劇場公開日 2025年9月19日

「映画自体は悪くないが、歴史的な超大惨敗、大爆死の歴史的記念碑」宝島 ひぐまさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 映画自体は悪くないが、歴史的な超大惨敗、大爆死の歴史的記念碑

2025年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

<作品内容についてはちょっとしか語っておりません>

 戦後の沖縄が辿り、今日でもなお背負い続ける苦悩と憤怒を描きあげた人間ドラマの傑作の部類に入れてもいい作品。
 なのに…何故?客が入らない。

 私の家の近くのシネコン。初日金曜レイトショー鑑賞寸前の時点で「この作品危ないのかな?」と危惧はしていた。シネコンの劇場が4番手か5番手のキャパで、しかも200人収容のうちおよそ20人しかお客さんがいない。同日公開のライバルは強力で、実写では「国宝」も健在。ゆえに最大の動員力を持つスクリーンを押さえられないのはわかる。が、ここまで動員が低いとは思わなかった。興行主の目は確かだ。
 このままの調子でいくと初週の週末ランキングは6位前後。配給した東映やソニーは天文学的な赤字が確実となり、何人もの担当者のクビが飛び、責任者(特に電通)はギロチン台に膝まづき、関係会社は行ってみたら蛻の殻。中にはリアルに自〇者も出るかもしれない。そのくらいの日本映画の歴史に残る大大大大(×無限大)な大失敗大爆死、あとには塵すら舞っていない悲惨この上ない惨状となるだろう。詳しくは明日あたりから興行に関する記事がバンバン出ると思うが、涙無くして読めないと思う。

 しかしながら映画の内容に関しては特に悪くはない。むしろ相当な熱量を伴ない、日本映画では滅多に見られない作品と言ってもいい。特に楽しみにしていたのはコザ暴動。事情があってスタジオ撮影にしたらしいが、そんなことは気にならないほどの物凄い迫力があり、現場にいるかのような没入感に満たされた。関係者を絶賛したい。
 出演者も賞賛したい。特に窪田正孝は助演男優賞、栄莉弥は新人賞の候補にもなると思う。主演の妻夫木をはじめ細部に至るまで緊張感を伴った演技を見せていた。唯一心配していた広瀬すずも充分に及第以上の仕事をしたと思う。
 問題があるとすれば脚本と監督が背負うべきだ。最初から最後までグスク(妻夫木聡)のモノローグで映画が動く。それ、なくてもいいだろう。映画というのは監督が脚本の意を汲んで映像を見せて観客に理解させるものだ。大友監督はNHKのドラマで当時としては革命とも言える演出手法を発揮し、確かに時代を前に進めた功労者だ。だが「楽」を憶えてしまった。時おり挟まれる安い画、誰でも取れる画は、力量を見せる画との落差が大きくがっかりしてしまう。ついでに言うとこの人いつもそうだが、エンドロールで自分の名前を止めない方がいい。

 繰り返しになるがどう考えても「普通のちょっと長い作品」としか思えないため、星はこの辺でいいと思う。ところが公開直前の19日朝のこの映画.comは星4.8。え?それはさすがにないだろう?と思っていた。以後あれよあれよという間にレイティングは落ちて現在は3.7。このあたりが妥当と思われる。息せききって5を付けまくった方々や、あるいはおカネもらって同様を演じた方にはご苦労さんと言ってあげたい。
 「おカネもらって」の代表が映画評論家を名乗る方だろうが、その方々は自分の仕事が来なくなるのが何よりも怖いから褒めることしかできない。本当に優秀な評論家さんなら作品の秘孔を突く指摘もしつつ、読者を映画館に導くような論評をしていただきたい。少なくともこの映画.comにはそんな巧者はいない。

 3時間は長くは感じなかったが、2時間半に収められる技巧を高田亮なら有していたと思うのにがっかりした。せっかく「国宝」「鬼滅」で世間が2時間の壁を壊してくれた空気感になったのに。この大失敗は「映画は映画会社に任せておけ」というセオリーも、「映画は映画会社以外が作るもの」という新しい価値観も、揃って粉砕し、何もない地平を生み出すきっかけになってしまうかもしれない。そうならないでほしいとは思う。
 お時間のある方は見ておいて損はないと思う。3時間を作れる方がいらっしゃるのなら、ぜひ足を運んでいただきたたい。さもないと…これ来週からは一気に上映回数が減って、下手をすると4週で終わる劇場すら出てくるかもしれない。残念至極だ。

ひぐまさん
ひなさんのコメント
2025年9月22日

ひぐまさま、初めまして🙂

清々しいくらい「削除上等!」なレビューで、フォローさせていただきました。
「言い方」には煽り運転を感じますが、内容についてはいちいち同感です。

以前『侍タイムスリッパー』のレビューに、
「作品に関わった人全てが報われる結果に、興行収入と映画賞の二つがあると個人的に考えています。」と書きました。

オールラッシュと初号試写の段階が軌道修正する最後のチャンスだったと思いますが、迷走したプロモーションを見ていると、誰も監督に物申すことが出来なかったのかと残念です。
(『国宝』は初号試写の4時間半版を、監督と脚本家が泣く泣く3時間にカットしてます)

このレビューが不適切かどうかは、映画.comの運営が判断することですが、
「残念至極だ。」
この最後の4文字に、作品へのリスペクトを感じました🫡

ひな
ノーキッキングさんのコメント
2025年9月21日

ターゲットを毀損する文章、文脈に巧者ぶりがうかがえて、・COMは大歓迎です。が、やらかし過ぎると通報→レビュー削除が有りますのでご注意下さい。

ノーキッキング
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