「敵の顔が見えない沖縄」宝島 PJLBNさんの映画レビュー(感想・評価)
敵の顔が見えない沖縄
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沖縄という現実を歴史の観点からも描いた骨太な映画。個人的には、「なんくるないさ」の涙そうそうのイメージを自ら覆す主演の妻夫木聡演じるグスクが良い。広瀬すず演じるヤマコに惚れながらもオンちゃんの影を見て近づき過ぎない煮え切らなさと、アメリカの諜報部のアーヴィングに対しても、アンヴィバレントな感情をずっと持ち続ける彼の立ち位置は、そのまま沖縄の姿なのかもしれない。
この映画には悲劇や暴力は絶え間なく出てくるが、どのキャラクターも何と具体的に戦っているのか「敵の顔」がみえない。それはアメリカという国家だったり、本土の日本という国家という姿なのだが、彼らを犯罪者や征服者、略奪者、自分勝手な交渉者として認識しながら、具体的に戦う敵の顔が見えてこない。ときたまアメリカ人を殴ったりしていても、彼らは末端に過ぎない。その意味では、本格的な暴動のコザのシーンは、対象を持たない怒りや憎しみの爆発として一番の映画のカタルシスだった。
オンちゃんが決死の思いで助けた「宝」に関しても、結局敵の見えない戦いで失われてしまう。このような虚しさをいったいどこにぶつければ良いのだろうか。沖縄からアメリカ人や基地がなくなれば解消されるのだろうか。それともいっそ日本から独立することで得られるのだろうか。映画はそういうことについては語らず、苦悩し戦い続ける人たちを描くだけである。
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