「タイトルなし(ネタバレ)」宝島 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
1952年、米統治下の沖縄、米軍基地から物資を盗み出して住民に分け与える「戦果アギヤー」の若者たち。
嘉手納基地潜入の際、失敗により首領格の青年オン(永山瑛太)が姿を消す・・・
といったところからはじまる物語。
物語は、弟分グスク(妻夫木聡)の語りで進められるが、オンの実弟レイ(窪田正孝)の物語も等分で進められる。
そのため、どちらを主眼にして観進めるか迷ってしまう。
刑事になるグスクの物語も興味深いが、ヤクザになるレイの物語の方がシンプルな分、観客に届きやすいから厄介。
オン、グスク、レイの3人から愛される女性ヤマコ(広瀬すず)も登場するが、三人の愛の物語には収斂せず。
物語の決着は、途中から登場する米兵との混血児ウタ(栄莉弥)に委ねられるが、ウタの立ち位置がミステリー要素を醸す役割しか与えられていないように見える。
原因としては、脚本の整理が出来ていないという感じ。
「観客が知っていること」と「登場人物が知っていること」の整理ができておらず、「登場人物が知らないこと」を安易に回想シーンとして描いていたりしている。
まぁ、テレビドラマの手法か。
脚本は、高田亮をはじめとして、計3人クレジットされているが、高田亮の原脚本に対して、撮影や予算の制約から大友監督と大浦光太が手を入れたのではないかと思料。
終盤の取って付けたようなミステリー的要素や、その前のあまり伏線がないようにみえる『太陽を盗んだ男』的展開、さらには回想シーンの多用など、終幕近くの底の浅い不味いエンターテイメント味になっている。
贅沢なコース料理のデザートが不味かったみたいな印象が強いな、と。
なれど、グスクが何度も放つ沖縄の扱いに対する憤り、痛いほど胸を穿つ。
また、憤り・鬱屈の噴出としてのコザ暴動が、感情の熱気を巧みに表現していて、胸が熱くなったのも確か。
戦後80年の今年、社会派エンターテインメントの力作。
観るべき作品である。
オンの物語がかなり希薄になっているので、作劇的には、レイがオンの首飾りを見つけたときに、ウタ少年の回想でオンと幼いウタとのその後を見せ、その後は語り手をレイに転移させる(後にウタがレイの子分的位置になるので)。
最後は、オンの失踪の経緯のみ見せる、という手もあったかも、と思ったりもします。
作劇上、こうすればよかったかも、は素人考えなので、謗ったりしないでくださいませ。
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