劇場公開日 2025年9月19日

「期待度○鑑賞後の満足度△ 最後まで飽きずに観れた点は評価するが成功作とは言えない。焦点が分散していて、未読だが多分長い原作を時間内に納めた所謂ダイジェスト版の謗りは免れず。俳優陣が熱演だけに惜しい。」宝島 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 期待度○鑑賞後の満足度△ 最後まで飽きずに観れた点は評価するが成功作とは言えない。焦点が分散していて、未読だが多分長い原作を時間内に納めた所謂ダイジェスト版の謗りは免れず。俳優陣が熱演だけに惜しい。

2025年9月21日
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①“沖縄”の痛みや苦しみ、怒りが殆んど皮膚感覚で感じられない。
第二次世界大戦後に冷戦がはじまり中国が共産主義国となった20世紀後半の世界情勢からすれば“沖縄”に基地を置くことは地政学的・戦略的に意味があるというか仕方がなかったことは頭ではわかるだけに、心情的には私たちヤマトンチューに「沖縄の米軍基地の半分でも本土に移してやらなくては」と思わせるくらいの劇的インパクトが欲しかった。
その辺りのユルさは『福田村なんとやら』という映画と共通している気がする。上部(うわべ)だけをなぞっているというか、そういう型に嵌め込んでいるだけというか、没入感とまでは言わなくとも一体感がないのだ。

②「コザ騒動」がクライマックスかと思ったらそうではなかったし(でももっと迫力があっても良いとは思ったー予算とか考えたらこの辺りが現代の日本映画の限界かも知れないけども)、その後の嘉手納基地内の一幕は却って「コザ騒動」のインパクトを薄めたしまった。(ただ、窪田正孝の演技は素晴らしかったし、ここでの彼の台詞がほぼ唯一“沖縄”の痛み・怒りを語っていた。)

③つまるところ、行方不明になった兄貴分の消息探しの話と、戦中から始まり現代まで続いている“沖縄”の苦難の歴史とが有機的に結び付いていなくて、どっち付かずの中途半端な印象が強い。

④例えば、グスクとマーシャルとの友情の描き方も台詞とショットとで説明するだけで、クライマックスの嘉手納基地のシーンでグスクがマーシャルに向かって“トモダチ”と呼び掛けるシーンは取って付けたようで白々しい。
たとえ短時間であっても2人の心が触れ合ったことが印象に残るシーンを一つでも入れておけば良い伏線になったのに...(そういうシーンがある映画は枚挙に暇はない)。

➄窪田正孝の好演は上記の通り。
広瀬すずも『遠い山なみの光』でも好演だったけれど、本作も好演。特にラストのオンの遺骨を納骨した後に浜辺でグスクと砂浜に座って話し、その後立ち去るシーンで、“なに言ってるの、この人”みたいな表情(私にはそう思えた)が、昭和の名女優(高峰秀子や田中絹枝、三宅邦子たち)の表情を彷彿とさせてビックリした。
妻夫木聡は、(これまでも何本も主演映画はあるが)本作の様な大作の主演を背負って全く危うさのない俳優によく成長したものだ、と感慨を抱かせる円熟味を見せる。
しかし皮肉なことに、グスク役の妻夫木聡がカリスマ性や存在感を放つほどグスクが兄貴と慕い憧れるオン役の永山瑛太にそれほどのカリスマ性が無いのが際立ってしまう。瑛大は若い頃は良い俳優だとご贔屓だったが中年期に入ってやや伸び悩んでいるようで寂しい…
現時点でのご贔屓である瀧内公美は大した見せ処のない役でつまらない。

⑥嘉手納基地でのレイとの遣り取り、またラストの浜辺でのヤマコとの会話の中で、グスクが「いつかは良い状況に変わっていく」みたいな未来志向というか希望を持たせるような如何にも万人向けの娯楽映画を締めそうな台詞を吐くが、現代に至っても基地の島“沖縄”を巡る状況は当時と殆んど変わっていないのが分かっているだけに実に白々しく響く。
いや、「いつかは“沖縄”が本当の意味で“沖縄”の人達の元に還りますから」なんて何も出来ないヤマトンチューの口からはとても言えませんから。
もっと暗い(救いのない)終わり方をした方がこの映画の劇的インパクトは高まったと思う。

⑦大友啓史はNHKにいた頃は『ハゲタカ』も『龍馬伝』も全話観ていたしTVドラマとしてはなかなか力量もあり面白い演出をする監督だと思っていたけれども、本作では特に巧いとか唸らされる様な演出は一つも無かった。
星三つで良いと思ったけれども俳優陣の熱演・好演に⭐半分オマケ。

もーさん
ともさんのコメント
2025年9月21日

オンのカリスマ性、全く同感です。チョットやんちゃなお兄ちゃんぐらいですよね。

とも
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