「二兎追うもの一兎も得ず的な名作になれなかった凡作」宝島 Mackeyさんの映画レビュー(感想・評価)
二兎追うもの一兎も得ず的な名作になれなかった凡作
多分にネタバレを含みますのでご注意ください
良かった点
・役者陣の演技
・セットの作りこみ
・戦後沖縄というあまり触れられてこない題材を意欲的に描こうとした点
悪かった点
・キャラ描写が大事なところで欠けている
・沖縄県人と米兵の描かれ方
・ツッコミ所があまりにも多すぎる
まず良かった点ですが、
素晴らしい役者陣が揃っています
妻夫木さん筆頭に本当に皆さん素晴らしい。
そして戦後初期の焼け野原から再興する沖縄のセット。
これまで戦後史においてなかなか触れられることのなかった
沖縄の日本復帰を描いた本作は、戦後80年が経過する戦争を知らない
私たちに「戦争」「平和」を考えるきっかけには非常にきっかけになると思います。
ただ、あまりにも残念な点が多すぎる作品です。
私が作品を観て疑問に思って最後まで解消されなかった点
・オンちゃんなんでそんな人気なの?
・ヤマコ先生になったけど飛行機墜落をより悲劇的なものにするだけの演出?
・ヤマコとグスク同棲云々言ったけど結局この二人の関係後半一気に空気と化してない?
・アーヴィンとグスクの「トモダチ」って君たちそんな関係なの?
・コザ暴動で見たオンちゃんは単なる幻覚?それでレイ以外の仲間は?
・ダニー岸はじめ諜報員急に出てきて急にいなくなったけどなにも説明ないの?(後の小松とのワンシーンで描写終わり?)
・最後の戦果アギヤーあんなに簡単に見逃してくれるの?
・撃たれたウタ病院連れていかないの?海いかなきゃ助かったんじゃない?
・結局あの最初の襲撃でウタを拾いましたよってだけの話?
などキャラ描写が随所で足りずにツッコミどころが多すぎると感じてしまいます。
これが90分作品とか120分なら「あーもっと尺があればなー」となるんですが、
3時間オーバーのこの作品で細かいところ書かないの?という不満を感じてしまいました。
同じく3時間大作の国宝は多少の気になる点はありつつもほとんどの伏線を回収して、
しっかりと登場人物の老いとともに話が進んでいくのであの時のセリフや場面が、
こう繋がるのか!と見終わったときに全ての合点がいく作品でした。
また、沖縄県人と米兵の描かれ方についても
沖縄県人は「基地を襲う」「暴動する」「ケンカする」「抗争する」「デモする」「米兵も本土人も嫌悪する」これしか書かれてなくてまるで野蛮人に感じてしまいます。
実際当時の沖縄県人は多大な苦労や思いがあったでしょう。
ならばもっと米兵を悪として描くべきだったのではないかと思います。
本作の米兵の悪行は「事故を起こす」「殺人をしている(ただその描写は頭蓋骨蒐集だけ)」「飛行機事故(これは米兵というか軍)」ぐらいなもので、それ以外はヤクザに襲われ、暴動を起こされ、物資を盗まれるもうどっちが悪なんだっていう見え方になってしまっています。
主要人物の人間関係、そして沖縄県人の強い想い、それをもってオンちゃんを追う&沖縄県人のアイデンティティを取り戻す作品であれば国宝級にも評価されるであろう作品だったと思いますが、登場人物を広げすぎ、そのせいで描写が中途半端になり3時間という長時間の鑑賞をもってしても消化不良という残念な作品です。
いっそのこと映画ではなくドラマで1時間×12話とかの方が良かったのかもしれません。
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