「全てのポイントはスタッフ・キャストに」宝島 またぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
全てのポイントはスタッフ・キャストに
原作未読、沖縄返還を覚えている還暦のマタゾウすらうろ覚えの沖縄戦後史と、それらを背景として主人公たち数名の十数年にわたる物語をつづる、3時間越えの大作。まずは全編にわたる美しい映像は、スタッフの努力が忍ばれ、見ていて嬉しい。またそもそも沖縄の戦後史について一つのエンタメ作品として広く留めることの意義は評価されるべきであり、近過去をきっちりエンタメ化してきている韓国映画にも比する価値がある。役者陣は窪田正孝が最近こんな役が続いていて可哀そうな気がするが、妻夫木聡、広瀬すずも含め皆安心して見られた。ポイント3点は絵作りにかかわった皆さんに。
一方で脚本・演出は残念だったと言わざるを得ない。冒頭の基地内での銃撃戦、トラックにジープが追い付かずバンバン座席を銃撃するのには興覚めだったが、その後約2時間は「アイリッシュ・マン」のように(言い過ぎですが)遷移する物語を楽しむことができた。
問題は暴動後の基地内から海岸にかけて。とにかく現実味がない無理筋が連発で、これまで積み上げた骨太っぽい物語がガラガラと崩れる。映像や演技が勿体ない。突然でてきた妊婦話に驚いていると、その子供がウタで、近くにいるみんなが探しまくってるオンの消息をバリバリ知っていると…。君ら刑事になったりヤクザになったりして何年も探してたんじゃないのか?第一あんなオープンなところに死体が何年も放置されてたら白骨化の前に台風で散逸してしまうよ!ネックレスだけが爺さんのところに流れてったの?(なお当方、前半でオンちゃんのネックレスに気づいていなかったので個人的には伏線回収されず。失礼)
繰り返しになるが、あまりに重い史実を踏まえた暴動までの展開には満足が行っていたのに、しめくくりの30分で台無しになったというのがマタゾウの率直な感想である。
ヒットした「るろ剣」はドラマ部とアクション部の乖離が激しかった。評価されたのは「ドラマを背負ったアクション」だと思っている。「レジェンド&バタフライ」は木村拓哉と綾瀬はるかという豪華すぎるキャストが活かせず間延びしていた。そういうわけで大友監督はまだ信頼できていない。今作が3時間越えと聞いてまた間延びを危惧していたが、その点は問題なく、長期間にわたるドラマを飽きることなくつないでいた。それだけにスジの練り不足が残念だ。(追記:大友監督、時間的制約があるTVドラマの方が向いているのでは?)
なお当方が確認した多摩から埼玉の劇場はどこも最大キャパのスクリーンではなく中小スクリーン、しかもかなり余裕がある状況。当方はミニツーリング込みでイオンシネマ大井へ、17時からの回で観覧者は7-8人でした。
ネックレス、自分も気付かず中盤でキーアイテム風に出てきて戸惑いました。笑
オンの遺骨に関しては仰るとおりですね。
遺骨の主に気付いた途端、ウタの心配そっちのけになる3人も薄情でした。
こんばんは。
コメント失礼しますm(__)m
暴動後の基地内から海岸の部分、仰る通りでした。
私もここで心が離れそうになりました。
しかし戦後近代史沖縄について無知なので、それまでに描かれた、沖縄の方々の怒りにシンクロしてしまい、それが上回りました。
知っていなければならない事がたくさん有り過ぎます。
改めて学ぶきっかけになりました。
(またぞうさんアイコン格好良いですね♪)
ニコさんコメントありがとうございます。なるほど原作では不自然な展開ではなかったのですね。私的にはめちゃくちゃ大事なポイントなんですが製作側はスルーしてしまったのですね、残念です。
原作ではオンちゃんの遺骨は洞窟(ガマ)の中にあって、ウタがその所在をグスクたちに言わなかったのも理由がつけてあったのですが、映画ではウタ関連のエピソードが削られたためかそのあたりの説明も省かれて、終盤が不自然になってしまいました。
コメントありがとうございます。最後半の展開は原作通りであること理解しました。しかし映像化にあたっては、例えば子供ウタが白骨をもう少し流されにくい場所に隠しておくなど、目で見て不自然なことは改変すべきだと思いますし、基地での会話劇も工夫の余地はあると思います。
ウタの出生や、オンとウタが流れ着いてからの不自然さはご指摘の通り。でもあれは全く原作と同じなんですね。原作の一番ファンタジーな部分をそのまま映画化するとああなる。他の部分は上手に脚本で処理している面もあるんですがね。
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