劇場公開日 2025年9月19日

「スタッフと役者の本気度を買う。」宝島 ycoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 スタッフと役者の本気度を買う。

2025年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

難しい

観た時から随分時間がたってしまった。
いまではもうすっかり上映館数が少なくなってしまった。
もっと盛り上げてあげたかった。
感想をうまく言語化できない気がして投稿が遅れてしまった。
以下は観た直後に書いたものに少し手を入れたもの。温めただけで大した変化はないが。

公開前より、業界につながりを持つ知人から「前評判がすこぶる良い」と聞き、満を持して鑑賞した。
私は沖縄びいきであり、その歴史についても関心がある。また、役者も良い意味でなじみがあり好きな人が多いので、
そういう意味では概ね想定通りの内容であり、想定通りの出来だった。

まず、全体として「沖縄の歴史」を描くことへの覚悟が感じられた。
できるだけ安っぽい演出を回避しようという意識も感じられた。
セットから音楽、隅々まで意気込みを感じられる作りだった。
役者も人ひとりが真摯に演じているのがわかった。
特筆したいのは以下3名。

妻夫木聡:さすが座長。安定感の上に熱のある目で感情移入させられる。
最近は安定しすぎて「こなし」そうになってしまわないかも危惧するのだが、
この映画に限らず、彼は決して「手を抜く」ことをしていないのがわかる。
もはや「泣き芸」ともいえる「泣き」の演技も健在だ。「感情が“漏れ”出る」のを表現するのがうまい。

広瀬すず:私はなんやかんやいって彼女に圧倒的ヒロイン性を感じるし、もはや本人もそこに覚悟を決めているようにすら感じる。
特にシリアスな演技はうまいと思うし、彼女の放つ生命エネルギーのようなものを感じつい魅せられてしまう。美人すぎるがゆえに演技力が過小評価されているように思っている。今回は同時期に同じく戦争をテーマとして「遠い山なみの光」にも出ているのでぜひそちらとの見比べをしたい。

永山瑛太:彼の演技力は言わずもがななのだが、今まで手一番彼を「かっこいい!」と思った。
なんだあのビジュは。ファッションもよいし長髪も普段は好きではないのだが今回は似合いすぎるほどであった。
あれじゃカリスマにもなるわ。背も高いし。

確かな制作陣と役者によって作られた本作は劇場で見るに大いに値する。
くしくも題名に「宝」がつくこともあり、大ヒットの「国宝」と公開前から比べられてしまっている当作品。
制作費・キャスティング等から「超大作」とういうふれこみなのに…という記事が多いようだが。
しかし、そもそも描きたいものが全く異なるため作品として比べるのは違うと感じる。
公開後の監督のせいでケチがついてしまったのが本当にもったいない。
ぜひ多くの人に見てもらいたい映画である。

なお、おなじコザ騒動を描いた作品で秀逸なものがある。
演劇だが「hana -1970、コザが燃えた日-」である。
これはアプローチは全く異なれど、沖縄の怒りが底のほうからじっくりと伝わってくる秀作である。
特に当時無名(っていうか今はどうしている??)で初舞台という上原千果さんが素晴らしかった。
演出が「舞台ならでは」のものがあるため、そのままの感動を得るのは難しいかもしれないが、
興味のある人は何らかの方法で見てもらえたらと思う。

最後に一つだけ、難点をいえば、
ラスト「ウタ」が「オン」の元へ行くシーン、あれはちょっと狙いすぎではあった。
そこまでにいたる事情も詰めの甘さも感じた。そこだけファンタジーであった。原作がどうかはわからないが。
「戦争」に興味をもってもらうための、エンターテイメント性を持たせるためとはいえ、
そこももうちょっと頑張ってほしかった。

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yco