「個人的には頂けない映画でした」あの人が消えた komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
個人的には頂けない映画でした
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作の映画『あの人が消えた』は個人的には頂けない作品でした。
理由は、ストーリー展開には面白さはあるのに、最終盤の嘘の事件真相が語られる場面で、TVコント的な演出がされた所にあったと思われました。
映画全体を通して、荒川を演じた田中圭さんの演技が軽くて浮いているな、と思われていたのですが、そう感じさせるくらい主人公・丸子(高橋文哉さん)を初めとして、映画全体のテイストはシリアスで、一般的なサスペンスの映画として進行していたと思われます。
ところが、映画の一番重要な(この場面は結果的に嘘の話でしたが)小宮(北香那さん)と島崎(染谷将太さん)が警察の潜入捜査をしていたという、(嘘の)事件の真相が語られる場面で、TVコント的な演出がされてしまい、それまで積み上げていた映画の世界観はぶち壊しになったと思われました。
するとその後に、いくら本当の事件の真相が意外性を持って語られたとしても、既に映画の世界観は破壊されているので、ダメな映画だったとの印象が大きく残る作品になったと思われました。
仮に、(嘘の)真相が語られる場面をTVコント的な演出でやりたかったのなら、映画全体のテイストを初めからTVコント的な演出で統一する必要があったと思われます。
そして、(映画の冒頭と)本当の真相が語られる映画の最後の場面だけシリアスに描けば、その落差で映画としても面白い作品になっていたと思われます。
今作の水野格 監督は日本テレビの所属の人のようですが、TVコント的な演出が面白いと思ってるTV業界ノリの感覚が、果たして人間を深く描く映画にとって必要だったのか、全く寒い演出になっていなかったか、よくよく考える必要はあるのではと、僭越ながら映画鑑賞後に思われました。
個人的には、淡々としてるだけで展開の乏しいこれまでの日本映画の面白く無さを称賛している邦画界にも首を傾げる場面は少なくないですが、一方で、薄っぺらい人物描写のままでも本人たちは気にならないTV業界のノリの方もどうなんだとは思われています。
さすがにこの素晴らしい俳優陣が並んでる中でこの演出はあり得ないなと、ストーリー自体は面白さも感じた(だからこそ映画化が出来たのでしょうが‥)からこそ、残念無念の作品になっていたと、僭越ながら思われました。