「観る価値は充分にある」宝島 ばーどさんの映画レビュー(感想・評価)
観る価値は充分にある
国宝や8番出口などと比較するレビューが目立っているが、そもそも比較するような映画ではないと思う。
戦後の沖縄を、事実を交えながら虐げられてきた者たちの苦しみを演者たちの熱演で本気で見せているので、それを味わう歴史映画として見るべきじゃないかと思う。
演技として誇張が過ぎる感じがして、最初のオープニングの米軍基地に侵入するところはなぜか冷めてしまっていたのだが、見るにつれて、はまっていく。
私は仕事柄、沖縄の歴史に触れる立場にいたこともあって、沖縄の人の苦しみ思うと、涙が出てきた。沖縄で満席が続いているというのもよくわかる。まあ、地元の人からしたらそれ違うよっていうのもあるかもしれないけど。
オンちゃんに対する謎は、なんとなくそのままにしておいてもいいような気がした。「英雄」とは何なのか、一体何が「英雄」なのか、それを、刑事とヤクザの2人の立場から、または教師になった女性の立場から、沖縄戦後史を通じて考えさせるようなメッセージにしておいたら、もっと違ったような気がする。
確かに最後のエンディングは蛇足で、謎を解き、明かす必要があったのかよくわからない。結局あれは、3人のこうあってほしいという妄想だったり、実は英雄という存在がもっと違うところであったような展開でもよかったんじゃないかなと思う。
最後のエンディングの蛇足があって点数を0.5引き下げた。ただ迫力のあるセットだったり、演者の熱演は見る価値は必ずある。沖縄はひめゆりの塔だったり、 戦時中を描いた映画はこれまであるが、戦後の沖縄を本気で描こうという映画はあまり記憶にないので、是非見た方がいいし、本土で生活してきた人たちこそ見るべきじゃないかなと思う。
指摘がある方言については、なんとなくわからないけど、こんなこと言ってるのかなとか、本気で語ってんだなっていうのを感覚として得るためにそのままにしたんだろうから、個人的にはそのままでいいと思った。現地の人たちへのリスペクトにもなるし、ここで方言に字幕をつけたら良かったんじゃないか。みたいな指摘もあるけど、そうすることで、ウチナンチュとヤマトンチュを切り分けてしまうことになるから、同じ日本人としての違いを表してしまうので、逆効果だと思う。これはそのままにしといて、字幕なしで正解だった。
監督の公開後の状態だったり、色々と不運も重なったところはあるが、戦後の沖縄史をこれだけ面白く、平和とは何かを考えさせるテーマでしっかりと作っているのだから、もっと評価されていい。是非視聴をお勧めする。
ひなさん
初めまして。
コメントありがとうございます。
「怒りを描かない」そうですね。 政治的な部分や商業的な部分から、「怒り」を描くことがしにくいのが日本なのかもしれません。
沖縄に行くとアイデンティティが本当にたくさんあるなと思います。日本兵に虐げられた人もいれば、アメリカ兵に殺された人もいる。様々なアイデンティティの中で、沖縄で生活している人たちがたくさんいる。本土で生活している我々はそのことをよく認識するべきだと思っています。
例えば同じ戦争被害地の広島と長崎では、原爆を落としたアメリカと被爆地日本という二項対立で、戦争を語ることが多いですが、沖縄はそれができません。戦地として連れて来られた本土の兵隊もたくさんいますし、植民地だった韓国や台湾からも動員されてきた兵隊もいます。そういったアイデンティティがたくさんある中で、戦争というのを語らないといけない場所が沖縄だと思っています。
この映画は1つの問題提起ができる作品なので、たくさんの人に見て欲しいなと私は思っています。また 、少しばかりの沖縄の戦争史についての知識があると、また、一層演者たちの熱演への感動が増すのかなとも思っています。これを機に多くの人が沖縄の歴史に触れてもらえればいいのかなと思います。
同じ日本人として、まずは「知る」ことから始めたいですね。貴重なご意見ありがとうございます。
ばーどさま、初めまして🙂
『宝島』の公開前に、「最近の戦争映画は、“悲しみ”はあっても“怒り”を描かない」という話を聞きました。
沖縄の方言・感情の熱量・映画の長尺は、ウチナンチュとヤマトンチュ=沖縄と私達の間にある、いつまでも超えられない“心のフェンス”を象徴しているのかな、と思いました🤔
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