「終わらない平和への問いかけ」宝島 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
終わらない平和への問いかけ
■ 作品情報
監督:大友啓史。主要キャスト:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太。脚本:大友啓史、高田亮、大浦光太。
■ ストーリー
1952年、米軍統治下の沖縄を舞台に、本土復帰前の混沌とした時代が描かれる。米軍基地から物資を盗み、貧しい島民に分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。彼らは民衆の英雄として慕われ、その中心にはリーダーのオン、親友のグスク、実弟のレイ、そしてオンの恋人であるヤマコの幼なじみ4人がいた。しかし、ある夜の襲撃でオンが“予定外の戦果”を手に消息を絶つ。残されたグスク、ヤマコ、レイは、それぞれの道を歩みながらも、消えた英雄オンの影を追い続ける。グスクは刑事、ヤマコは教師、レイはヤクザとなり、アメリカに支配され、本土に見捨てられた沖縄で、やり場のない怒りや葛藤を抱えながら、オンの失踪の真実と、彼が手にしたという「予定外の戦果」の謎を追う。そして20年の歳月を経て、彼らが直面する衝撃の真実と、抑えきれない感情の爆発が、沖縄の深い悲しみと憤りを描き出す物語である。
■ 感想
鑑賞後に、沖縄の抱える深い悲しみ、苦しみ、そして怒りが、まるで魂の叫びのように心に深く刻み込まれるの感じます。特に印象的だったのは、暴動シーンの圧倒的な迫力と力強さです。それは単なる衝突ではなく、抑圧され続けた人々の積年の憤りが爆発する瞬間であり、映画史に残るほどの生々しいリアリティに息をのみます。画面からほとばしるエネルギーは、観る者の心を激しく揺さぶり、痛みと憤りと希望がないまぜになった魂の叫びが聞こえてくるようです。
俳優陣の渾身の演技もまた、胸を打つものがあります。登場人物一人一人の葛藤や情熱がひしひしと伝わってきます。特に終盤、基地内で繰り広げられる窪田正孝さんと妻夫木聡さんの演技は圧巻の一言。彼らの表情、声、そして全身から発せられる絶望と訴えは、観客の心を深くえぐります。武器を手にしなければ届かないと訴えるレイと、それではダメだと平和を願うグスク、双方の言い分には、どちらか一方を否定できないほどの重みがあり、心が引き裂かれるような共感を覚えます。頭では理解できても、心が納得できない時、私たちはどうすればいいのか―この根源的な問いを突きつけられ、深く考えさせられます。
エンドロールで流れる当時のスナップ写真の数々は、涙なしには見られません。そこには、世代を超えて受け継がれる沖縄の人々の心からの願いが込められており、そしてその願いがいまだ果たされていない現実を突きつけられます。戦争は終わったはずなのに、真の平和がまだ訪れていないという厳然たる事実から、私たちは目を逸らしてはいけないと思います。
基地は要らない、武器も要らない。そんな世の中を願ってやみません。本作は、現代を生きる私たちに、沖縄の過去と現在、そして未来への問いかけを投げかける、非常に重要な作品だと強く感じます。多くの人にこの作品が届き、この「魂の叫び」に耳を傾けてほしいと心から願っています。
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