「グスクは何がどうなって欲しいの?」宝島 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
グスクは何がどうなって欲しいの?
原作未読で鑑賞。
前提として、私の祖父(アメリカ人)は、80年代初頭、空軍の軍人で嘉手納基地に駐留していたので、子供の頃は夏休みや正月は長く沖縄へ遊びに行き、嘉手納基地の中で遊んでもらいました。
当時、祖父や祖母からは「もちろん米軍人の起こすトラブルはあるし、沖縄の人で米軍を嫌う人もいるけど、街にお金を落とすことはもちろん、火事などの緊急時は米軍が協力するし、古い沖縄の人ほど、お互いのメリットを知っているから理解がある人が多い。」(主観の聞きかじりなので、真偽は不明です)と聞かされていましたから、私自身はそういうスタンスでこの映画を観ました。
で。
感想としては、最後までキャラクターたちに共感できず、ただ流れていく物語を眺めただけという感じ、でした。
特に主人公「グスク(妻夫木聡)」。
彼は結局何がしたかったんだろう。
行方不明のオンちゃん(永山瑛太)を探すっていう目的はいいけど、なぜそんなに執着する必要があるのか。見つけてどーするの。
そもそも、オンちゃんがリーダー的な存在だということも、まずナレーションで示され、その理由もよく分からない。
いわゆる「マクガフィン」みたいなこと(カイザー・ソゼ?)かと思って見てると、どうもそうでもなく、現実の存在としてのカリスマらしい。
そんなよく分からないオンちゃんの幻に振り回されながら、それでも彼の行方を追いながら刑事としての活動も続け、日米双方の諜報部に目を付けられて利用される。
彼は最終的に「どうしたいか」「どうなりたいか」「どうなってほしいか」をはっきり言わないまま話が進むので、今、起きている事態が誰にとってどういう意味があるのかが判然としない。
予告編にもあった、最後、暴動が起きてそれを呆れ嘲笑う様に歩きながら「なんくるならんぞ!」と厭世的なことを喚いたかと思えば、その後に「いつまでも人間同士でいがみ合うほどバカじゃない」みたいな前向きなことを口走る。
ラストの種明かし的な「オンちゃんのその後」みたいなクダリもなぁ。
「これ誰?これどこ?これ何してんの?」が急に始まるし。
そこまでは基本的には言葉で説明してくれてたのに(皮肉)。
費用が25億かかったってのも、膨大なエキストラのせいなんだろうけど、せめてカメラの画角に入ってくる人にはそれなりに「演じて」欲しいよね。
棒立ちのおじさんとかはもっとモブの立ち位置でお願いしたい。
前半、飛行機が落ちたシーンも「あのサイズの飛行機があのまま墜落したら、あんな『上から隕石落ちてきた』みたいな現場にはならないよな」とか。
VXガスって、マスクだけじゃ防げないよね?とか。
都度都度入る回想シーンや想像シーンもしつこいし、その度に話の流れが止まるのは、3時間越えの映画ではなかなかしんどい。
繁華街でのハードなシーンにはアンバランスなオールディーズをBGMにするって演出が好きなのか、それも繰り返しだし。
全体的にそういうテンポの悪さがずっと続くので、この3時間半という時間はさすがに長く感じた。
私は、沖縄の人々の苦しみは決して在日米軍だけに由来するものじゃなく、日本政府の姿勢がこの事態を招いているのに、そこにはあんまり切り込まないんだねという違和感もあって、フラットに「米軍VSウチナンチュ」の物語とは観れませんでした。
3人がオンを探し続けたのは、友達だったからではなく、義賊の英雄だからでもなく、きっと何か崇高なもの掴んだに違いないという期待と信頼です。ウタは沖縄人の抵抗の象徴です。戦果ってソレかよ!というレビューが多くて残念です。
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