそれぞれ当時を生き抜いた沖縄人を見事に演じた。妻夫木聡は爆発しそうな感情を抑えアメリカ軍に協力しながら自分なりの正義を貫く。窪田正孝は兄であるオンちゃんの影を追いながら違法なやり方でアメリカ軍と対峙する。広瀬すずはウタを守りながら基地反対運動の最前線にたつ。それぞれの20年を恐ろしいほどの速さで駆け抜けていく。
ラスト、基地内でのグスクとレイがぶつかり合い米軍との一触即発の緊張感から遂に明らかになるオンちゃんの消息とその物語。オンちゃんが得た「宝物」は毒ガスでも財宝でもなく「小さな命」だった。永山瑛太が演じたオンちゃん。彼しかこの役は演じられないだろう。
大友啓史監督はNHK入局時の教え「声なき声を届ける」を実現させたかったとのことである。
充分にそれは観客に伝わったと思う。
光るセリフもあるのだが
みんなで、アメリカ軍所有の車をひっくり返して気炎を吐いても、結局は届かずに潰されてしまう人々の思い…。
車の上に立って叫ぶ瀧内公美演じるチバナも、通りを泣き笑いしながら歩く妻夫木聡演じるグスクも、共にまとっているのは、どうしようもない哀しさだ。
基地内でのグスクとレイのやり取りは刺さった。
だが「予定にない戦果」の答えを見せただけの、その後のラストエピソードの展開には、個人的に気持ちが離れてしまった。
前述のグスクとレイのやり取りで浮かび上がらそうとした「人間らしさとは何か」や、金門クラブでの、グスクの「経済がよくなれば犯罪が減るっていうが、米軍のように金のある奴らがなんであんなにたくさん犯罪を犯すのか」という問いなど、原作にはない光るセリフもあった。
だが、あのラストの展開にしたことで、今作が決定的に欠いてしまったのは、原作が貫いていた「英雄」とは何かという柱だったと思う。
妻夫木聡も、窪田正孝も、広瀬すずもとてもよかったからこそ、残念でならない。
<追記>
だいぶ前に観た予告編で、「たぎれ、日本。」の言葉が出てきた時から心配していたが(いつの間にそのコピーは見かけなくなったが)、宣伝部は、そもそもこの作品にそうした煽りコピーをあてて、誰をターゲットに、どんなメッセージを伝えようとしていたのだろうというのも気にかかる。
俳優たちがそこに生きている
妻夫木聡さんをはじめ、全ての演者さんが本当にそこに生きていると思わせる説得力があります。涙するポイントもあるのですが、1回観て結末を知ってからまた観ると、細かい伏線や、この表情にはこの感情も含まれていたんだなと感じ、より号泣してしまいました。長いですが複数回観ることをお勧めします。
沖縄の言葉や、叫ぶシーンが多く何を言っているか分からないところと、他の場面に対して序盤の基地内の御嶽(ウタキ)のようなところが安っぽく感じたので減点しました。
コザ暴動
映画宝島
先行を含め
映画「宝島」3回目鑑賞
アメリカ統治下の
沖縄の人々の怒りが爆発し
心の叫びを感じながら…
1回目、2回目、3回目と
回数を重ねて
細部に渡りじっくり観て
バラバラだった伏線
点と点が繋がり
オンちゃんの「予定になかった戦果」が
何かを知った衝撃が半端なかった。
英雄と呼ばれたオンちゃんの存在の
凄さに改めて圧倒され
観る度に心が揺さぶられた。
窪田くんのレイの
鬼気迫る演技が本当に素晴らしかったな
特にヤマコとレイ、グスクとレイの
対峙シーンは言わずもがなだけど
チバナの店に事件の現場検証に訪れた時に
グスクが見たレイの声のない訴える姿
あれが頭から離れなかった
しかし窪田くんのレイは切なすぎる。
191分の長さは全く感じなかったし
沖縄の方言も頭で理解するのではなく
体で感じるという感じで
演者の表情や動作などから読み取れた。
ただ、正直この手の作品は
賛否両論あると思う
ちょっと気になるのなら
観てみるのがいいかな―
沖縄の知られざる歴史に触れるが長尺に翻弄されてる感じ
映画『宝島』は公開前から楽しみにしていた作品でした。舞台は沖縄。独特の沖縄弁が使われており、耳慣れないこともあってセリフが聞き取りづらく、よくわからない部分もありました。
上映時間は3時間を超える大作。スケールの大きさは感じられたものの、「ただ長い」と思う場面も少なくありません。不要に感じるシーンがある一方で、もっと掘り下げてほしい部分もあり、全体のバランスにはやや不満が残りました。
幼少期のウタと青年期のウタを演じた俳優がよく似ていて、自然に成長を感じられる点は大きな魅力でした。また俳優陣全体も粒ぞろいで、演技に引き込まれる瞬間は多くありました。
作品を通して、沖縄の知らなかった歴史の一部に触れられたことも収穫のひとつ。重いテーマを背負い、力の入った大作であることは間違いありません。ただ見応えはあるのに、心に残るものが薄い。その点が惜しく感じられました。
本当の「宝」
まず初めに、わたしはレビューはどこまでいっても個人の感想に過ぎないと思っている人間です。なので、これから書くことも他愛もない一個人の感想を個人的な理屈で書いているに過ぎないと思っています。
そういう人間が書いていることをご承知の上で、それでもお読みになっていただけるのなら幸いです。
まず結論から書くと、「やっぱり正解のない話だったな」というのが感想です。
これは別に悪い意味で書いているわけではありません。沖縄の米軍問題は今も解決していない問題であり、根が深く、本当の解決にはまだ時間が掛かってしまうのだろうな、と漠然と思っていました。なので、取り敢えず「宝島」という題名だけ見ても絶対に明るい終わりにはならないことは分かっていましたし、ティザーポスターを見ても、予告を見ても、それは一目瞭然でした。
そのような大きなテーマをどのように物語として成立させているのか、期待して観に行きましたが、期待どおりだったところもありつつ、やや期待外れと思えたところもあり、上記の点数になっています。
物語は、第二次大戦直後の沖縄を舞台に、妻夫木さん演じる主人公の刑事「グスク」が、かつて米軍基地で行方不明となった永山瑛多さん演じる「オンちゃん」を探していく中で、窪田正孝さん演じる「オンちゃん」の弟「レイ」が絡んでいる企みに巻き込まれていくというものだと思います。そこに幼馴染であり紅一点の広瀬すずさん演じる「ヤマコ」も同じく巻き込まれていくということで、この映画は3人の群像劇となっていると思いました。
舞台が第二次大戦後間もない米軍占領下の沖縄から始まり、日本へ返還される辺りまでの十数年間を描いているのですが、描かれているのは、「沖縄は米国のものでも日本のものでもない」という叫びであり、自分たちのアイデンティティを取り戻したいという沖縄県民の切実な想いだったように思います。特に「レイ」は反米感情だけでなく、自分たちを政治的に利用している日本政府への不信感も強く、明確でした。逆に、抗議デモや集会活動など言葉で米軍の撤退を訴える「ヤマコ」は、気持ちは同じでも方法は至極真っ当で大人です。主人公の「グスク」はその中間を行き来しており、とても分かりやすい人物造形になっていました。それでも、3人とも米軍や日本政府への怒りと憎しみは同じくらい募っており、それらは沖縄県民すべてのものであるようにも描かれていました。
良いところだと思ったのは、まず①「頑張って平等な目線で描いているところ」だと思っています。どうしても、反米感情や反政府的な描き方になってしまうところを、どうにか頑張って米軍駐留による特需で生き永らえている人(ピエール瀧さん演じるヤクザの元締めっぽい人とか歓楽街の女性など)を描いたり、米軍基地内部にも人道的な倫理観を持った情報部の人間がいることを描いたりするなど、あまり思想の押し付けになり過ぎないように配慮している印象を受けて好感が持てました。また、反米感情の強い「レイ」は序盤、高級車に乗っている訳ですが、それも嫌悪するヤクザの元締め(つまり米軍特需の恩恵に預かっている人)から貰ったお金で得たものであるところなどは、何とも皮肉だな、と思いました。
次に②「言葉による感情の説明がくど過ぎないところ」も良かったと思いました。特に終盤、米軍基地で「レイ」たちテロリストの企みを阻止しようと「グスク」が対峙した際に思想の言い合いになるのですが、そこも割と自然に作られており、わざとらしさがなくてすんなり登場人物たちの感情に共感できました。
あと、当然ではありますが③「物語が良いと思えたところ」もあります。この物語は単純に米軍に占領されて好き放題されている沖縄県民たちの苦境を訴えているだけでなく、戦後民主主義を掲げた日本がどのような外交をしてきたのかも想像できる教養にもなっていますし、何より、「グスク」を中心とした3人が「オンちゃん」という消えた英雄(つまり過去の希望)に囚われ続けているという悲劇も描いています。つまり、単なる「昔話」だけではなく、今にも通じる人間ドラマにもなっていると思いました。ラストの夜の浜辺で「オンちゃん」の白骨死体を見付けるまでの流れも、「オンちゃん」が命懸けで守った「宝」を、「レイ」の暴力による暴走が殺す、という皮肉な結末となっており、暴力の無常さや報われない登場人物たちの気持ちなど、現在の沖縄県の現状を映し出しているようで好感が持てました。また見方によってはその「宝」の存在自体が米軍のスキャンダルであり、それを「成果」としているところも、なんだか皮肉だな、と思った次第です。
もちろん、妻夫木さんを中心とした役者さんも全員超一流で一気にこちらの感情を引き寄せる演技を見せてくださいます(「ヤマコ」が「オンちゃん」の形見である首飾りの匂いを嗅ぐように顔に寄せる時の表情などは狂気じみていて好きです。)し、演出についても、遠くの「光」(夜の花火、回想の中に立つ「オンちゃん」に当たる光、暴動の中で上がる閃光など)を「手の届かない希望」として描いているように見える描写も、終わりのない苦しみを抱える沖縄県民の気持ちを代弁しているのかな、と思い、しつこくないけど分かりやすいな、と思った次第です。
ここからは受け付けられなかったところとなります。まず①「3時間以上の上映時間は長く思ってしまったところ」がありました。別に単に時間が長いということでなく「長いと思ってしまった」ということです。つまり、上記したとおり、途中で物語が間延びしていると思う時間があったということだと思います。逆に言えば、とても丁寧に映像化しているという証左でもあるはずなので、感覚は人それぞれですが、正直、「グスク」の家庭のシーンはなくても良かったように思いました。特に物語に絡んでいないし、彼の心の拠り所になっているとは思えない作劇だったためです。
あと、個人的にはガスマスクの件など「誰が何のためにお金を掛けて配布したの?」という疑問が解けないまま終わった感が否めません。きっと、どこかでちゃんと答え合わせがあったはずなのですが、良くも悪くも群像劇なので視点が行き来していて良く分からなくなりました。あそこに時間を割くのなら、「レイ」たちテロリストがVXガスを作成する件を入れて欲しかったな、と個人的には思う次第です。分かっていたとはいえ、3時間以上も映画を観ている者としては、どこかで「意外な真相」みたいなものを期待していたところもありまして、なんだか色々と絡み合った割には結局「オンちゃんはとっくに死んでいた」という当たり前の結末に落ち着く結果となり、それなら余計に細かな疑問も解消できる3時間にして欲しいとは思いました。
次に、これは①にも共通することかも知れませんが、②「製作費を25億円掛けている割に、ダイナミックなシーンが少ない印象」も持ちました。わたしは、個人的に映画を観る理由の一つとして「大きな画面で迫力ある映像を見て、リッチな音響設備で迫力ある音を聴く」というところがあるのですが、例えば飛行機が墜落して小学校が燃えるシーンなども主人公たちの表情を映しているだけで終わり、次のカットでは既に堕ちて大惨事になっているところが映し出されているので、いまいち臨場感や悲劇性が伝わりませんでした。同じく、最後の暴動シーンももっと遠くから多くの民衆が車に群がっているように見せてくれると、それだけ県民の怒りも伝わるように思い、片手落ち感を勝手に感じました。音響は良いと思えただけに、もっと映像でも魅せて欲しかった印象を受けました。演出意図もあるでしょうが、リッチな映像も、3時間を飽きさせないために必要なのではないかと思いました。
あと、良くもあるのだろうと思いつつ微妙だったのは「ちゃんと沖縄の方言を使っていたところ」でした。これも沖縄のアイデンティティを描いていると思われる本作では仕方ないことなのですが、いっそのこと字幕を付けても良かったように思いました。
結末については、「オンちゃん」が命懸けで守った「予定外の成果」=「米軍高官と日本人女性との間にできた非嫡出子」である少年「ウタ」を、「レイ」の暴走が切っ掛けで失ってしまうというかたちで終わりを迎えます。「オンちゃん」の優しさを感じるとともに、その「宝」であったはずの少年「ウタ」の呆気ない最後、その「ウタ」が命懸けで守ったのは皮肉にも誰よりも死に近い場所で生きてきた、「オンちゃん」の弟である「レイ」だったという事実もスパイスの利いた結末でした。そういえば「オンちゃん」は冒頭で「欲張るな。生きて帰ることが最大の成果だ。」と、ちゃんと結末について語っていましたね。
一方で、ラストシーンを見ると、結局、誰よりも「オンちゃん」(=「今はない希望」のような存在)に引っ張られているのは主人公の「グスク」であり、怒りにも似た表情で浜辺に背を向けるところなどは、個人的に、半ば憑りつかれて死に急いでいるようにすら思えました。そう思うと、彼が日本の政府関係者に監禁・拷問を受けている際に見た夢で「オンちゃん」から首飾りを受け取るところなど、「意志の継承」であるとともに「呪いの伝播」にも思えてしまい、人の想いの表裏一体性を感じさせると思いました。
という感じで、わたしのレビューを終わりにさせていただきます。
ご拝読いただき、誠にありがとうございました。
ガマには今も戦没者の遺骨が
重い映画でした。ヒーローだったおんちゃんは、やはり。。
原作は未読、事前情報無しで映画館に足を運びました。遅い時間帯のせいかお客さんは少ない。
だが、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝らトップを走る俳優陣の演技は素晴らしい。特にうちなー言葉は、わたしは解らないのですが、沖縄の人から見て完成度はどれ程だったでしょうか?解らないながらも、かなりのレベルではないかと思えました。
色々と語りたいのですが、たいした知識を持たずに書くのははばかられる程の重厚さでしたね。
ラストでみんな死んでしまうのかと、はらはらしましたが、撃たれたウタ意外は皆、生きて苦しみを背負っていく。。おんちゃんが救ったウタ少年は助かっても良かったのではないか、、。
手を組んでいた米軍のアーヴィンと通訳?の小松(山本蒼)は、信用できる者だったのでは?
このあたり原作ではどうなんだろうか?原作にも興味が湧きます。
わたしの稚拙な感覚では、グスク妻夫木に暴行を加えた主犯のダニー(小松より立場が下らしい)が、暴徒と化した街人にボコボコにされたであろう場面が、すこしスッキリしたところでした。
『怒り』における泉(広瀬すず)の咆哮に繋がっている
世の中には知っておかなければいけないはずなのに、何も知らないままのことが山ほどあるが、沖縄における戦争や戦後史もそのひとつ。
昭和20年(1945年)6月6日付け電文で、沖縄方面特別根拠地隊(陸戦隊)司令官大田実少将は海軍次官あて電文で「県民は青壮年の全部を防衛召集に捧げ、残る老幼婦女子のみが相次ぐ砲爆撃に家屋と財産の全部を焼却せられ、一木一草焦土と化せん」と記し、沖縄戦においていかに県民が忍耐我慢の極限において軍に協力し、困難をものともせず沖縄防衛のために働いたかをきちんと報告し、最後に「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」と結んでいます。大田少将は、自身も圧倒的な戦力比の絶望的な状況にありながら(この1週間後、自決)、沖縄の非戦闘員に対する美しい心遣いを示していたのです。
しかしながら、実際の日本軍(本土の人間)は沖縄を本土の盾とし、沖縄県民は軍の盾にされていたのです。『沖縄大観』によると、県民の1/4にあたる約15万人が死亡したことになっています。正確な数字については不明のようですが、(勝算などない)本土決戦の準備のためのあまりにも大きな犠牲だったのです。
(以上、半藤一利「戦争というもの」(PHP文庫)」から部分的に引用して構成)
この映画では戦後間もない頃から1972年の沖縄の本土返還までがグスク、レイ、ヤマコを中心としたクロニクルとして語られ、返還されれば「基地はなくなり、沖縄人(ウチナンチュ)の人権も回復するかも」という期待も描かれるが、大きな基地はなくならないし、辺野古移設問題も(沖縄県における基地の固定化)現在進行形。
自分はあまりにも不勉強で政治的見解を持てるほどの知見はないけれど、米兵による諸々の事件も含めて、戦果アギヤーとなる心情を少しでも理解したいと思います。
広瀬すず「一択」の映画
芝居と美術に頼りすぎ
沖縄の苦難を描きつつ、3時間超の物語を十分に魅力的なものに仕上げた一作
原作は未読のまま鑑賞しましたが、一つの映画作品として十分に楽しむ、という点で全く問題なかったどころか、3時間超の上映時間を通じて十二分に感情移入できる内容となっていました。
タイトルから連想できるような、血沸き肉躍る冒険活劇というよりも、激動の戦後沖縄に生きる人々を、時に泥臭さも厭わず描いた作品です。そのため爽快感を求めて本作を鑑賞すると、ちょっと期待外れに感じる可能性も。クライマックスの一つであるコザ暴動の描写すらも、長らく蓄積していた鬱屈がついに爆発したような、それでいて暴れたところで現実は何も変わらない、という悲痛さと虚無感が入り混じっています。
行方不明となった男を探す物語として、戦後沖縄史について特段の知識がなくても物語を追うことができるほどに配慮の行き届いた作劇となっています。とはいえやはり、米軍に経済依存せざるを得ない状況にありながらも抗議の声を上げ続けた沖縄の人々の鬱屈や苦しみを知るためにも、本作クライマックスの一つであるコザ暴動とそこにいたる周辺事情について、ちらっとでも確認しておくことをおすすめ。
クライマックスは観客にしか知りえない情報で登場人物が真相を理解する、という点がやや引っ掛かりとして残りましたが、全体で見ると些細な問題かと。
主人公グスクを演じた妻夫木聡ら俳優陣の沖縄方言を交えた台詞回しは、ところどころ聞き取りにくい箇所があるといえばあるのですが、それもまた、登場人物にできる限り沖縄の人々としての実在感を付与したい、という役者としての熱意と感じました。むしろ後半では耳も慣れて、彼らのイントネーションに親しみを感じるほど。
台詞は状況説明の要素も多々含んでおり、当時の状況について詳しくない観客にも現状把握ができるように配慮しているうえ、日本映画にありがちな、説明過多に陥るぎりぎりのところで踏みとどまった感があります。誰に台詞を言わせるのか、そしてその表現の仕方は、といったところで細かい調整が効いているところも、しゃべりすぎ、と感じさせなかった要因かも知れません。
言葉だけでなく、当時の沖縄の都市景観の変遷、さらには葬送儀礼など、娯楽作品という枠組みの中ではあっても、様々な沖縄の社会的・文化的要素を入れ込んでおり、その点でも稀有な作品であると感じました。
と言っても沖縄の生活経験が極めて浅い観客による感想なので、それぞれの描写については沖縄出身の方、沖縄の文化習俗研究の専門家による講評をぜひとも聞きたいところ。
確かに本作の結末は痛切です。しかしそこからは、グスクらが生きてきた時代から現在までの現実の経過を踏まえ、娯楽作品とはいえ安易な物語的着地で収める訳にはいかない、という、作り手側のテーマに対する真摯さを感じました!
島ぬ宝
米軍統治下の沖縄で、時勢に抗う人たちの話。
1952年、米軍基地に侵入して物資を盗み、配ったり安く売ったりする義賊的若者集団「戦果アギヤー」が、武器まで盗んだことで米兵に追われ銃撃されて巻き起こっていく。
撃たれたり、捕まったり、命からがら逃げ出したりなメンバーが、行方不明になったオンを気にかけつつ、そして米軍統治下の処遇に翻弄されつつ、その後の沖縄で暮らして行く様を、実話ベースの出来事も交えつつみせていくけれど、良く言えばめちゃくちゃ丁寧で、悪く言えばこれいりますか?なシーンが多くて…。
それなりには面白いなとは思っていたけれど、終盤のネタばらし的流れが妙に御伽話だし、予定にない戦果ってそれ?
狙い過ぎで白々しいし、今更オンちゃんをそんな風にみせられても思い入れがないから何も響かないし…そしてプロ市民へという感じだし…がっかりが過ぎた。
沖縄の声を聴け
3時間の『国宝』の大ヒットは、『鬼滅の刃 無限城編~』以上に日本映画界への意義は大きい。
映画は時間やジャンルは関係ない。良きものにはちゃんと客が入る事を証明したからだ。
よく長尺映画に難を示す声が多い。何だかがっかりする。今の時代、配信でドラマシリーズやアニメシリーズを一気見し、3時間なんて悠に越える。なのに、何で映画だけ長いなんて…。
そりゃあつまらない映画だったら拷問だが、面白ければこの上ない充実感と見応え。
『風と共に去りぬ』『七人の侍』『ベン・ハー』『ゴッドファーザー』『ダンス・ウィズ・ウルブズ』…。『タイタニック』もこちら側に入れておこう。往年の名作は長尺が当たり前だった。
近年(2000年代)も『ロード・オブ・ザ・リング』『愛のむきだし』『ドライブ・マイ・カー』『RRR』など面白い作品が多い。
長尺は名作の宝庫!
『国宝』の大ヒットがそのきっかけになってくれたら…。
そして、もう一本…。
終戦80年。
日本が今日の平和や繁栄に至るまで幾多の努力や困難があったが、最も激動の80年を駆け抜けたのが、沖縄。
今沖縄と言うと、日本のハワイのような南国。
夏シーズンは台風の通り道だが、年間通して比較的温暖な気候。
本土とは違う雰囲気、文化、歴史。
沖縄料理も人気。今年新たなアトラクション施設もオープンし、日本屈指の観光地。
沖縄出身の有名人や人気スターも多い。
陽気で、方言“なんくるないさ~”が耳に心地よい。
私も是非一度は行ってみたいのが、沖縄である。
そんな沖縄が今日の平穏を手にするまで、どれほど壮絶な受難に晒されてきたか…。
おびただしい血が流された沖縄戦。実に、沖縄人の4人に一人が戦死…。
戦後長らくアメリカの統治下に。1972年にようやく日本へ返還されるも…
沖縄県民と米軍の確執、米軍基地問題…。さらには沖縄と本土の関係…。
何故こんなにも理不尽を…?
しかし、沖縄も堪え忍んでばかりじゃない。抗う者たちがいた…。
米軍基地から物資を奪い、困窮する沖縄の民に分け与える鼠小僧のような若者集団。
“戦果アギヤー”。リーダーのオン、親友のグスク、オンの弟レイ、オンの恋人ヤマコ。
危ない橋を渡りつつも、沖縄への迸る思いを胸に、熱く生きていた。
沖縄に真の平和が訪れるまで、まだまだ闘い続ける。
そう皆を鼓舞していたオンがある日突然、姿を消した…。
やがて、グスクは刑事に。ヤマコは小学校教師に。レイはヤクザに…。
各々の道を歩んでいたが、ずっとオンの行方を探していた。
そんな彼らが直面する沖縄の受難、そして真実とは…?
グスク、ヤマコ、レイ各々の今と、オンの面影がメインストーリー。
グスクが刑事になったのもオンを探す為。かつてオンと共に“戦果アギヤー”として名を馳せた彼に接触してきたのは、アメリカの諜報員…。
沖縄の子供たちの為に学校を造る。そしてヤマコが先生になれ。オンとそう約束したヤマコにも未曾有の悲劇が…。
一応真っ当な道を歩んだ二人に対し、荒々しい生き方のままのレイ。刑務所に入ったり、悪い連中とつるんだり揉め事を起こしたり…。
ここに様々なエピソードが交錯する。
浮浪児のウタ。その出生は…。
グスクが追う婦女暴行殺人事件。
米兵ばかりを狙った事件。
米空軍機が墜落。墜落した場所は…。
50年代~70年代、沖縄で起きた県民と米軍の諍い…いや、対立や争い。遂には暴動にまで…。
フィクションとノンフィクションを絡ませた大ボリューム。
妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら今の日本映画界を代表する実力派たちのアンサンブル。とりわけ危うさを孕んだ窪田正孝が存在感放つ。
スケール感のある映像。美術が素晴らしく、あの時代を知らない者でもタイムスリップしたかのように。映像や美術であの時代の混沌をヒリヒリ感じる。
かなり痛烈な反米色は賛否分かれそう。現独裁者が見たら激怒しそうだが、分かり合えば…というメッセージも受け取れる。
並々ならぬ覚悟と意欲で挑んだスタッフ/キャスト。その圧倒的本気度、熱量の191分!
大友啓史監督にとってもキャリアの一つの到達点と言えよう。
間違いなく今年の日本映画の力作の一つ。
そう言った意味では『国宝』と並ぶが、果たしてヒットはするだろうか…?
『国宝』は万人受けしそうにない題材ながら、特異世界を見易くストレートに描き、見る者を引き込む魅力と見応えがあった。
本作もメッセージはひしひしと感じる。
が、あの時代の混沌を表したせいか、話がちと分かり難い。
沖縄特有の方言で聞き取りにくい台詞もあったかな…。
登場人物たちや話自体が何に向かっているか、迷走してしまった感も…。
彼らのように熱くがむしゃら…と言えば聞こえはいいが、大友監督、ちと力み過ぎたか…?
しかし、思いは伝わった。
訴えたい事は伝わった。
理不尽さに憤り、胸に突き刺さった。
小学校に墜落した米空軍機。生徒たちも死傷。が、起こした米パイロットは軍内部で軽い処罰を受け、罪を裁かれる事はなかった。そんな事、あってたまるか!
実際にもあった米空軍機の墜落。米兵によるレイプ事件…。
民間人が米兵の車に轢かれ、死亡。沖縄の怒りが爆発し、起きたコザ暴動。
それを誘発したのは何だ…?
何が沖縄をこんなにも混沌とさせた…?
米軍の傲慢。本土は見て見ぬふり。
本土返還が決まった時、多くの県民が歓喜。やっと自由になれる。本当に自由になれるのか…?
歓喜する県民とは裏腹に、レイは皮肉。アメリカの隷属に成り下がっている本土に返還されたって結局同じ事。
沖縄の自由は何処にある…?
一体誰が沖縄の声を聴いている…?
声を上げる者は居ないのか…?
冒頭、米軍基地を襲撃した戦果アギヤーが追われ、密林の中へ。
そこで聴いた謎の声…。
オンが姿を消した理由と深く関わっていた…。
散り散りに逃げ、オンは思わぬ遭遇をする。
赤子を出産し、息を引き取った民間人女性。居ない父親は言うまでもない。あの時代、米兵に孕まされた沖縄女性は多くいた筈だ。
この名もなき若い女性と赤子もその犠牲の一つ。
母親の方は息を引き取ったが、赤子の方は…。辛うじて息がある。
オンは人工呼吸で息を送り、歯でへその緒が噛みちぎる。
死ぬな!生きろ!
赤子は息を吹き返し…。
その赤子を引き取り、離島に渡ったオン。育てながら重労働。
ある時、米軍の攻撃が…。重傷を負ったオン。その傍から離れぬ成長した少年。木舟に乗って沖縄へ…。
その少年こそ…。
しかし彼もまたある修羅場で、米兵から被弾する。
傷付いた身体である場所へ。グスクたちも後を追う。
そこにあったのは…、白骨体。ウタが葬ったオンの亡骸。
姿を消したオン。いや、彼はずっとここに居たのだ。
まさかの真実。また俺たちの前に姿を現し、何かをしてくれると思っていた。
沖縄の運命や時代は変えられなかった。
しかし、繋ごうとした。
一つの小さな命を。未来を。
俺たちの思いを受け継いでくれ。
その命と未来も不条理に奪われ…。
レビュー序盤で“沖縄が今日の平穏を…”と書いたが、訂正したい。
沖縄は今も苦しんでいる。
沖縄は今も悲しんでいる。
沖縄は今も怒っている。
今も続く事件や理不尽に、沖縄の闘いはまだ終わらない。
沖縄の声を聴け。
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